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羊の小躍り亭

サトケンが、ハコちゃんと相合い傘をしてるのを、駄菓子屋の影から見ている謎の人影がありました。


その者は、雨に濡れるのを構わずに、サトケンたちを羨ましく睨みつけていました。



そして、サトケンが振られる十日前。

「雨止まないなー」

ハコちゃんは、ミカちゃんと並んで学校帰りに、カフェによって、あんみつを幸せそうに、食べています。

それを見て、ミカちゃんも嬉しいのです。

あの頃、旅をしてヤミノオウを封印出来て良かったと思う反面、失ったものもあるから、少し胸が痛くなる時がありました。

村も、国の援助で発展して、王都並みに都会になって、行商の人々が来て、賑わうようになりました。

しかし、昔の静かな村の頃も好きなので、少し寂しい気分にもなります。


「どうしたの、たそがれて?誰かさんのこと、考えてるのかな~?」

「ち、違うよ、もぅ」

にやにやからかうハコちゃんに、ふくれて見せる。

バケノジョーのあっぷっぷーに似てると言われたことがあるので、封印していたのだけと、ついやってしまったのだ。


まあ、ユウくんのことで、からかわれるのは慣れてるけど。

その時、何だろうか?ミカちゃんは、魔力の嫌な感じを察知したのです。


「どしたの?」

「ううん」

そっと、回りを見回して見ても、他の客も普通に、楽しくおしゃべりしているし。

でも、光りの巫女としてのカンが、何か危険を告げている。

「でよっ」

ミカちゃんは、ハコちゃんが慌てるのを気にせずに、その手を引っ張りお代をテーブルの上に置いて、店を出た。

「ありがとうございまーす」

店員ののんきな声。誰も気づいてないようです。


サトケンは、ふてくされながら歩いていた。

雨なので、マントが濡れないか、心配なのです。

そして、人混みが多いと、マントが、誰かに触れないかも気になってしまう。

しかし、マントコレクターの誇りとして、マントを外したくないのです。


「はあ、ヒカリちゃんはいずこ?」

隣で、イブキくんが、ぽわ~んとしています。

イブキ=ジュンくんは、迷いの森でニンジンを育てるウサギの亜人です。

エルフとも仲良く、野菜の収穫祭には、友達を誘ってパーティーを開いたりします。

そして、ミカちゃんの妹として、ヒカリちゃんが同じクラスに転入してからと言うもの、ヒカリちゃんを見ては、目がハートになってしまうのでした。ぞっこんラブです。


「全く君は、ヒカリちゃん、ヒカリちゃんばかりだな。

そんなに気になるなら、会いに行けばよかろう」

「そんな!見てるだけで、ドキドキしちゃうのに、話しかけて、ウインクされたら、心臓がバクバクよん?」

「ウインクなど、するまいよ」

「何言ってんの!ぼくちゃんのフェロモンだだもれよん?ぼくちゃんは、みんながぼくちゃんを好きになっても困るから、女子と距離を取っているのよん?」

こいつは、何言ってるのかと思いましたが、そのポジティブさが、羨ましいと思うサトケンでした。

自分は、ハコちゃんともっと、仲良くなりたいと思いつつ、恋愛ともなると、弱気になってしまうのです。


「あ、ハコちゃんとミカちゃんですよん」

イブキくんの指し示す先には、何か慌ててる二人の後ろ姿でした。

「待ちたまえ!」

何があったのか、追いかけようとしたところ、横にあるカフェ『羊の小躍り亭』から悲鳴が上がったのです。

小躍り亭の主人は、客の誕生日には必ず、その人の前で、小躍りしてくれると、巷で有名なのです。


ドアを開けて、ライオンのぬいぐるみが、何かに驚いたのか、どこかへ駆けて行きました。

まさか、自分は寝ぼけているのか。

着ぐるみ族と言うのは、ミカちゃんの旅の話しで聞いていましたが、これはぬいぐるみ。

サトケンは、疑いながらも、マントを覆って、防御態勢をととのえると、慎重に中に入ります。

店内は、明るく小粋な音楽を、タコのぬいぐるみの吟遊詩人が竪琴を、奏でていました。


「タコココココココ♪」

八本の足のパワフルかつ、繊細な音………。

ハコちゃんたちが、慌てて出て行ったから何かあったのか?

サトケンは、警戒し、イブキくんは、気づきました。

人の気配がするけれど、そこにいたのは、ぬいぐるみ?

ぬいぐるみに、興味のないサトケンですら、思わず抱きしめてしまいたくなるくらいの可愛い動物たちのぬいぐるみだったのです。

その衝動をこらえ、これは、ハコちゃんと関わっているのかと、考えます。

しかし、ハコちゃんは、ただの雨女。

いや、サトケンにとっては、可愛い雨女です。

こんなことは、するまいと考えてると、イブキくんの嘆きが聴こえました。


「かわいこちゃんがみんな、可愛いぬいぐるみにぃ~!いや、でも、可愛いからいいのか?よくないですなぁ!」

しくしくと涙を流しながら立ち上がります。

こいつは、何を言ってるのかと思っていたら、騎士団が駆けつけて来ました。



―つづく―

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