迷いの森は、大にぎわい
迷いの森は、小さい頃に入ったきりだけど、今は、迷いの森の主は、迷わせることをやめたらしいので、曲がりくねった道でも、安心して進めるのかな?
木々は枯れて、すっかり、落ち葉だらけになっちゃったね。
小鳥の鳴き声を聴きながら歩いていると、遠くから騒がしい声が聴こえる?あの調子外れた歌声は、イブキくんかな?
木々をかきわけ言って見ると、イブキくんが畑に水を上げている。
うさぎ耳を、ぴょこぴょこ生やした隣のクラスのイブキくんは、ルンタッタ、ルンタッタと躍りながら、じょうろで水を上げているよ。
「イブキくん!」
「おや、ミカちゃん。みんなのイブキ=ジュンですなぁ」
スキップしながら、私の方へやって来るので、何か脱力だよ。
「イブキくん、ユウくんたち見なかった?」
「見ましたよ、ぼくちゃんは。おかしなお化けに連れ去られてるのを!ぼくちゃんは、ブルブルしてますなぁ」
その割には、ルンルン気分ね。
「助けに行かないと。どっちの方へ行ったの?」
「ううん、あっちこっち、どっちそっち、ぼくちゃんの向こう側よん」
「…………」
たまに、イブキくんのノリがわからないよ。
ともかく、イブキくんの指さす方へ、行ってみよう。
「ありがとね」
手を振って、また駆ける。諦めない。必ず、みんなを助けなきゃ!
落ち葉を踏みしめて、木々をかきわけて行くと、お化けたちの声が、聴こえて来たよ。
「ウフフ」
「あはは!」
「ペロベロベロ~」
何だか、楽しげな声……ペロベロベロ~て、何かな?
そぉっと覗いて見てみたら、あら不思議。
お化けたちが、楽しく遊んでいたわ!どう言うこと!?
パキッ!
しまった!枯れ木を踏んでしまったから、気づかれたよ!
回れ右して、逃げようとしたら、あっという間に、囲まれちゃった。
「ひぃっ!」
白くて、ニヤリと笑って、バケノジョーとは違った怖さだよ!
後退りすると、お化けの一人が言った。
「大丈夫だから、ミカちゃん、僕だよ』
「その爽やかな声は、ユウくん!?」
お化けになっても、爽やか~、じゃなくて、これは、一体どう言うこと!?
「ミカちゃん、お菓子食べる?」
猫っぽいお化けは、つむじ?あっちでは、サトケンが、マントをはためかせて、お化けたちに、羨ましがられてるし、バケノジョーは…まあ、いつも通りか。
「どう言うことなの、お化けさんたち?」
「うらめしや~、ごめんよ、驚かせちゃって」
「僕たち、寂しかったんだ」
お化けは、静かに語ります。お化け族はいつも、夜ふかしする子供たちを脅かして早寝させているから、子供たちも怖がって、遊んでもらえません。
だから、学校に無理言って、影を踏んで帰るゲームをしてもらうことにしたのです。
そして、影を踏み外して、日の当たる場所に出たら、捕まって、
お化けにされて、こっそり、一緒に遊ぶんだそうです。
「でも、何で記憶を忘れさせるの?」
「スリルバケ!」
バケノジョーが、マラカスを他のお化けと、
しゃかしゃかさせながら説明してくれた。
どんなゲームにも、スリルが必要だと。
そうすれば、子供たちも、本気で遊んでくれると思ったみたい。
でも、納得行かないよ。何だよ、みんな楽しく、はしゃいじゃって!
「私は、心配したんだから!」
みんな、連れて行かれちゃうし、無理に、ゲームに参加させたりして!
私の怒りに、みんなシュンとしちゃった。
ホッとしたら、涙が止まらなくて、思いきり、えんえん泣いちゃった。恥ずかしい。
「あ~、すっきりした!」
「あの~、ミカちゃん」
私の記憶の無い部分もきっと、私がミスして、ここでお化けたちと、遊んでいたのね。
恐る恐るな感じのお化けに、私は言った。
「私たちが一緒に遊んで上げるよ」
「ホント?」
「ひゅ~、お嬢ちゃん!太っ腹な人魂ね~」
「調子に乗るな!」
はしゃいじゃってるお化けを、一喝します。
ちゃんと、みんなに謝ることと、放課後の影踏みゲームを、無理強いしないことを。
「分かったバケ」
「すまなかったバケ」
お化けたちは、そう言ってユウくんたちを、元の姿に戻す。
「ありがとな、ミカ。助かったぜ」
爽やかに礼を言われると、ドキドキしちゃうよ。
いつも、助けてもらってるのは私だもん。
「ううん、いいって」
「はぁ、助かったバケ」
あなたは、そのままでしょ!つむじは、安心したのか、うつらうつら眠たそうにしているよ。
気づけば、日も暮れかけていて、そろそろ帰らなきゃ。何か、どっと疲れたな。
「じゃあ、帰ろっか」
他に、気になることが合ったような気がするけど、疲れたから、明日考えよう。
「夜だから、おいらたちが送って行くバケ」
ラッキー!良いとこあるね。お化けの背中に恐る恐る乗って、空高く飛び立つ。秋の夜は、風も冷たいけれど、我慢しよう。
一説によれば、風の精霊が、寒さでご機嫌斜めになって、風が冷たくなるとか、ならないとか……。
空高くから、見下ろすと、街の夜景が綺麗で、思わず瞳をきらきらさせる。
来月は、クリスマスなので、イルミネーションがきらめいて、いいな!
あれ全部、魔法の灯りだよ!
途中で、つむじたちとバイバイして、自宅前に降り立つ。
ユウくんも、ここで降りて、お化けに手を降る。
「んじゃあな。また明日!」
「うん、バイバイ!」
あくまで、爽やかなユウくんに手を振って、玄関に行きかけて、夜空を見上げると、星空が静かなバラードを歌っていた。
これで、明日からいつもの毎日!
……………と、思ったんだけど、まだまだ終わってなかったの、もう!
次の章へ、つづく!