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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
15/107

1.15 増えるからこそ、不安なのだ

 召喚士さんは


(みなさんには魔王を倒していただきたいと思い、お呼びしました)


 って言っていたけど、僕は本当に倒してもいいのか、という疑問をもっている。



 僕の育ての親、モクリサさんはギルドで「Hope And Light」、略称「HAL」、通称「ヘイル」という名前のお仕事をしている。街を守り、街に仇なすものを排除する団体。僕を見つけた時も、仕事の依頼途中だったらしい。


 僕はたまにモクリサさんの通うギルドに連れて行ってもらってた。

 だから気が付けたんだと思う。


「お、子ども? なんだなんだ、お前ついに結婚したのか!」


「いや違うよ。この子は――


「誘拐!?」


「そうだとしても、何故ここに連れてくる?」


 ギルドに入る僕とモクリサさん。それを見た周囲からモクリサさんを楽しそうに冷やかす声が響く。


 良いなぁ……


 その時、僕はあるものが視界に入った。

 僕の目の前には僕の身長より少し小さい、大きな桶のようなものがある。その中には水が入っており、さらに水中には色とりどりの四角い物体が浮いている。


「あの。これって何でしょうか?」


 僕は水を指さし、モクリサさんの方を見ながら聞いた。


「あぁ、これは依頼書。ほら、この四角い物体に何か書いてあるでしょ」


「あ……本当だ……」


 その物体一つ一つを見ていく中で、僕は一つの疑問が浮かんだ。

 最初は偶然だと思っていたが、その後もモクリサさんと何度もギルドに来てもその違和感に変化はなかった。


 この時僕は、変化はなかったではなく、変化できなかったという可能性を考えた。

 ただの僕の憶測だ。

 けど、その考えに至ってから魔鬼者が……いや、それに関係するであろう「魔族」も、その魔族の長的な位置であろう「魔王」も。

 世間が言う悪い存在。

 教科書が言う醜い存在。

 モクリサさんの言っていた潰すべき害。


 その常識が間違っているかもしれない。と、その可能性が浮かび上がってしまった。


 何で……依頼が素材を採取するものばっかりなんだろう……? 襲われたっていう依頼が一つも無いのって……












「この後は、代表が戻り次第それぞれの寝泊まりするお部屋へご案内します」


 僕はみんなに話さなきゃいけないことをいくつか話す。当たり前だが王城にも客室はある。

 確か、全部で六十部屋ほどあるって言ってたはず。もうほぼほぼホテルじゃん


「それまでは……そうですね。質問タイム、にでもしましょうかね」


 知らない世界で知らないことだらけ。ならこういう時間を設けておいた方がいいよね。暇だし。


「何か聞きたいことがあれば、気軽に挙手をお願いします」


「はい! 質問です!」


 と、いきなり一人の男子が手を挙げた。

 このスピード。既に何を聞こうか考えていたのかな。流石。用意周――


「はい! レンさんは、恋人はいるんですか?」


 到……ん? は? 何聞いてんのこの人?


「お……おぉ、ど、どうなんでしょうか?」


「……」


「ゴクリ」


 え、何? 何でこんなに注目されてるの? え、待って、すごい恥ずかしいんだけども。


「……こ、恋人はいません……」


「おおぉ!」


「やったぞ! おい!」


 え、何これ? 何このくだらない質問? そういうのは別の機会に聞いてほしかったんだけども。この人達はどれだけ僕を抉れば気が済むんだ。

 恋人……いや、やめよう。考えないようにしよう。どうせ叶わぬ恋だったんだから。もう無理なんだから。


「ねぇ何かテンション下がってない……?」


 下がるに決まってるでしょ! 僕が、とか関係無しにこういうのって普通は恥ずかしいもんでしょ! バカなの!?


「あんたが変な質問するから!」


「しょうがないじゃん! どうせ皆も気になってたでしょ!」


 何処をどう気になるのだろうか……よくもまぁこの状況でそんなしょうもない質問ができたなとは思うよ。


「で……では、他に何か質問がある方は……」


 僕が言い切る前に多数の手が勢いよく突き上げられた。

 良かった。でも、何でだろう。嫌な予感がする。


「ファ、ファーストキス、はどうかしら!」


 ……代表! 早く帰ってきてお願い!









「ただいま戻りました」


 衝撃君ことソウヘイさんを案内していた召喚士さんが戻ってきた。

 あの後も、「はい!」と、手を挙げながら声を上げる人が続出したおかげで、代表が戻るまで気まずい沈黙が続くということも無かった。

 ただ皆、僕のプライベートにおそろしい勢いで踏み込んできたけど。かなり怖かった。


「……」


 あれ。どうしたの? 何で下向いて……落ち込んでるの……かな? え、あの短時間で何があったの? 良い予感が全くしないな……何かちょっと怖いんだけもども……


「ん、あーえっと、何だっけ?」


「……」


「明日の予定? 聞いてきました」


 が、僕の前に立つと爽やかな笑顔になった。

 向こうで一体何があったのかは分からないけど、今はあまり詮索しないほうが良い……よね?


「明日はまず、二階の食堂で他の召喚者との顔合わせだそうです」


「……あ、わ、分かりました。ありがとうございます、しょう……ヘイさん」


「ソウヘイですよ」


 危なっ。思わず衝撃さんと呼ぼうとしちゃったよ。衝撃さんは僕が勝手につけたあだ名なんだから。本当に考えすぎは良くないや。

 そんなことよりも、明日は顔合わせか……大丈夫かな……


「さて、これから皆さんのお部屋にご案内しま――


「メイドさんは?」


「……は?」


「ちょ、話の腰を折りすぎたからレンさんが目に見えて不機嫌になっちゃってるじゃん!」


「おだてなさい! ご機嫌とりを! 早く!」


 僕の不機嫌さが露骨だったのか、女子がそう促す。けど違う。今の僕はおだてられたいわけじゃない。


「ごごごめん! やっぱ何でもないです! いやぁ、私服姿のレンさんは可愛いですな! な!」


「おう! 最高ですぞ!」


「私服でもきゃわわで素敵よ!」


「よ! 最高の美少女!」


 まるで「あの女」に群がる輩みたいに、上辺としか思えないほど薄っぺらい褒め言葉が僕に突き刺さる。

 ねぇ、これ多分バカにしてるよね?


「あの。僕、男子高校生って言ったはずなんですけども……」


「あ」


 ……今ここにこの人たちと僕との間に深い溝ができた気がする。なんだ美少女って。


「……兎に角……皆さんの部屋へとご案内します」


 何で僕はチビなんだろう。背が高い美男子だったら良かったのに……そうすればこの人達もこんな舐めた態度は取らなかっただろうし。


「........」


 マユカさんは僕を無言で見つめている。多分、聞こうかどうか迷っているのだろう。できれば今ここでは聞かないでほしいかな……


「それでは僕についてきてください」


 僕は手を上げながらそう言い、後ろにある扉に向かって歩いて行った。

気付いてる人は気付いている。レン君、可愛いと言われた事については否定していなかったということに。

まぁ実際は、かっこいいって言われたいけど褒められている事には変わりないから複雑な心境、ってだけなんですけども。

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