影の国のヒカリちゃん.6
「これから、どちらへ行きますか?」
おずおずと尋ねるマナリアに、旅の行程を話す。
「まずは、近辺の魔物からね」
地図をみんなに見せながら、円を描くように、城の近辺の村や街を見て行くようだ。
つむじは、どんな食べ物があるかとわくわくしている。本来の目的を忘れているかもしれない。
街道を進んで行くとやはりというか、魔物が狙って来た。
定番のスライムや、一本足に立つかかしみたいな奴など。
かかしは、元々、畑などに立てられていたが、ほっとかれて忘れられると、魔物化するのだ。
「ヒカリ様、お下がり下さい!」
見習いのコッセオが、盾を構えてスライムに斬りかかる。
「えい!魔力針!」
マナリアが、杖を振るい、魔力の針が、かかしみたいな奴を、縫いつける。
つむじや、ヒカリが出るまでもなく、あっさりすんだようだ。
「ヒカリ様、大丈夫…」
ですかと、続けようとして、スライムが人形に擬態して、襲いかかるのを、つむじの素早い蹴りで、吹き飛ばす。
「油断大敵なのです」
「くっ!分かっていたさ!」
コッセオは、ぷんぷんすると先に立って歩く。
「なーに、あれ?素直にお礼くらい言えばいいのに。情緒不安定か」
そう言いながら後へ続く。つむじは、特に気にした風もなく歩いていく。未熟な騎士見習いの怒りより、今晩の夕食なのだ。
「それにしても、多いな」
魔物を、一閃してコッセオがぼやくと、ヒカリ様はすまなそうに謝る。
「ごめんね。私が、光の世界に行ったから」
光の世界は、つむじたちのいた世界だ。カラフルな世界だからそう呼ばれている。
ヒカリの言葉に、慌てるコッセオ。
「す、すみません、ヒカリ様!そんなつもりで行った訳では!」
「ふふっ、冗談だよ。相変わらず真面目だね」
「ヒカリ様!」
「あと、普段通りしゃべってよ。昔、よく遊んだ仲なんだから」
幼馴染みなのかと、つむじは思う。そして、イブキかわいそうとも。ライバル出現だ。
コッセオが不安になるのも分かるのだ。魔物が増えれば、商人や旅人が来ない。人が来ないと、流通も滞るからだ。
雨が降ってきたので、フードを深く被り進むと、小さな村が見えて来た。雨が降っているので、人通りが少なく、宿屋の場所を聞けなかったが、すぐに見つかりそこへ入る。
「くんくん……こっちなのです」
つむじは、食べ物と酒の匂いで、宿屋の場所を当てたのです。
「あなた、凄いわね~」
マナリアは、感心したようにつむじの肩を叩くと、宿屋に入るとチェックインは、コッセオ任せ。
ヒカリの正体が分かれば、村人たちは大騒ぎだからだ。
それに、つむじとしては、ヒカリを狙う輩から、ヒカリを守らなきゃならないので、神経を使う。
まあ、つむじはいつも通り、のほほんとしているのだが。
部屋に入ると、服を脱いで、身体を拭くとすぐに着替える。
そして、窓から外を覗きながら、ミカちゃんたちのことを思い出す。
「……もう帰れないよね」
あそこでの生活は、光り耀いていて、世界はカラフルだ。
こちらのモノトーンの世界と違う。
「ヒカリさ……ヒカリ」
ノックの音がして、振り返る。
「どうぞ」
入って来たのは、コッセオだった。
「村長が、我々に話しがあるみたいだ」
「えーと?いきなり身分がバレちゃった?」
「……いや、あの影の王が、お触れを出したようだ」
困ったように一枚の羊皮紙を、渡してきた。
『うちの娘が、魔物退治に出るから、周辺の街や村は協力すること』
おもわず、頭を押さえた。ミカちゃんのお父さんもそうたったが、ヒカリのお父さんも困り者だ。過保護なのだ。
「じゃあ、会おっか」
ヒカリが、困ったような笑顔で言うと、コッセオはどぎまぎしながら、一階の食堂へ案内する。
マナリアも一緒だが、つむじがいない。
「ズングリアスは、どうした?」
「外を見回って来るって言ってたわ」
興味無さそうに答えるマナリアだったが、あの魔物を倒すときのズングリアスの動きは、只者ではないと感じていた。この剣と魔法の世界で素手とは酔狂だとも。
「ただいま戻りましたのです」
つむじは、被っていたフードを脱ぐと、一階にいたみんなにきょとんとしながらも、山菜パンをもぐもぐ。
もちろんみんなにも配っているのを見て、ヒカリはまさかねと思う。
「もしかして……」
「ヒカリ?」
「ううん。なんでもないわ」
食堂には、背の低い老人が待っていた。ホビットのようだ。
「初めまして、ヒカリ姫。わしの名は、コトイナ」
みんなを見た後、再びヒカリを見ると、頼みがあると言った。
つむじの食欲が止まらない中、コトイナは話しをするのだった。
つづく




