あなたと二人で
私が、進むのを躊躇っていると肩を叩かれたので、振り返るとそこには、爽やかなユウくん。
「よ、帰らないのか?」
「ユウくんこそ、今日は一人?」
「まあな。それに、ミカがへこんでるんじゃないかと思ってな」
「よくわかるね」
「まあ、何となく?長い付き合いだし」
いつも、そうだったね。いつも、クラスメイトに囲まれているけど、私が困ってる時は、いつも助けてくれたね。
「よし、帰ろうぜ」
「うん!」
照れくさそうに言うユウくんと一緒に帰る。少し、元気出てきた。
私達が、影から影へ移動してると、少し、幅の広い場所が。
小さい頃、よく一緒に遊んだよね。
それで、女の子と遊んでるって、よくからかわれてね。
どうしよう?遠回りしようか考えてると、ユウくんが、助走して、あっさりと渡っちゃった。
「ほら」
そう言って、私に向かって手を伸ばす。さわやか~。
「…うん!」
少し離れてからの、助走からのじゃんぷ!
「わ!」
勢い付きすぎたのを、ユウくんが、しっかり抱き止めてくれる。
「あ、ありがと」
「おう」
熱い、熱い!体の前で、手をぱたぱたと振る。私って、ウブでいや~ね。
また二人で、進んで行くと、まずい。
「あれ、影がない?」
「ホントだ!」
ここの十字路を曲がればすぐなのに、影がないなんて。いつもはあるのに。
視界に入る影までの距離は遠いし、黄昏時も、もうすぐ終わる。
終われば、お化けに連れて行かれちゃうぞ!
「どうしよう」
「こっちだ!」
左手にある公園に、私の手を引いて入ると、木々の影を踏んではや歩き。ドキドキ。
『クスクス』
?誰?今、ジャングルジムの上に誰かいた?
気のせいか。誰もいない。キョロキョロしてると、ユウくんに急かされた。
「どした?ミカ、早く!」
見ると、辺りの何故か影が狭まっていくよ!
『渡れるかな~?』
また声が聴こえた。しかも、どこかで聴き覚えがあるような?
公園の出口辺りの木々の影が、狭まっていくので、もう駄目かと思ったとき、ヒーローは、現れた!
「ミカちゃん、うらめしや~」
「うらめしや!どうしてここに?」
うらめしやは、お化けにとっての挨拶よ。
バケノジョーは、あの頃から明るく、ためらわないから、まさか、影の外へ出て、自らの影を作って、手招きするなんて思わなかった。
「バケノジョー!何してんの!?早くドロンして!」
「イケるイケるバケ!」
「バケケケケ!」
やって来た!ノッポなバケノジョーみたいなお化けが!
「早くするバケ」
マラカスを、しゃかしゃかさせながら、迫られても!
私が、慌てて渡ると、バケノジョーが、連れて行かれちゃうよ。
「!」
ユウくんが、手を差しのべて、バケノジョーをつかむも、余裕で連れて行かれようとしている!
「ユウくん!」
もう嫌だ!訳も分からない帰路で、友達が、連れていかれるのは!
私は、怒っていたから、怖さも薄まって、難なく一歩を踏み出した!
「馬鹿、来るな!」
ごめん、無理!走ってユウくんを追いかけていると、すぐに、お化けたちが、私を捕まえようとするけど、手で振り払う!
「さわらないで、セクハラだよ!」
お化けも、この言葉に弱いのかな?捕まえようとしてるのを、ためらっている?
今の内に、ダッシュで追いかけるけど、空を飛んでるから速い!
「!?」
駄目だ、追い付けない。息が荒くなって来て苦しい。
そこへ、何か布みたいのが、お化けに絡まって、動きが鈍くなってる?
あれは、サトケンのマント!
しかも、ハコちゃんに上げた奴が、風に吹かれて、ここまで来たのかな?
何とか、食らいついていると、お化けたちが入って行ったのは、街外れにある迷いの森!
ここ十年くらいで、再開発が進んで、規模が縮小されたけれど、今でも迷う人が多いのだ。
よりにもよって、そんなとこに入って行くなんて…怖いけど、行くしかない。
ユウくん、バケノジョー、待っててね。
ーつづくー