01-01 転生
異世界ものを書きたくなって、とうとう書いてしまいました。
異世界ものの小説は多そうですが、独自色が出せるといいなと思っています。
相変わらず文章や構成がへたくそですが、趣味で投稿してますのでご容赦を。
――あれ? ここはどこだろう?
松本蓮は、なぜ自分がこんな場所にいるのかがわからずに、辺りを見回してみた。
蓮が今いるのは、どこかのビルの廊下の様な場所で、彼のすぐ前には木目調の引き戸があり、後ろには何人もの人が並んでいる。
――確かさっきまで、学校の帰りに駅のホームで電車を待っていたはずなのに。
いつ、どうやってここに来たんだろう。思い出せない。
やばいぞ。若年性痴呆症というやつか?
でもなんだろう。何かの順番待ちをしているのかな?
恥を忍んで、後ろの人に何の順番待ちか聞いてみようか。
彼がそう思っていると前のドアが開き、中から女性が声を掛けてきた。
「次の方、どうぞー」
その女性は蓮より五、六歳年上で、オフィスウェアというのだろうか、白いシャツの上にチェックのベスト、下は膝が少し出るぐらいのグレーのスカートを履いていて、どこかの受付嬢のような感じに見えた。
「あっ。僕?」
「そうですよ」
――そういえばこのドアは、近所の病院の内科の診療室のドアに似ているな。
学校の帰りに医者にでも寄ってるんだっけ?
あー、本当に思い出せない。
でも、並んでいたわけだから、入らないといけないか。
蓮はそう思いながら、その部屋に入って行く。
その女性がドアを片手でおさえてくれて、蓮はその女性の前を通り中に入る。
その時いい香りがして、彼はその女性の方をチラッと見た。
――いい匂いだ。それに彼女、すごい美人だなー。
「嬉しいですわ」
と、その女性が蓮に笑顔を向けてくる。
「え?」
――今、僕は口に出さなかったよな?
「ここは霊界ですから、思ったことはみんな筒抜けですよ」
――えっ!? 霊界!? なんかの冗談?
「冗談ではありませんよ。事故で死なれた方は、よくそういう状態になります。自分が死んだことに気が付かないんです。とにかく、中に入ってあの椅子に座ってくださいね」
「え? あ、はい」
彼はいぶかりながらも、部屋の中央に置かれた椅子に向かう。
その前の少し離れたところには、スーツを着た面接官みたいな男性が机を前に座っていた。
――霊界だなんて。どこかの面接会場じゃないか。
僕が緊張しているのを見て、ジョークでも言ってくれたのかな?
それにしても僕は、何かのアルバイトの面接にでも来ていたんだっけ?
ぜんぜん記憶がないぞ。やばいやばい。
でも、面接ならちゃんとしないとな。
蓮が座ると、前に座っていた男性が口を開く。
「お名前と年齢、性別、そして住所をお願いします」
「はい。松本蓮、十七歳、男。住所は神奈川県……」
その男性が書類をめくる。
「ん? リストにありませんね」
「リストにありませんか?」
と、今案内してくれた女性が、男性の斜め後ろからそのリストを覗き込んだ。
「ええ」
「今、状況を確認しますわ」
女性が困った顔をして、どこかにスマホで電話を始める。
「……え? そうなの? ……わかりました……」
男性が蓮の頭からつま先までを見定めるように見た。
「おそらく、あなたは間違ってここに来てしまったようですね?」
「間違い? あ、じゃあ帰ります」
蓮がそう言って椅子から立ち上がると、電話を終えた女性が、
「今担当者に確認しましたら、あなたの肉体はバラバラになってしまい、もう修復不可能だそうです。ですから、もう帰れません」
と、言ってきた。
「何言ってるんですか? 肉体って、ここに……」
女性は一瞬フッと笑うと、蓮の方に歩み寄って手を伸ばしてくる。すると、彼女の手が蓮の体を貫通した。
――え!?
