ミドリノタメニ
ミドリちゃんを、見失った!ぼくちゃんとしたことが、なんたることか!
木枯らしが吹いて、消えてしまったですなあ!
「手品バケ?」
バケノジョーの言葉を、背中に聴いて、外へ出ると、ミドリちゃんを探すけど、いないですなぁ。
「ミドリちゃん!ぼくのミドリちゃん!」
「イブキくん、どうしたの!?」
戻って来たミカちゃんたちは、目を丸くしているが、今は、それどころではない。
いや、その前にぼくちゃんのこと、慰めてくれません?
こんなにも、心が痛いだなんて。女性を見れば、目がハートになってしまうぼくちゃんが、こんなにも胸が痛むなんて。これが、恋と言う奴かしらん。もう、ハヒハヒよん。
その日、山岳騎士団の詰所で、話しを聞かれて、帰りは遅くなったの。
でも、ミドリちゃんのことは、言えなかった。いや、言わなかった。
関わってることは確かだけど、ミドリちゃんは、友達だから。
それに、ミドリちゃんはなにも悪いことはしていない。
「これからどうしましょ?」
やっとこさ帰ってきた森の入り口でうつ向くぼくちゃん。
「ああん?なに、落ちてんだよ?なにも終わってねーのによー」
どんぐりは、人差し指の先に、どんぐりコマを、くるくる回して叱咤する。
「探そーぜ?あの女頑張るようなこと言ってたんだしよー」
「そうよ。男が、メソメソメソポタミアしてないの?」
メソポタミア?何を言ってるのか分からないけど、励まそうとしているみたいね。ミルクちゃん、ありがとう。
「そうだ。ぼくちゃん、まだ君のことを知りたいですなぁ」
「いいぞ、エロウサギ!がんばれー!」
ナノハちゃんは、ぼくちゃんの肩をバシバシ叩いて、にやにやする。
相変わらず、態度でかいですなぁ。この前、迷子になっていたのに……?
あの時いた使い魔たちは、ナノハちゃんのことを、襲ったりしませんでした。
ミドリちゃんは、ほんとに仲良くしたかったんだ。
「ぼくちゃん、ちょっと出かけて来ますなぁ!」
「あ、イブキくん!」
ハータくんの声を、背中に聴きながら、ぼくちゃん、ダッシュ!
あの場所に行けば、あるいはなにか分かるかも知れないですなぁ。
ぼくちゃんは、走る。ミドリちゃんを探して。
「ぜーはー、ぜーはー!ぼくちゃん、疲れたわん」
物見遊山から走って来たからねん。てか、バケノジョーもついてきてるし!
「以外とガッツあるバケ」
そう言って、ラムネを買ってくれたの…て、炭酸て、お腹にたまるですなぁ。
ふざけてるっぽいけど、もらっておきますよん。
ゲップをしつつ、すれ違うマダムにウインクしつつ、紫の魔女のいた洋館へ。
立ち入り禁止だけど、見てみないふり。良い子のみなさんは、真似しないでね。
キョロキョロ誰もいないのを見回して中へ入ると…て、バケノジョー!洋館の門扉に挟まったり出たりしてないの!
バケノジョーを、引っ張って進んでいく。
もう、黄昏時は過ぎて、真っ暗くらですなぁ。
「やあ、不気味バケ!」
ウキウキしないの。美女と、暗がりにいるならともかく、お化けと一緒だなんて、怖いですなぁ。
ナノハちゃんを、助けた辺りに来ると、葉っぱの使い魔たちがいましたので、刺激しないように、話しかけます。
「ハロー、ぼくちゃん、イブキ。この間、ナノハを助けてくれてありがとん!」
ビクッとして、後退りしましたよん。
出きるだけフランクに、話しかけたのにねん。おかしなことよ。
「ほら、ぼくちゃんのこと覚えてない?あの時のイケメン!」
話し合う葉っぱの使い魔たちは、一人が代表して、一歩前へ。
「あの、もしかして、ミドリの学校の友達?」
「そうそう。もしかしたら、ぼくちゃんのハニーになるかもだけど、その時は、よろしくねん!」
「あ、気にしないでいいバケ」
首をかしげる葉っぱに、楽しげにフォローするバケノジョー。
「ミドリに何かあったのかい?」
何も知らないのかしら?ぼくちゃんが、懇切丁寧にぺらぺら喋ると、教えてくれた。
「そんなことが…ミドリの奴、無茶なことを!」
「植物の進化は、何を狙ってるのか、教えてくれる?」
「ああ、奴等は、迷いの森の主の栄養分を吸収しようとしていた」
「なんですってん!?そんなことしたら、森が、枯れ木の賑わいよん!」
植物の進化は、自分達がこの世界の植物になるとか言ってた。
「君たちは、なにもしないバケ?」
その質問に、どこか悲しい雰囲気の使い魔たちは、やがて教えてくれたのよん。
「我々は、偶然に生まれた存在。しかし、消えることも出来なくて、植物から細々と養分をもらって生きて来たから、あまり行動が出来ないんだ」
「植物にも悪いしね」
「だから、平均台に乗って、じゃんけんしたり」
「あっち向いてホイしたりしている毎日なのよ」
「は、はあ」
そこは、スルーしましょ。ともかく、この使い魔さんたちは悪くなくて、僕のミドリちゃんは、迷いの森へ向かっている一人で。
この世界の植物のために。ズキュンなミドリちゃんのために、ぼくちゃんは、行かないといけないですなぁ!
「ちょいと、バケノジョーさん」
「なんだい、お前さん?おいらと、はしゃぎたいバケ?」
「はいはい、お戯れを。ぼくちゃんは、迷いの森へ行くから、ミカちゃんたちに知らせるですなぁ!」
「分かったバケ!」
飛んでいくバケノジョーを見送りぼくちゃんも、迷いの森へ。
「待ってください」
「我々も行きますよ」
「………分かりましたん。共に僕のミドリちゃんを助けませう」
あんまり栄養分ないのに、動いて大丈夫かなと、思いましたが、本気の気配なので、一緒に行きますよん!
つづく




