サトケンと、ミナミ=ハルカ
何てことだと、サトケンは考える。サイアスと別れた後。ハコちゃんは、大丈夫かと考えて、街をうろうろしている。
人々が、乾燥肌にぬいぐるみ化?地味に、嫌なイベントなのだ。
ハコちゃんの居場所は、分かっているのだ。
空を見上げれば、雨雲が漂ってるいるから。
雨女のハコちゃんが、あそこにいる!
サトケンは、マントをはためかせなから駆けていると、何だか羊の鳴き声が聴こえたので、行ってみることにしました。
角を曲がり、人気の少ない通りへ。いた!紫の帽子とローブ。
魔女なのか。それとも、コスプレしたい人なのか。
あれ?ミナミ=ハルカじゃないか。あの魔女に襲われているのか?
「てめー、見てないで助けやがれってんでぃ、このコンコンチキ!」
相変わらず、口の悪い奴。しかし、サトケンは、女子が困っているならば、助けるのです。
ミナミ=ハルカの前に、立ちはだかり、羊のぬいぐるみを抱えたミナミ=ハルカを下がらせる。
「あんたが、巷で噂の魔女か!」
「おや、可愛い坊やじゃないか。あんたは、魔力があるようには見えないただのモブかい」
紫の魔女は、封印された洋館から出てきて、みんなの肌をカサカサにして、そしてぬいぐるみにして、何をしたいのか。
サトケンの疑問は、つきませんが、背後でギャーギャー騒ぐミナミ=ハルカを守らないと行けないと考えています。
しかし、自分はただのマントコレクター。何が、出来ると言うのか。
「ふふ。子鹿のように震えているじゃないか?
どうだい、坊や。坊やがそこを退いてくれたら、永遠のモテ期の秘薬をやろうじゃないか」
何て、魅力的な言葉に、サトケンの心は、ぐらつきます。
モテない男ほど、モテたいと渇望するもの。
しかし、サトケンは、紫の魔女を睨みつけて、言い放ちました。
近所迷惑も気にせずに。マントを、はためかせて。
「断る!このサトウ=ケンタロウ。モテなくても、好きな人がいるから、それで良い!」
インチキな力で、ハコちゃんが振り向いてくれても、自分は納得しないだろうと、サトケンは思いました。
「うふふ。今時、真っ直ぐな坊やだこと。嫌いじゃないよ。
しかし、全ての女に、呪いをかけないと、この私、パープル=ラズベリーのうっぷんは晴れないのよ!」
手に魔力を集めて放てば、鋭い風が吹き荒れます。
「メェ~!」
「セバスチャンナ!」
ミナミ=ハルカの手から、セバスチャンナのぬいぐるみが、すり抜けるのを、サトケンが、マントでキャッチします。
飛ばされそうなのを、電柱にしがみつくサトケンでしたが、風が強くて身動きが出来ません。
こんな時でもマントが、パタパタとはためくのが、かっこいいと思っています。
「そこで、自分の無力さを噛み締めなさい」
ニヤリと笑い、ミナミ=ハルカに迫ります。
「どうして?」
「あん?」
「どうして、モデル歩きをするの!?」
ランウェイを歩くモデルみたいな歩き方をするので、思わす疑問を口にしたのです。
昔、王都のファッションショーを、家族で見に行ったので、尚のことそう思ったのです。
「猫かぶり姫、私は昔、王都でモデルをしていたのよ。
あの頃は良かったわ。今より若くて、みんなチヤホヤしてくれた。」
「充分、若いじゃない」
ため息をつく、見た目、二十代後半のパープルに言うと、にっこり笑って言いました。
「ありがとう。でも、逃がさないわ!」
何やら、術をぶつぶつ呟くパープルの前に、サトケンが出るのと同時に、パープルの魔法が炸裂……するかと思いきや、サトケンのマントが、弾き返して、パープルを明後日の方向へ、吹き飛ばしてしまいました。
「覚えてらっしゃい、見てらっしゃい!」
負け犬の遠吠えと共に、年増…いえ、パープルの脅威から救ったサトケンも、マントの力にはびっくりしてしまいました。
朝一の市場の行商人から、購入した安値のただのマントのはずなのですが、不思議な力があったみたいです。
「大丈夫かい?」
力が抜けて、立てないへろへろのミナミ=ハルカに手を差し伸べると、大人しく掴むので、引っ張って立たせて上げます。
「ふ、ふん。あんた、中々やるじゃない。
スクールカースト上位の私のグループにいらっしゃいな。
色々、指南してあげるわ、良い男になるためにね」
「いや、いいや。カーストとか疲れるし、興味もないのでね」
そうです。サトケンが興味があるのは、マントと片思いのハコちゃんだけです。
それに、人に合わせるのは疲れるサトケンは、マイペースに生きたいのです。
「じゃ!」
ミナミ=ハルカに手を振ると、マントをはためかせ、颯爽と去って行きました。
「…サトケン、せっかく私が、良い男にして上げようとしたのに」
頬を膨らますミナミ=ハルカは、心が寂しいと叫んでいるのを、戸惑っていました。
「メェ~!」
乾いた風に、響き渡るはセバスチャンナの慰めるかのような鳴き声だけでした。
つづく
まだまだ、追加します!