これって……。
「これで、わかりましたか? あなたは死んで、魂だけここに来ているんです」
「そんな」
――本当に死んだのか。
「そしてここは、いわゆるエンマ庁です」
「エンマ庁……」
蓮の認識では、エンマ庁と言えばどこか中国を思わせるような昔の建物で、そこに怖い顔をしたエンマ大王がいて、死者を天国や地獄に振り分けるというものだ。
改めて周りを見回すと、ここはどこかの会議室のようにしか見えないし、前に座っているのはビジネスマンのようなスーツを着ている普通のおじさんだ。
それに今案内してくれた女性も、美人ではあるが受付嬢のようにしか見えない。
だが蓮は、先程まで彼が座っていた後ろの方の壁に、ドアがいくつかあるのに気がついた。
そのドアにはそれぞれ、「神界」「天国」「中有」「地獄」などと書いてある。
――あのドアの先に天国や地獄があるんだろうか。
それにしては、この部屋は近代的なんだけど。
でも、さっき彼女の手が僕の体を貫通したのを考えると、やはりここは霊界……なのか。
「霊界も時代に合わせて変わるんですよ。いつまでも、昔のデザインではありません」
と、女性。
「ということは、あちらの男性は……」
「昔で言う、エンマ大王様です」
「あれ? そう言えば三途の川は?」
――何かで読んだことがあるけど、死者はまず三途の川を渡るって。
「あれは、業務の効率化により、省略されることになりました」
――業務の効率化って……。
もしかしたら、これは夢なんだろうか。
女性が続ける。
「どうやらあなたは、ここにまだ来るべきではなかったのに来てしまった。そしてもう帰れないわけです。えっと、後ろがつかえてますので、とりあえず別室でお話ししましょう」
「あ、はい……」
蓮はその女性にエンマ大王が座る斜め後ろにあるドアに案内され、別室に通された。
そこは応接室のような造りになっていて、女性は彼に奥のソファを勧めてくる。
蓮がそこに座ると、その女性は彼の正面に座った。
「じゃあ、ここは二人だけだから、リラックスしていいわよー」
と、女性。
――なんか急に態度が変わったな。
でも。「後ろがつっかえている」て言ってた割に、彼女もここに来ちゃって、案内とかはいいのかな?
「あ、案内のことは気にしないでね。私たち神は分身を使えるから」
――そうだった、考えを読めるんだっけ。
でも神様なんだ?
「分身が使えるんですか?」
「そうでないと、全国に何千もある神社に同時にいられないでしょ?」
「あ。なるほど」
「でも、金に汚い神主がいる神社なんかは、臭くて近寄れないけどねー」
――うーん。そんなものなのか。
女神は足を組んでソファの背もたれに体重をかけ、どこから出したのか、何かのファイルを読み始めた。
「ふーん? 今調べさせた資料によると。君はホームから線路に転落した老婆を救い、自分は逃げ切れなくて電車に引かれたのね?」
「あっ。そういえば、お婆さんを助けたような気もします」
「事故で死ぬと、その直前の記憶は失われてしまうことがあるのよ」
「そういうことなんですか。でも、そのお婆さんは助かったんですね?」
「そうよー。君はいいことしたんだから、胸を張っていいわよ。人を救うと徳分になるわ。でも君は、本来はここで死ぬ運命じゃなかったのね? あと寿命が六十五年残ってるわ」
「そうですか」
「えーっと。君はこれまで悪いことも、とびきりいいこともしなかったけど、お婆さんを救ったことによって天国に行けるわねー」
「天国、ですか?」
「そうそう。そこで三百年間過ごして、それからまた生まれ変わるのね」
「三百年も!?」
「それが普通よ」
女神はそう言った後、蓮の方に身を乗り出して小声になる。
「でもココだけの話、天国は退屈よー。まあ、悪いことをして地獄に行って、三百年間拷問されるよりはいいけどね」
――げ。地獄に行くと、やはり拷問されるのか。
「でも……天国は、退屈なんですか?」
蓮も身を乗り出して、小声で聞いた。
「そりゃそうよ。いくら環境がよくても、ずーっとそれが三百年も続いたら飽きるでしょ?」
「そう言われてみれば」
そこで女神は再びソファにもたれかかり、声の大きさも戻る。
「それで、今回君はあと六十五年寿命が残っているから、天国で三百年過ごした後、生まれ変わって六十五年だけ生きて、また死ぬことになるのよ」
「え? 六十五年だけ?」
「そ。普通の寿命に今回の残りの六十五年足して、百六十五才まで生きるなんて肉体が持たないからね。だからまず、今回生きるはずだった六十五年を生きて、また死んで。次は普通に百年ね」
「それで、世の中には早死をする人がいるんですか?」
「他にも理由はあるけどね。そういう人もいるわ」
「六十五年って、ちょっと中途半端ですね」
ここで女神は、何かを思い出したようだ。
「あっ、そうそう。今なら特別キャンペーンで、このまま異世界に行くことも出来るわ。どうする?」
――なんだそりゃ?
