教室
「教室」
「おはよ~」
「おはよん!」
朝のざわつく教室。みんなどうして、普通に挨拶できるんだろう?
帰りは、憂鬱なのに。
私、ハシマ=ミカは朝から憂鬱。
「元気がないようですが、どうしたのですか?」
声をかけてきたのは、猫のつむじ。一番前の席で、もぐもぐとメロンパンを食べてる姿は、幸せそうだね。
「ううん、何でもないよ」
苦笑しながら手を降ると、またにこにこしちゃうつむじは、食べるのが大好きで、見てて癒されちゃう。
「おはよう、下々の者よ!」
そこへ、声、高らかに入って来たのは、ミナミ=ハルカ。
貴族の娘で、気持ちいいくらいの、
上から目線で見てくる、困ったちゃんです。
みんな、苦笑しながら挨拶している。
何だかんだ、良い所もあるので、憎めないのだ。
「おい、ミカちゃん。浮かない顔じゃのう?下民は、明るくなくてはならん」
ミナミ=ハルカは、たまに喋りがおかしい。
今流行りの、転生ものには負けたくないと、よく呟いている。どういう意味かな?
「…ははは。あっ、ユウくん」
「ふああ、おはよ、ミカ、ミナミ」
何時ものように、眠たそうに教室に入ってきたのは、小学校からの幼なじみで、クラスの人気もそれなりにある。
「あ~ん、ユウくんたら、私のことは、自分の女みたいに、ハルカって呼び捨てにしてね?」
さらに、ミナミ=ハルカの片思いの相手です。
甘ったれた声で、話しかけてるので、みんなは敬意(?)を込めて、『猫かぶり姫』と呼んでいるの。
「はいはいっと」
軽く流して席に着くと、また大あくび。また、ゲームでもしてたのかな?
「もう、イケズなんだからん」
ぽーっとしたまま、自分の席に行くので、つむじと顔を、見合わせる。
その時、チャイムが鳴って、くるくる回りながら、くるくる先生が入ってくるくる…て、うつっちゃった!
いつも、くるくる回っているので、まともな姿を、見たものはいない…と言う学校の七不思議があるとかないとか。
「さてみなさん。もうすぐ、みんな大好きな冬休みくるくる。
そして、今年の先生は、またクリスマス一人ぼっちくる!」
「先生、ドンマイ!」
お化けのバケノジョーが、ことさら明るく励まし、赤マントをはためかすサトケンは、自分のマントコレクションの一つを、プレゼント。
私は、ユウくんと、過ごしたいな。
何て、ユウくんを見て、バッチリ目が合う。
爽やかに微笑むから、カッと頬が赤くなっちゃった。
でも、冬休みの前に、憂鬱な時間が待っている。
思わず、ため息一つついて、周りを見回す。
みんなどうして、平気なんだろ?放課後が、怖くないのかな?
バケノジョーは、いつもはしゃいでいるから、別として。
逆立ちが得意なハンスくんや、雨女のハコちゃんだって。普段通りなんだよ。
悶々と考えてる内に、あっという間に放課後がやって来た。
みんな、おしゃべりしながら、帰り支度を始めると席を立つ。
さあ、嫌な時間が、やって来た。
席を立つと、ハコちゃんがやって来た。
「ミカちゃん、一緒に帰ろ?」「うん、いいよ。心強い」
仲良い友達がいるのは、いいことだ。
他のクラスメイトにあいさつして廊下に出ると、つむじがドタドタと、私を追い越すと、私達に手を振る。
「つむじ、廊下は、走っちゃダメよ!」
「駄菓子屋のタイムセールが、あるのです!」
猫のつむじは、食いしん坊さんだからな。ドタバタと、駆けていく。
体育教師のウッシーナ先生に、追いかけられてるのを見て、思わず苦笑する。
「相変わらずだね!」
「ね」
下駄箱で、靴を履き替えていると、バケノジョーがやって来た。
昔からの友達で、出会った時も明るい。
「お二方、今帰りバケ?良ければ、リンボーダンスでも、しないかバケ?」
「しないです」
「しないよ」
「そりゃそうか。じゃあねバケ」
「うん、バイバイ」
うきうきするバケノジョーを見送り、私達も校門を目指す。
「あー、嫌だな」
「ほんと、これからの時間は、何の時間かしら」
ハコちゃんと、おしゃべりしながら歩いていると、校門まであっという間です。
一歩を踏み出すのが、躊躇われる。
―つづく―




