ハコちゃんの好きなもの
「…………」
「…………」
少し晴れてきた空の下を、私達は、押し黙ったまま歩くけど、重苦しい……のは、私のせいでもあるけれど、他にも気になることがある。
「…ねえ、ハコちゃん。もしかしてなんだけど」
私は、石畳の端に横付けされた馬車の影で立ち止まり、聞いた。
「それよりさぁ~、ユウ君とは、どうなの?」
いきなりの話題を、そらされたので、頬がカッと熱くなる。
何で、そこでユウくんが出て来るのよ!
「ユウ君のことは、今はいいよ!それよりも、何でごまかすの?」
「私は、ごま塩派だけど?」
「そのごまじゃなくて」
「う~、私は言いたくないよ」
「お願い!ずんだ餅ご馳走して上げるから!」
「……分かった」
ハコちゃんは、商店街の和菓子屋のずんだ餅が大好きなのた。渋いわ。
「このおかしな帰路が、始まってから、すぐのことよ」
商店街の方へ、二人で向かいなから、影から影へ。
昔のホッピングと言うおもちゃみたいに、ぴょんぴょん跳ねる。
ハコちゃんが言うには、みんなで帰路に着いているとき、道をわたろうとしていた子猫が、馬車を引くウママ~ン(馬)にひかれそうになったとこを、ハコちゃんが飛び出して、子猫を助けたんだって。
「ええ!?」
「馬車にひかれそうになったとこを、ミカちゃんが助けてくれたんだけど……。そのまま、影から出たミカちゃんを、お化けが連れていったの」何それ、怖い。
「怖い!私に、記憶がないよ!」
「そう言うと思ってたから、黙ってたの」
「そっか。ありがとう、話してくれて」
「あっさりだね」
「まあ、怖いけど、気にしても仕方ないよ」
「何だ、それならもっと早く話せばよかった」
二人で話してる間に、商店街にとーちゃく!
日暮れ時なので、買い物する主婦たちが多い。
そして、食欲そそる良い匂い!育ち盛りだから、つむじじゃなくても、お腹は空くのです。
商店街は、屋根が着いているので、ここは、普通に歩けるよ。
つむじには、お詫びにお団子を買っていこう。
「あら、ミカさん、ご機嫌麗しゅう」
アーケードを進んで行くと、ミナミ=ハルカがいた!
脇には、執事の羊、セバスチャンナがいて、高級洋菓子店の箱を持っている。
「こんにちわ、ミナミさん」
「ちわー」
私は、ちょっと苦手なので、ハコちゃんの背後に隠れる。
特に、私たちを下民て呼ぶのが苦手。
「あなたたちも買い物?私もよ。セバスチャンナ」
ミナミ=ハルカが、指をパチンと鳴らすとセバスチャンナが、高級洋菓子の包みを、渡してくれた?
「どうぞ、皆様でお召し上がりください、メェ~」
「…いいの?もらって」
「ええ、あなた方、下々の民には、中々買えないでしょう?
私は、いくらでも食べれるから。では、ご機嫌よう……行くわよ、セバスチャンナ」
何やら、嫌なことを言って、
セバスチャンナを連れて行きかけて、立ち止まると、振り返らず言った。
「……元気だしなさい」
「え?」
丁度、近くの激安スーパーのタイムセールのやかましい音楽に、ミナミ=ハルカの声は、搔き消された。
「……ハルカちゃんなりに、心配してるのかも?」
「…意地っ張りだね」
二人は、顔を見合わせてクスリと笑う。
お菓子を分けあった後。商店街のアーケードの出口のとこで別れた。
こればっかは、帰り道が違うのでしょうがない。
「バイバイ、気をつけてね」
「…うん、ハコちゃんもね」
ハコちゃんに手を振って見送った後、急に心細くなる。
今までは、誰かしら帰路にいたけど、今は独りだ。
オレンジに染まる黄昏時は、暗さを増して来て、足を進めるのを鈍らせる。
私が、お化けに捕まっていて、その間の記憶が無いのが……怖い。
私こと、ハコは、軽快に家まで後少しのとこまで来ていた。
「お菓子、お菓子っと!」
特に、ずんだ餅があるのが、なおよろしい。
「ハコちゃん!」
あれ?聞き覚えのある声に振り返れば、ミカちゃん?
何だか、にこにこしてやって来た。何だろ?何か、おかしい。
「どうしたの?何か忘れもの?」」
「ううん、ちょっと見せたい物があるの」
そう言って、ポッケから取り出したのは、キラキラした火の玉の石?
「なあに、これ?」
「よく見てね」
何かしら?見てる内に、何だかくらくらして来たわ。
「うふふ」
何だか……………………眠いです。
私の手から、サトケンのマントが、スルリと風に流されて行った。
つづく