「異世界ってもしかして、アニメやゲームみたいな、剣と魔法の?」
「そうよー。そこで冒険をして、六十五年経ったらまた地球に生まれ変わる事もできるしー。もし望むなら、そこに平均的な寿命までいてもいいわ。特別キャンペーン中だから、今なら色々選べるわよー」
――RPGゲームは好きだし、なんか面白そうな気がする。
三百年間、退屈な天国でダラダラしているより、いいかもしれないな。
女神が続ける。
「ところで、もし君は異世界に行ったらどんな人生を過ごしたい? やはり、冒険するー?」
「冒険ですか?」
「うまくすれば、金持ちや王様になれるかも知れないわよ」
――前にやったゲームの中では、ある程度までレベルが上がった後、ずーっと武器を作って売ってたよな。
そういう生き方が、自分には向いているかも知れないな。
「物を作るのが好きなので、そういう仕事をして、のんびり過ごすのもいいかなって」
「そう? あまり欲が無いのね? えっーと、向こうでは今と同じ十七歳からでいい?」
「まあ、とりあえずはそれで。あれ? そういえば、いわゆるチートとかいう特別待遇は得られるんですか? 攻撃魔法とか?」
「そんな能力持ってたら目立ってしまって、のんびり生きられないわよ。すぐに、魔物の討伐とか、戦争に駆り出されちゃうから」
「なるほど。じゃあいいです」
「物を作るのが好きなら、木工職人や石工、鍛冶屋とかをやるのもいいかもしれないわね。オススメは鍛冶屋かしら。戦争が時々あるから剣なんか作れば食べるに困らないはずよ」
「あれ? 戦争があるところなら、危なくないですか?」
「うーん。それなら『幸運度』を上げておくわ」
「幸運度?」
「あら、幸運度をナメてる?」
「あ、いえ」
「幸運は生きていく上で一番大切よー。例えば、森に入っても絶対勝てない様な凶暴な魔物に出会わないとかー、出会っても助けが入るとかー。あとは、自分がいるところに敵が攻めてこないとかー。もちろん、自分が望んでそういうのを求める場合は別だけどね」
「あのー。聞きにくいんですけど、結婚とかは?」
「君、もしかして結婚したいの?」
「なんというか。あまり女の子にモテたことがなくて」
「幸運度が高ければ、いい縁に恵まれるわよ」
「じゃあ、気に入った女の子に声を掛ければ、うまくいきます?」
「それはオススメしないわ。例えば、可愛くて好みの女性でも、付き合ってみたら性格が悪くてひどい目にあった、なんていうこと聞いたことがあるでしょ?」
「まあ」
「幸運度が高いと、そういう女性は自然と近づいてこなくなって、外見はまあまあでも、性格がよくて、さらに相性もいい。将来幸せになる相手しか近づいて来ないわ。だから、無理して追わないことね」
「そういうもんですか」
「そういうものよー。あとは、もし冒険者とかやりたくなったときのために、魔法も含めて一応全ての素質は開放しておくから、あとは君がどう伸ばすかね」
――面白いかも知れないな。
「わかりました。じゃあ異世界で」
「一応言っておくけど。私利私欲で人を殺したり苦しめたりすると、幸運度が減少していくから気をつけてね」
「え?」
「あなたが今までいた世界でも同じでしょ? さっき徳分と言ったけど、幸運度と同じこと。幸運度がマイナスになると悲惨よー。何やっても、うまくいかなくなったり」
「あのー。もし、さっき言ってたみたいな戦争に駆り出されて、敵の兵士を殺してしまったら?」
「正当防衛や、国のためとか人のためなどの大義があれば、幸運度は減らないわ。つまり、プラスマイナスゼロっていうことね。人を襲う魔物を殺しても大丈夫」
「わかりました」
「じゃあ、鍛冶スキルと加工スキルは始めから付けとくわね。あとは、剣も振るえない人にいい剣は作れないから、剣のスキルを少し。それとー、すぐに上達して食べていけるように、器用さもおまけしておくわ。あと、もう少し美男子で」
「ありがとうございます!」
――なんか楽しみになってきた。
「のんびりした生活を送りたいのよね? それなら異世界に着いたら、まず南に向かいなさいね……」
蓮は、だんだん頭がボーっとしてきた。そして視界が白くなる。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
蓮が消えると、エンマ大王がその部屋に入ってきた。
「彼は無事に異世界を選んだようですな」
「私にかかれば、ちょろいちょろい」
と、女神。
エンマ大王が、ジト目で女神を見る。
「しかし、説明も無しに南に行けなど」
「嘘は言ってないわ」
「確かにそうですが、彼は北半球の出身。これから行く国は南半球にありますので、太陽を目印に行ったら北に行ってしまいます」
「南の町にそのままいけば、彼はしばらくは平穏な暮らしが出来るけど、いずれ町を出なければならないことが起こる。まずは北に行ったほうが、長い目で見たら彼の為にもなるし、あの世界の為になるわ」
エンマ大王は、ため息をついた。