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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
10/107

1.10 アグレッシブな会長さんなのです

スキンシップは大事です。でも男同士の肌密着ってあんまり見ないんですよね。何でだろう。需要か?

 その後、説明を聞き終えた僕たちはセルント王に、


「明日はまず、私の部屋の前に集まってくれ。それでは、今日は夫々の部屋で明日に備えてくつろいでいてくれ」


 と言われ、その日はそれで解散となった。

 セルント王の部屋を出ると、前方には大きな玄関。そこから僕とハヤタ会長は左側、ミチルちゃんとフルキさんは右側へ歩いて行く。


「それじゃまた明日。朝、ここでね」


「了解です。ビシッ」


「自分で言っちゃたよ……可愛い……」


「はぅ! フルキに可愛いって言われたです……」


 いちゃつく二人。羨ましいわぁ……

 僕は改めてフルキさんを見てみる。

 眉毛まで見えるほど短く、金色寄りの茶色の髪。左目は黒、右目は緑、瘴気が感じられない目つきをしている。だというのに、何処となく色気も漂っている。ぐぅぅぅ……


「良いですね……好きな人が目の前にいるっていうのは……」


「あははは。それっぽいセリフ言ってるけど、聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ。よくそんなセリフを言えるね尊敬するよ」


「……すみませんでした……」


 覇気のない目を僕に向けながら言った。凹む。









 左右両方の突き当たりに螺旋階段がある。それを使って二階へ登る。


「二……二階、とは、なんなんでしょうか……?」


 僕は膝に手を置き、激しく呼吸をしながらそう言う。

 方向感覚が……狂いそうだった。なにこれ、本当に階段……?


「あ、ははは……二十階分ぐらい登った気がするね」


 ハヤタさんも息が切れており、少しだけ顔が赤くなっている。大袈裟な表現に見えるけど、何故か自分もそう感じてしまった。

 僕ってこんなに三半規管が弱かったかな……? えっと、確か今は王城の外側を向いているはずだよね?


 螺旋階段を登り終えて前を見ると長い廊下がある。並んで歩くことはできるし、実際は十分な広さなんだけど、奥に長いせいか、


「なんだここは! 狭い!」


「確かに僕も狭く感じてしまいましたけども……実際はまぁまぁ広いですよ。両手を広げられるじゃないですか」


 錯覚かな? 確かに狭く見えたけどさ……何も声に出さなくてもいいじゃない……

 僕とハヤタ会長は、階段から右に曲がってすぐ目の前にある扉へと向かっていった。











 扉を開けるとすぐ寝室に繋がっていた。広々とした空間。そして奥にベッドが並んでいる。細長いベッド。二人どころか七.八人ぐらいならゴロンとしても余裕がありそうだ。そして左と右の両壁にそれぞれ扉がある、そんな部屋だ。

 僕は今、その部屋でハヤタ会長と二人っきりになっている。確認したところ、ベッドだけではなく(扉から見て)左の部屋には洗面所とお風呂、(扉から見て)右の部屋には台所があった。

 何で台所……? 飯は自分で作れってか?


「そういえば……僕たちって最近二人っきりになることってなかったよね」


「確かにそうですね。ミチルちゃんとサリム君が来てからは、いつもどっちかが生徒会室にいましたからね」


 ベッドに腰掛けていたその時、ハヤタさんがぽつりと会話を始めた。

 そういえば、最初の頃からハヤタ会長はこんな感じだったな。ある意味怖かったな……


「ハヤタ会長って、あの頃から全く変わってないですよね」


「アハハ。急な毒ぅ。そういうレン君だって、あんまり変わってないじゃん」


「そうでしょうか。成長してるとは思いますよ。あの頃よりはちゃんと話せてますし」


「あーうん。うん。うん……」


「すみません。何で僕の体をそんな舐め回すように見るんですか? 絶賛喧嘩販売中ですか?」


 そんな他愛もない話を僕たちはしているが、僕はいつも通り振る舞うだけでも精一杯なのだ。

 僕はハヤタ会長の顔に視線を向ける。

 前髪で顔を見せていないが、その奥はもちろん整った顔立ちをしている。いつもは隠れているが、目はぱっちりと開かれており、鼻も大きすぎず小さすぎず、程よい大きさだ。そして左目が黒、右目が青色のオッドアイを持っている。

 さっきも言ったが、今はハヤタ会長と二人っきりなのだ。「あのハヤタさん」かどうかを聞くなら今がいいのかもしれない。のだが、


(自分が転記された人だってことは、周りには絶対に言わないでね)


 僕はかつて女神さんに言われた言葉を思い出す。同じ転記者であるハヤタ会長にも言っちゃいけないのかな……? そこらへんの事もよく聞いておけばよかったな……あれ、そういえば、


