今宵、新月の迷路に惑う君へ。
日曜日。蛍光灯を買いに行った。
月曜日。友達が出来た。
火曜日。友達が増えた。
水曜日。土手で転んだ。
木曜日。昔の夢を見た。
金曜日。始まった。
学校の帰り道。
月曜日に、突然「俺とお前は、友達だから」と言われて、尚且つ「行くから」と言われ、
人形館の展覧会のチケットを渡された。
どこか、冷めた感情を隠すために、小さく笑った。
「何がおかしいというか?」
「いや・・・男が人形って、あんまり聞かないから」
「どひゃー、お前わかってないな・・・(略)・・・それに、この人形を作った人は、日本の人間国宝にも指定されている、偉大な人間なんだぞ!!」
人間国宝・・・?
「へぇ・・・すごい人なんだね・・・」
すごいも何も・・・(略)・・・なんだ!!
*
「これは・・・」
人形館入り口。
入り口で、二人を待っていたのは二人の警官と、張り巡らされた黄色い帯。
「なんで・・・なんで、こんなことに・・・」
悲痛な少年の言葉にも警官は、ピクリともしない。
悠斗は、いたたまれなく成って彼の制服の袖を軽く引っ張った。
彼は、動かない。
悠斗は、彼の横に立つと首1つ分高い彼の顔を覗き込む。
彼は、心配そうな悠斗の顔を見ると何を思ったか、優しく笑って悠斗の頭に手を乗せた。
「しょうがないな・・・いこうか」
うつむいたままの悠斗は、突然何かをつぶやくと彼の手をとり、
「いこう・・・」
閉鎖された、人形館へ侵入した。
*
「君は!?」
「久しぶりですね、飛ばされたんですか?」
悠斗は、微笑する。
「高西さん・・・」
高西と呼ばれた刑事は頭をかくと微笑んだ。
「君のおかげでね」
「そりゃ、どうも」
弱った・・・ぜんぜん話についていけない。
「あのー」
忘れられた少年は、
「俺・・・帰ってもいいですか?」
「駄目です。ここまで僕を巻き込んでおいてそれはないでしょう」
・・・・・。
*
「殺されたのは、火闇隆一。小闇金会社の社長で、先日亡くなられたこの家の人形師の富坂由紀子は、彼の会社に多大な借金をしていたらしい。
被害者、火闇に外傷はなく死亡原因不明」
それって、殺されたって言うのと、とても矛盾している気が・・・。
「それって、殺人事件っていうのと違いますよね」
高西の説明にけちをつけた。
(なに、これ)
悠斗に無理やり連れて来させられた少年は、全く状況が読めなった。
「あのー・・・」
「そこなんだ」
え?無視ですか。
「事件が起こった当時、この家には火闇をのぞいて3人しかいなかった、そしてその3人全員の証言が・・・」
全く異なっていると。
しばらく、二人とも無言の状態が続いた。
「なら・・・」
悠斗が突然、沈黙を破った。
「証言は如何でもいい・・・現場を見せてください」
*
答えなんて欲しくない。
でも、知る必要がある気がする。
過去の記憶と罪の軌跡を。