ヒカリノイルセカイ
近くの公園に入って立ち止まる。
私は、一人なのかな?泣きそうになる。
ふと、そんなことを考えた時、また、あの子が現れた。
「あなたは、私と同じ一人」
「!」
声のした方を見ると、ジャングルジムの上に、ひょっとこのお面を着けた一人の少女。
「あなたが、今までのことしたのね?」
「そうよ、気に入ってくれた?」
ジャングルジムに腰掛け、足をブラプラさせる。
「そんなわけないでしょ!お化けクリスタルを奪って何をするつもり?」
「あなたの周りの人を、みんなお化けにしちゃおっかな、てへ」
「…そんな」
がっくりと膝を着くと、へこ…んでしまわない!
「私に恨みがあるなら、私に何かしなさいよ!友達に、手を出さないで!」
すると、ジャングルジムから飛び降りると、ひょっとこのお面を投げつけると言い放つ。
「そう言うのが、むかつくのよ!」
怒りをぶつけるような、悲しみに耐えるような。
私と同じ顔で、まるで姉妹のような瓜二つ。
そこへ、バケノジョーたちがやって来る。お父さんや、あのお化けたちも?
ちなみに、もう一人の私が投げたひょっとこのお面は、バケノジョーが被っている。
こんな時でもブレないけれど、今は、スルーします。
「みんな、どうして?」
「いきなり走り出したから、心配した」
爽やかなユウくんに、にこにこ相槌を打つ。さすが、猫かぶり姫。
「僕たちは、ミカちゃんがそんなことをしないと、分かっているのです」
走って来たつむじは、手に持っているメロンパンを、食べようかどうしようか迷って、止めた。お腹、空いたんだね。
「悪かったな、お前を責めてよ」
「私たち、ミナミ=ハルカちゃんから、話を聞いて、よく考えたら、ミカちゃんが、そんなことする訳ないって…」
「いーな、あなたは!こんなに心配してくれる友達がいて!」
もう一人の私が、話しを遮った。そして、涙を流しながら私を睨みつける。
「私は、生まれてからずっと、独りだった!あなたから生まれたのに!あなたは、友達がいて、私はぼっち」
私から……生まれた?それってどう言うこと。
「ミカから、生まれたってどういうことだ?」
「あなたは、無駄に明るいわね。言葉通りよ。私は、お化けクリスタルに照らされて、生まれたのよ」
ユウくん、無駄に明るいって言われて、ちょっとショック?
「そこのお化けさんが、お化けクリスタルを落としたりしなきゃ、ミカに照らされないで私は生まれないですんだの!そしたらこんな、寂しい思いはしなくてよかったのに!意思がないままでいたかったよ!」
気まずそうなお化けに、悲痛な叫びを唱うもう一人の私は、お化けを叩きつけようとして、お化け達がびっくり!
「止めて、止めて!それだけは!」
「それを破壊したら、お化けクリスタルの魔力が広がって、みんなお化けになってしまうバケ!」
いや、そんな迷惑な物を、持ち歩かないでよ!
「いいよ!みんなお化けになっちゃえ!」
「さらに、みんな毎日のように虫歯になっちゃうバケ!加齢臭を放つから、虫歯だらけの世界バケ!」
さすがに固まる、もう一人の私はしかし、覚悟を決める。決めちゃだめ!
叩きつけようとしたまさにその時、パシンと平手打ちしたのは、お父さんだった。
普段のおちゃらけた感じでは無く、真剣な表情なお父さんは、もう一人の私を優しく抱きしめる。
「生まれて来なくて良かったなんて、悲しいこと言わないでよ。
僕は、君が生まれて来て、嬉しいよ」
「適当なこと……言わないで!」
「適当じゃないよ。僕の可愛い娘が、もう一人いるなんて、僕は幸せだよ」
「私もよ。私の可愛い娘さん、ようこそ」
お母さんが、泣きじゃくるもう一人の私を抱きしめると、優しく背中をぽんぽんする。
「私にとっても、妹だね」
涙を拭いながら、私が言うと、とうとう、わんわん泣き出した。
幼子みたいに、泣きたい時は、泣けば良いんだ。
さすがのバケノジョーも、静かだなって思ったら、サイレント!?
励まそうとしているのかな?楽しく踊っている。
………………………………………………………。
しばらくして、落ち着いたのか。もう一人の私は、みんなに向かって頭を下げる。
「ごめんなさい!私のせいで迷惑かけて!」
「ごめんなさい!」
「すまなかった、家の娘が!」
「本当に、ごめんなさい」
もう一人の私に続いて、私や、お父さん、お母さんが謝ると、もう一人の私は目を丸くする。
「何で、あなた達が謝るの?」
「家族がしたことだから、当たり前だろう?」
お父さんが、そう言うとまた泣きそうになるけど、堪えてにっこり笑顔。
「ありがとう、お、お父さん」
「ノンノンノンノン!僕のことは、パピーと呼びなさい」
「ごめんなさい」
「…おほん。そうだ、名前は何て言うんだ?」
秒で、断られてへこむお父さんは、咳払いしてごまかした!
バケノジョーが、サイレントでドンマイって口パクしてる。
バケノジョーなりに、空気を読んでる?
「ないよ。私は、ミカの影だから」
「じゃあ、パパが…」
「ヒカリ!」
「え?」
「光の巫女である私から、誕生したから、ヒカリ!どうかな?」
私が、うかがうように、もう一人の私を見ると、にっこり笑う。
「うん、良い名前だね!光に憧れていたから、嬉しいよ」
影から生まれたとは、思えないくらい明るい輝いた笑顔で、私も笑顔になった。
この日、私に妹が出来た。明るくて、可愛らしい妹がね。
この後、街の人達に謝って、領主のエラゾー様に呼び出されて、かんかんに叱られたけど、大晦日は、街の大掃除で許してもらえたから、家族や友達と共に頑張ったよ。
もちろんクリスマスは、家族四人で、祝ったよ。
ユウくんたちも呼んで、はしゃいじゃったよ…特に、バケノジョーが。
ユウくんにも、プレゼントちゃんと渡せたよ、えへへ。
ヒカリも、みんなと過ごせて、たくさん、笑ってた。良かった!
これからも、ずっと一緒だよ、ヒカリ!
―おしまい―
読んでくださった方、ありがとうございます。
この話は、時間的に、『明るいお化けに、友達が出来ました』の続編にあたります。
気になる方は、そちらもぜひ。
ありがとうございました!
次からは、番外編があります!
番外編は、『マントを好きになった理由』です。
良ければどうぞ!




