2.入都
森と海に挟まれた都市、ウォグリ。新鮮な海の幸と、森の幸を同時に提供することで有名になった、美食の都市だ。
そんな都市に、二人の少女が入都しようとしていた。
「おー、ここがうま飯の都市かー」
「ご飯の匂いはしないけどなー」
ユーナとミークである。二人が門に近づくと、門に立つ人、門番から声がかかった。
「やぁ、君たち。海森の幸の都市、ウォグリにようこそ!身分を証明できるものはあるかな?」
そこまで厳しい物ではないが、どこの都市も身分を都市に入る前に確認している。
「んーと、はい。」
「これで平気ですかね?」
ユーナが背負っている鞄の中からゴソゴソとカードを出し、ミークは首から吊るしてあるものを提示した。
「うん!問題ないね!では改めて、ようこそ、旅人さん方!ここは海森の幸の都市ウォグリ!楽しんで行ってくださいね!」
「うぇーい」
「はーい」
適当な返事を返しつつ、二人は門を潜り、都市へ入って行った。
「「おぉぉー…」」
漁師、狩人、商人、戦士、町民。様々な人が行き交う活気の溢れる都市の姿があった。
「これが生きてる町ってやつなんだねー」
「ほんと。こないだのは酷かったよなぁ…。廃都市と言っても過言じゃないまである。」
「まぁ、その廃都市もどきしかまだ行ってないからね。」
「せやなー」
二人は旅人ではあるが、初心者旅人である。旅人、というのは旅人ギルドが発行する、旅人カードを作り、所持している人が呼ばれるものである。無論非公認の人もいるが、その場合は出入国が面倒なだけで、都市間はそれ用のカードが発行される。が、それは値段がかさむため、だいたいの人はギルドでカードを作る。作らないのはお忍びの貴族か、金持ちの道楽人、犯罪者くらいである。
「おっ、そこの嬢ちゃんらっ!もしも昼飯がまだなら寄ってきな!安くて美味いよっ!」
と、てきとーに道を歩いていた時に、看板を背負った三十歳くらいの男に声をかけられる。
「あー、そういえば昼飯まだだったなー、食べてく?」
「せやな。腹減りすぎて腹と背中がくっつくまである。」
「よっしゃ!寄ってきな!サービスするぜっ!」
二人は、男の呼びかけに、疑問も抱かず店に入って行った。…食事処は大抵、若い娘か息子あたりを看板にするものである。
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