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帰路の途中で、サトケンと

みんなは、怖がるわけでもなく、影から影へ、ぴょんぴょんと、跳びうつっていく。

ああ、やっぱり怖いな。でも、いかなくちゃ。

「いこ、ハコちゃん」「うん!」

私達は、一歩を踏み出して木の影へ。

そして、テンポよく次へと渡る

石畳の道の上は、固くて滑りにくいので助かるけど、何やってるの私たち。


それは、冬の訪れと共にやって来た。

朝のHRで、くるくる先生が言ったのだ。

くるくる回りながら、目を回しそうなほどな勢いで。

「今日から放課後は、人や物の影を、通って帰るくるくる」

もちろんざわつく教室内。いつも偉そうなエライソンくんも、憤慨してたっけ。

しかし、理由も説明してもらえず、何かの魔法なのか。普通に帰ろうとしても、させられちゃうんだ。影を渡ることを。

銀杏並木の街路樹や、落ち葉を手際よく渡り、大通りの辺りまで来ると、見覚えのある顔がいたよ。

「サトケンよ」

「サトケンだわ」

マントコレクターのサトケンは、横断歩道の手前の建物の影 で、何かを悩んでいた。

「どうしたの、サトケン?」

「おおぅ、ハコちゃんにミカちゃん」

ハコちゃんが好きなので、ドギマギしてる。

当のハコちゃんは、全く気づかないの。

「あそこにいるおばあさんさ」

サトケンが、指し示した先には、横断歩道を渡ろうとしているおばあさんがいた。

重たい荷物を抱えてうんしょ、うんしょと、息を荒くしてる。

手伝いたいから、一歩を踏み出そうとした私たちを止めて、ニヒルに笑うサトケン。

「僕が、お手伝いするよ。君達は、先に帰りたまえ」

「でも」

「いいんだよ。女子に危ないことはさせられない」

そうして、肩の赤マントを外すと、ハコちゃんに渡す。

「これが僕だと思って、大事にしたまえ」

「は、はあ」

困ったようなハコちゃんに笑いかけると、ためらいを捨てて、建物の影から出る。

「!」

止める間もなく、スタスタとおばあさんに近寄り親切に、荷物を持って上げる。

「…ああ、外に出たら」

「あいつらが、来てしまうよ」

私たちが、心配するなか現れたのは、白いお化けたち!こわっ!

お化けたちは、サトケンを捕まえると、空高く連れ去るけど、サトケンは強がって、ハコちゃんに叫ぶ。

「この僕のマントを、役立ててくれたまえ!」

どう、役立てろと?しかし、どこかへ連れていかれて、もう聞けない。

「サトケン…」

ショックなハコちゃんが一歩、出ようとするのを、慌てて止める。

こんなことは、何度もあったのに、直接見ると、やっぱり悲しい。

そして怖いよ。

連れていかれたみんなは、次の日には、普通に学校に来てるけど、その間の記憶がないのだから。

サトケン、また明日、会えるよね。


「…行こう」

「うん」

私たちは、悲しみを抱えたまま、サトケンのマントを握りしめて、進もうとして、頬に冷たい水が当たるのを感じて立ち止まる。


ーつづくー



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