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今宵、新月の焼ける光の中で。

稲荷山神社。

眠ったように動かなかった青年がピクリと首を動かした。

「ようやく来たみたいだね」

下のほうから、ごちゃごちゃと小さい声が聞こえた。

いやーつかれた。

此れも・・・さま・・・めだ。

だ・・・に・・・を・・・。

ぬおぉぉおぉおぉぉぉおぉ。

「・・・・・・」

青年が帽子を取って立ち上がる。

強い風が吹き、彼の手中から人型を連ねた紙が飛んでいった。

後ろから女性の声が聞こえた。

「それは・・・」

「ん、保険ね。良いんだよ、彼が今回の事件を解く」

風が収まった。黒縁のめがねを外した。

「鍵だから」

開かれた双眸はせい

「事件?」

「そう・・・事件」

未だに下から声がする。

はやく・・・いと・・・が・・・。

青年は、溜息をつくと言った。

「始めようか。君たちの大事な”たかぎさま”の蘇生を」



「其の痣は・・・」

悠斗は、青年の顔を這い回る、ムカデの形をした黒い物体を指差していった。

青年は、一瞬いぶかしげな顔をしたが、すぐに笑顔になった。

「見えるんだ」

みえないとでも思ったのか。

「それは、や」

突然口をふさがれた。

「それ以上は言うな、十三逆様にはか」

「良いんだよ、それが僕の・・・もしくは彼のカルマだから」

青年、十三逆が女性を制止した。

悠斗は、何かを感じた。

十三逆の目に。

十三逆の声に。

「貴方はもしかし」

「それより、帰らなくて良いの?もう8時32分だけど」

ん?

悠斗は、あせって時計もつけていないのに手首を見た。

「じゃぁ・・・っと、其の陣は、あなたが描いたものではないんですね?」

「あぁ違うよ」

悠斗は、十三逆にさようならを言って走って家に帰った。


「面白い子だね・・・自分の力に気付いているのに、使いこなせていない」

「それは、お前もだろう・・・十三逆」

「君は、なぜ僕に付きまとう」

「・・・そういう」


契約だから。





悠斗が家を出て行った。

正直、外には出したくなかった。

「悠斗君。大丈夫かしら」

「思ったより、普通の子だった」

「そうね」

「真面目そうな子だった」

「そうね」

「悠斗君が、あんなことをするとは思えない」

返事は、返ってこなかった。

代わりに、最近嵌ったと言う韓国ドラマの主題歌が聞こえてくる。


あんなこと・・・。


一ヶ月前、千葉県にある高校が全焼した事件。



突然だった。

教室の端。あまり日のあたらない廊下側の席に、彼は座っていた。

悠斗が突然立ち上がる。

「・・・逃げろ」

何を言うか。

「市橋。授業中だぞ」

「・・・・逃げろ」

悠斗は、教室の窓を見たまま動かない。

「市橋」

「なら・・・」

一瞬だけ、首を回して教師を見ると

「どうなっても知らない」

とだけ言うと、「行こう」と手元の空間に語りかけて教室を駆け出していった。


「守るんだ・・・。君は・・・俺が守る」


直後。少年の放った焔を纏った紙により学校は、短時間で全焼に至った。













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