朝の出来事
次の日。学校では紫の魔女のことで、話しがもちきりでした。
学校の大半の先生や、生徒がぬいぐるみなので、ハコちゃんは、メルヘンの世界だと思いました。
かわいいと思ってしまうのは、不謹慎だと考えるも、かわいい。
あの偉そうな、エライソン君なんて、犬のマルチーズのぬいぐるみなので、偉ぶってもかわいい。
「俺様は、ぬいぐるみになっても、偉そうだろー?」
「ドンマイ!」
痛い発言に、バケノジョーが励ますので、イラつくのでした。
「や、やあ、おはようハコちゃん」
「おはよー。サトケン、昨日は大変だったんだって」
サトケンが、ハコちゃんと話す時は、どこか照れくさそうな感じなので、どうしたんだろって、考えてしまうハコちゃんは、鈍い。
ミカちゃんとかは、気づいてはいるのだけど、心の中で、頑張れと応援するばかり。
「う、うん。その事なんだかね」
「うん」
「どうやら、女性が狙われてるみたいだから、一緒に…」
「べろべろばあ!」
「ぶはっ!」
バケノジョーが、いきなり目の前に現れたので、マントで払うと、魔力が発動して、吹き飛ばしてしまう。
お化けだから、壁をすり抜けて、飛んで行ったけれど、バケノジョーは、楽しそうだ。ドンマイ。
みんな、ポカンとした後、みんな騒ぎ出す。
「すごいな、そのマント!」
「ブヒー、ブヒー!」
鼻息の荒いブータは、興奮して目を輝かせているので、マントが汚れないか、心配してしまいます。
「すごいね、そのマント。魔力を感じるよ」
光の巫女だったミカちゃんと、ヒカリちゃんが、恐る恐るマントに触れる。
「はーい、席につくがよしー!」
くるくる先生が、ぬいぐるみにされて、回ることが出来ないので、カメーノ先生が代理です。
くるくる回れないと、テンションガタガタなのです。
海から上がって来たカメーノ先生は、教師になるため、地上で暮らす気合の入った先生です。
「魔女が、まじょーん!」
しらける空気。静まり返る教室内。
一拍の後、どっと笑いが広がります。
たとえつまらないダジャレでも、カメーノ先生は、かわいいので何か良い空気になるのです。
「先生、つまらないよ!」
そう言いながら、にこにこする生徒たちに混じって、ミナミ=ハルカも、クスリと笑ってしまいました。
セバスチャンナのことで、へこんでいましたが、これくらいのことで休んでは、自分のプライドが許さないので、平気なフリして来たのです。
「最近、街外れの魔女が悪さしてるカメ。
だからみんな、帰る時は一人で帰らないで、何人かで固まって帰るカメ」
騎士団の見回りはあるものの、他の学校も、見回りするので、手が足りていません。
この国の地方領主は、何をしているのでしょうか。
サトケンは、チャンスと思いました。
これは、ハコちゃんと一緒に帰るチャンス!
いやいや、あのパープルとか言う魔女からハコちゃんを守らないと。
一緒に帰って、もっと仲良くなりたいと考えるサトケンに、ミカちゃんは、コソッとアドバイスします。
「商店街のあんみつ屋がいいよ」
「…ええ?なんのこと?」
「ハコちゃんと、帰りたいんでしょ?顔に出てるよー」
からかわれて、真っ赤になるサトケンは、魔物に立ち向かう勇気はあっても、こと、恋愛ごととなると、ウブなのでした。
ミカちゃんたちは、それを見てて、もどかしいので、どうにか力になりたいと思ってます。
「頑張れ、サトケン!」
ユウくんが、爽やかに励まします。僕は、リア充じゃあないのにと、思いながらも、帰り支度をしてるハコちゃんと帰りたいと思うサトケンの心臓は、早鐘のように打ち鳴らすのみでした。
「い、行ってくる!」
「ファイト!」
サトケンは、マントをはためかせ、ハコちゃんの元へ。
つづく




