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今宵、君の眠る場所へ。

「秋・・・此れでよかったんですかね」

レジに座った少年が問う。

秋と呼ばれた少年は、棚にクスリを並べながら答える。

「此れは、始まり。終わりではないよ――」


少なくとも、僕らにとっては……ね。


秋は、清潔な店内の天井隅を見つめて笑う。


「全て計画通りってことですか」

それを受けた少年は、レジの下から今まで一度も揃えたことのないルービックキューブを取り出し、両手でいじり始めた。

「でも。事件は、解決していません。」

棚を移動した秋は、レジからは見えない位置に行ってしまった。

どこからか、秋の声が聞こえる。

「そうだね……はじめから期待はしてなかったけど。上手くやる処か、言っている事滅茶苦茶だったしね。」

「でも、俺なら『事故』なんて、可能性は視野に入らなかったと思います。相手が人間である以上、最高の解答を導き出したように思えるのですが……。証拠も一応噛み合いますよ」


遠くのほうで、何かが崩れ落ちる音が聞こえた。


秋は、崩れ落ちた風邪薬の箱の山を見下ろし、無言で棚に戻し始めた。

「蒼……。証拠は揃っていないよ」

名前を呼ばれて、ルービックキューブから目を離し顔を上げる。

「……じゃぁ・・・どうするんですか?」


「なるほどね……面白そうじゃないか」

視線の一直線上に蒼を捕らえて。秋は笑った。





遠い昔のことである。


一人の少女が、一冊の本を小脇に抱えて私のもとにやってきた。


彼女は、私に背を向けて地に座り本を読み始めた。


私は、尋ねた。ひとりでさみしくはないかと。


彼女は、見向きもしなかった。


私は、いつも一人だった。唯、彼女はいつもそばにいてくれた。


その後も、彼女は私の問いかけには一切見向きもせず。


しかし、彼女は毎日私のもとに来ては、一人楽しそうに本を読んでいた。


ある日、その町に雪が降った。


其の日以来。彼女は私のもとにくることはなかった。





死んだのだろうか……。

生まれたのだろうか……。


唯一つ解ることがある。


「知らない、天井だ」

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