影の国のヒカリちゃん.4
旅の支度を整えて、魔物退治に出ることになったヒカリは、謁見の間で影の王に挨拶していた。
「それでは、行ってきますお父様」
「うむ。自分の蒔いた種くらい、自分でなんとかして見せろよ」
「……はい、お父様」
自分の母親を死なせておいて、どの口が偉そうに言うのかと思いつつも、今は黙っておく。
「………」
一礼するヒカリは、その場を去ると大臣が話しかける。
似合わない髭をいじるのが好きだが、メイドたちに噂になっている。
「あの大臣には、髭は似合わない」と、後は「ド派手な赤色の服装が似合ってない」とも言われているのだが、向きになって髭を整え、ド派手な服装を着ているドワーフみたいに小太りな大臣が話しかける。
「よいのですか?ヒカリ姫様は、お帰りになられたばかり。魔物退治など、騎士たちを派遣すればよいのでは?」
「……貴様、わしの決定に不満か!?」
ギロリと睨みつける影の王ダイアルグに、びくりとする大臣ハイラスメイン。
「滅相もございません!ただ、姫様のことを、案じたまで」
慌てるのが、妙に怪しいが相手にしない。
こいつが、野心を持ってるのが分かるものの、ダイアルグからすれば、それくらいの張り合いがなければつまらないと感じている。
ハイラスメインからすれば、この時こそが、チャンスと見ている。涼しい顔で髭を撫でて、内心ではメラメラと心を燃やしているのだ。
城内広場では、一緒に旅立つメンバーが待っていた。
「コッセオ、あなたも行くの?」
「はっ!この命に代えましても、姫様をお守りいたします」
人前なので、いつもと違い、かしこまった態度のコッセオにむず痒い気はする。他には、新人らしき女魔法使いと、ずんぐりむっくりの騎士だ。兜をかぶり顔はよく分からない。
ほんとだったら、護衛の騎士がもっと着いてもいいのだが、ヒカリに箔をつけさせようとしてるのだろう。
数少ない人数で退治させて、名声をあげたいのかもしれない。
「じゃ、行くわよ」
「僕も乗せてほしいのです」
馬に乗ると、くぐもった声で、背の低いずんぐりむっくりの騎士に言われた。なんであれ、褒められるのは嬉しいが、コッセオが叱責をする。
「貴様、姫様に随分馴れ馴れしいな!」
コッセオが近づき、ずんぐりむっくりの騎士に注意してるのだが、その騎士は気にせず兜の隙間から、むしゃむしゃとパンを食べている。
どこかで見た懐かしい景色に、思わず微笑むヒカリは、コッセオを止める。
「いいのよ、コッセオ。私たちはこれから苦楽を共にする仲間だもの。身分はこの際、忘れましょう」
「し、しかし」
「コッセオ。これは命令よ?」
ヒカリが、いたずらっぽく言うと、観念したのかため息を吐く。
「分かりましたよ。コッセオだ、よろしく頼む」
コッセオが、他のメンバーに挨拶する。
「つ………ズングリアスなのです」
どこかで聞いた声に、首をかしげるが、くぐもった声なので、気のせいかと思う。
「マナリアです。ふつつかものですが、よろしくお願いします」
三角帽子を外して、一礼すると、小柄だが出るとこ出てる胸が揺れる。
ヒカリは。いいなーとか思いつつも、みんなの視線が集まっているので、挨拶する。
「ヒカリです。よろしくお願いね」
「ははっ!」
砕けた感じにはまだまだ、遠いなと感じるヒカリだった。
窓から、ヒカリ姫の旅立ちに、冷たい目線を送るのは、大臣のハイラスメイン。
「次は、仕留めろよ」
「ハッ」
部屋にいたもう一人の男は頷くと、スッと暗闇に紛れて消えた。
その数時間前ーー。
昨晩は教会に泊まったつむじは、次の日も食料を買って来た。子供たちに気に入られたのもあるが、ヒカリのことも聞きたいからである。
この黒の象徴の国の姫で、しかも、二日後に魔物退治の旅に出ると知ったので、なんとか会えないかと思案する。
「つむじ様は、貴族だからすぐに会えるのではないですか?」
「それは違いますよ。貴族でも、貴族じゃなくても、すぐに会えないのです」
「そうなのですか?でも、そうですね、相手は王族ですからね」
ケロリアも納得してくれたのだが、貴族で通さなくていいのに、今更否定するのもなと考えている。
つづく