(転移は、体も時間も変えずそのままその世界に行く事だよ。まぁこの方法は、あんまり良くないって言われてるんだけどね……)


 って言ってたような……セルント王は召喚、って言ってたけどやってることって転移とほぼ同じような気が――


「――ン君? もう、レーンくん!」


「へっ……?……はにゃあぁっ!?」


 すると急にハヤタ会長が猛烈な勢いで抱きついてきた。痛くはなかったけども、おかげで変な声を出してしまった。


「ちょ、な、何でいきなり抱きついてくるんですか!? びっくりするじゃないですか!」


「あはは。ごめんごめん」


 ごめんって、そんな軽く言わないでよ。心臓がキュッてなっちゃったんだから。

 僕はそんな恨めしい気持ちで、ハヤタ会長を睨む。


「さっきからずっと考え込んでたからさ。ちょっと不安になっちゃってね」


「不安……?」


「何考えてるのか知らないけど、ちょっと考えすぎだよ」


「んっ……」


 未だ抱きつかれているので、耳元で、囁くようにそう言った。

 自分自身、考えすぎな自覚はあんまり無かったけど……ハヤタ会長にはそう見えた……というか、実際そうだったのかな……後ちょっとこそばゆいんだけど。


「えと……そう、ですか?」


「そう。考えすぎ。たしかに考えることは大事だけどさ、気楽に行くっていうのも同じくらい大事だと思うよ」


 今度は僕の頭を撫でながらそう言った。

 気楽に、か……そうは言われてもなぁ……後撫でないで。良いことを言ってるのかもしれないけど、台無しだから。気持ちいいけども。


「多分このままじゃ、レン君は何かやらかすと思うよ」


「何か……ですか……?」


「そ。だからまずは、肩の力抜いて頭を一回空っぽに、ね?」


「……はい。分かりました」


 すうぅっはあぁっ、と深呼吸を一つする。


「うん! オッケー。それじゃあ一緒にお風呂でも入ろっか」


 ゴボッ!? ボッ! ゴホッ! ゴホッ!


「な、何でお風呂に入る流れになるんですか!?」


 ハヤタ会長のよく分からない提案に、深呼吸で出し切ったと思っていた空気が変な音を出しながら出てきた。

 あれ? この流れって裸のおつきあいルートへ行くものなのかな!?


「ほーら、何を恥ずかしがってるのかなぁ? 早くしないと、レン君のあんな所やこんな所を触りまくっちゃうよ〜」


「ひぃ! や、やめてください! 流石に恥ずかしいですよ! というか何でそんなことをするんですか!?」


「あっははは。両手で体を守るように抱くのやめた方がいいよ可愛いから。とにかくどうする? 入るの? 触られるの?」


「ひやぁっ!」


 やばい! この人の思考回路絶対におかしい! 怖くなって離れたのに近づいてきて僕の脇を触ってきたよ!?


「ま、脇腹をツンツンするのはやめてくだひゃあっ!」


「えぇ……もうっ!」


「ほへぁっ!?」


 僕の必死の乞いでツンツンをやめたと思えば、今度は脇を掴んできた。

 違う、そうじゃなくて、ツンツンをやめればいいって訳じゃなくて!


「ががが、がっしり掴めば良いというわじゃぁっ!」


「むぅ……らぁっ!」


「ほにゃっ!?」


 僕の本気の乞いで掴むのをやめたと思えば、今度は脇をこちょこちょしてきた。

 違う、それも違う! 掴まなければいいって訳でもない! 


「く、くすぐったいです! というかもう既に触ってるじゃないですか! エッチひうぅ!」


 や、やばい、何この人のくすぐり方が変! 今まで人にくすぐりまくったことがあったのか、ツボを知りまくってる。

 な、にこれ、何この感覚。体がふわふわする……力が抜ける感覚が……


「ひぁ……! にゃぁ……」


「あれ? なんか諦めたような顔してる……つまんないなぁ……」


 そんな僕の顔を見てつまらないと思ったのか……というか言ってるけども……僕の耳元で囁きながら、


「本気でくすぐるよ?」


 処刑宣言をした。


「にゃぁっ!? そ、それだけは! 入ります! 入りますからやめてください!」


「ふふふ、屈服したね。よーしそれじゃ! レッツゴー! バスへゴー!」


 ハヤタ会長は僕の腕をガシッと掴み、どしどしと浴場(玄関から見て左側の扉)に向かっていった。

 ちょ、ま、な、ふ、振りほどけない!?


「ハ、ハヤタ会長は、もう少し緊張感を持った方がいいと思いますよ!」


「えー」


 いや、えーじゃなくて!

今更ですけど、二.三日に一回更新って牛歩何ですかね……? 意外とペースありますよねコレ?

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