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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
17/106

1.17 さぁ、入浴シーンですよぉ!

前話の終わり部分と今話のタイトルの落差よ。

 「悪」は罰せられる。


 当たり前の世の中だ。罪を犯せば、手錠をかけられ、長い間狭い牢屋に閉じ込められる。これは前の世界でも言えることだ。


 でも、一つだけ、前の世界と違うことがある。ここ「キューブ」では冤罪率が零%ということだ。


 いや、少し違うかな。冤罪で手錠を付けられ牢屋に入ってしまっても、しばらくすれば必ず無実だと言われるのだ。


 でも最近は冤罪事件自体が殆ど無かったっけ。














 僕は驚き、ハヤタさんから距離を取るように飛び退いた。ハヤタさんは未だ僕に顔だけを向けている。


「な、何を言ってるんですか? い、いや、い、いませんでしたけども?」


 誤魔化してもまだ、僕の顔をじっと見つめるハヤタさん。


「ふーんそうなんだ」


 ハヤタさんは四つん這いになり、ハイハイをしながら僕に近寄り、


「てっきり、同じ世界からの人が来て嬉しいのかなって思ったんだけね」


「っ!?」


 いつもより声のトーンを少し下げて言った。

 き、気づいていたの!? いつから!?


「この際だから聞いちゃうね。レン君はさ、僕のこと知ってたよね? 少なくてもこの世界に来る前から、さ」


「……っ、い、いや、その、な、何を言ってるのか全く、その……」


 何で今なんだろうか……? 分からない。なんて言えばいいのだろうか。それとも……


「あ、そかそか。安心して」


「……ぇ……?」


 すると、ハヤタさんは僕の反応を見て、何かを理解したかのように一人で頷いた。


「「別世界の人だって確信がある人になら話してもいい」ってちゃんと聞いてあるから」


「聞いて……? あ、そういう……」


 僕がハヤタさんに自分のことを言わなかった理由。女神さんの「自分が転記された人だってことは、周りには絶対に言わないでね」という言葉が原因だ。ハヤタさんに会ってからは、ここで言う「周り」は同じ転記者は入るのか否か、ということをずっと考えてしまっていたのだ。

 けど、ハヤタさんは聞いていたみたいだ。流石、ハヤタさん。やっぱり尊敬する……


「そ。だから大丈夫だよ」


「そ、うですか……」


「んっふふ。全身の力が抜けた、って感じだね」


「わ、態々言わないでくださいよ!」


 僕は安心しきって、ベッドの上に体重を預けるように、仰向けで倒れ込んだ。脱力だ。


「それじゃあ改めて。僕はハヤタ。レン君と同じ、キューブに転記されてきた人だよ」


 そして自己紹介。

 同じ世界としての、別世界から来た自分としての自己紹介なのだろう。


「えぇっと……レン、です。ハヤタさんと同じ、キューブに転記されてきた人、です」


 だからこそ僕も起き上がりながら返す。分かりきった情報だけだけど。


「やっと、本当の自分を見せれられる人に会えたよ」


「え……えっと……」


「まぁとりあえず、今まで通り一人の友としてよろしくね!」


「は、はい! よろしくお願いします!」


 友……たった一文字の言葉。それでも一人ぼっちだった僕には……

 というよりも……


「何で今、自分が転記者だって言ったんですか?」


「レン君があのレン君だ、っていう確信はあったけど……まだやめとこっかなって思ってたんだ」


 確信があ……ん? あのレン君? それってどう……ん……? 


「……あの、ということはつまり……向こうの世界でも僕のことを知ってたんですか?」


「もっちろん。というか、むしろあれで気づかない方がおかしいからね」


「え……?」


 あれで……? あれ……待って、確か僕はハヤタさんのことを……ぁ! まさか!


「いやぁ、ね……尾行、下手だったよ」


「はわわわぁ! そ、そんなはっきり言いますか!?」


「だって、ねぇ? それ以外に言い表せないし……」


「そ、そんなぁ……!」


 完璧だと思ってたのに……バレてないと思ってたのに……恥ずかしい……


「さぁてさらけ出しっこしたとこで! 今日こそはあんなことやこんなことをしようじゃないか!」


 そんな僕の新たな黒歴史をさらっと無視し、何か変なことを発した。

 ん? あれ? どういう展開なのこれ?


「え……? は、いや、ちょ、ぁぁあ! まぁぁ!」


「よーし、レッツゴー!」


「引っ張らないでくださいよ! ちょ待っ、だから何でそんなに力が強いんですか!」


 僕の全力の抵抗をものともしないの本当に何で!

 そのまま僕の腕を掴み、ハヤタさんはスタスタと歩いて浴場へ行った。


 あれ……確信があったのに、転記者だって言うのはまだやめておこうって思ったのは何で……?









 ガララッ


「はぁ、レン君の肌、あったかい」


「あ、あの、ちょっと恥ずかしいんですが」


「大丈夫。今は二人っきりだから、ね」


「ね、と言われましても」


 服を脱ぎ、お風呂に入るために浴槽への扉を開けた瞬間、ハヤタさんに抱きつかれた。

 うぅぅぅぅ……ハヤタさんの息が肌に直接かかってこそばゆい。こういうのはルルちゃんとやりたかった……やめよう。流石にちょっと気持ち悪い。


「それじゃまず、背中洗ってあげようか?」


 ここにきて普通。ハヤタさんの事だから、もっと過剰なボディタッチを要求するかと思った。いや、こう考えちゃう時点でもうやばいのかも。


「いえ、遠慮しておきます」


「えぇ!? あ、そんなこと言って、本当は照れてるんでしょ?」


「ええぇ……」


 この人は……あ、もういいや。多分この人にはそういうことをしてる自覚なんて無さそうだし。


「何その反応! 酷い! 昨日は僕のことをあんなにも優しく抱いてくれたというのに!」


 何その言い方。僕が悪人みたいになるじゃんやめてよ。後抱いてないから。そっちから抱いてきたんじゃん。やばい、思い出しただけで背筋が凍りそう。


「やっぱりレン君はそう言う子だったのね!」


「何言ってるんですかお黙りくださいよ。というか抱いてないですし、むしろそっちから来たんじゃないですか。ブチギレますよ」


「あれぇ? なんかいつにも増して尖ってないかなぁ?」


「……」


「いや、そんな「今までの自分がどうかしてたよほんとにもう」的な目をするのやめて」


「分かってるならやめてくださいよ」

短いという自覚はあります。さっさと入浴シーン寄越せってなりますよね。ごめんなさい。

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