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第6章ー12

 とは言え、こんなやり取りでは話が進まない。

 グランデス将軍は、クリミア半島の制圧をトルコ等が何故に求めているのかの説明をするように、身振りでアラン・ダヴー少佐に指示を下した。


「そう言いたくなるのも分かりますが、クリミア半島は、ある意味では黒海に突き出されたソ連の剣です。特にセヴァストポリの存在は大きい。黒海艦隊にとって、最大の根拠地であり、そこが健在である限り、黒海沿岸航路は、ソ連黒海艦隊の潜水艦による通商破壊の脅威にさらされます。また、クリミア半島に設営された飛行場から、黒海沿岸の連合国に対して、ソ連の戦略爆撃機による空襲が行われる危険性も決して軽視できるものではありません。そういった事情から、連合国軍最高司令部は、クリミア半島の制圧を決断したのです」

 ダヴー少佐のやや長い説明に、スペイン青師団の面々は、不承不承と言った表情を浮かべだした。


 それを機に、グランデス将軍が更に話を振った。

「諸君の気持ちは、ようく自分にも分かる。だが、ここで我々が奮戦することで、ソ連を速やかに打倒することが出来る。我々の祖国、スペインが内戦の混乱に陥ったのは、ソ連が介入したからだ。ソ連の介入が無ければ、我々の祖国が混乱することは無かった。その恨みを晴らすためにも、ここは奮戦しようではないか」

 芝居がかった口調だが、その言葉は他の面々に更に効いた。


 スペイン内戦が起きたのは、細かく考えていけば、スペインの国内事情から、という側面が大きく、自業自得に近いのだが、誰しも自分は悪くない、他人が悪い、と考えたいものなのだ。

 そして、スペイン左派(共和派)は打倒され、この場にいるのは、スペイン右派(国粋派)ばかりだ。

 そういったことからすると、この場において、ソ連は悪の大国であり、ソ連打倒は絶対の正義だった。


 何とか、この場において、少しはガス抜き(不満を鎮めること)ができた、と判断したグランデス将軍は、更に話を進めることにした。

「ともかく、クリミア半島を制圧するためには、ペレコフ地峡を抜かねばならない。また、抜いた後が問題だ。我々はどうすべき、と考える」

 グランデス将軍の発言に、思い思いの発言が出だした。


「ペレコフ地峡ですが、アゾフ海側はいわゆる「腐海」と呼ばれる浅い湿地帯が広範囲に広がっており、正直に言って車両どころか、歩兵による移動も、舟艇を活用した海上機動も困難な厄介な地形になっています。かといって、黒海側の地形も迂回が困難なことに変わりはありません。ある意味、ペレコフ地峡に張り巡らされたソ連軍の陣地を要塞と見立てて、一つ一つ突破していくしかありません」

 作戦参謀が、苦渋に満ちた発言を行った。


「突破後の兵站の観点からも、先程の発言を支持します。ペレコフ地峡が安全に通行できるようにならなければ、クリミア半島において、部隊を縦横に活動させるような補給体制を維持することは困難です。そういった観点からも、ペレコフ地峡を突破して、制圧するしかありません」

 兵站参謀も、作戦参謀を支持した。


「ペレコフ地峡を抜くために、引き続き仏軍等に協力を求めましょう。先程、ソ連軍の陣地を要塞と見立てて云々、という発言がありました。仏軍の重砲部隊等の支援を仰ぎ、不本意ですが、ルーマニア軍と共闘して、ペレコフ地峡を抜くために奮闘しましょう」

 ダヴー少佐も2人の発言に味方した。


 それらの発言を聞き終えたグランデス将軍が決断を下した。

「よし、それを大方針とし、我々はペレコフ地峡を抜くことを第一に考えて行動しよう。詳細をさらに詰めるぞ」


 作戦会議は、丸1日以上を費やすものとなった。

 それを踏まえ、ダヴー少佐は支援要請に走り回った。

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