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第6章ー7

 ソ連、ロシア名物の泥将軍は、連合国軍側に色々と厄介ごとを1942年の秋に引き起こしたが、中でも酷かったのが、中央軍集団の戦区だった。

 念のために言うと、ソ連軍が泥将軍に悩まなかったわけではない。

 だが。


 ソ連軍にしてみれば、泥将軍への対処は、毎年の恒例の事と言って良かった。

 だから、泥将軍に対する方法も、連合国軍よりも遥かにソ連軍の方が手慣れている。

 例えば、戦車の履帯を幅広にして、接地圧を低下させることで、泥路でもできる限り容易に走れるように、ソ連軍の戦車は設計されて、製造されている。

 それに対し、連合国軍の戦車は、そこまで考えて設計、製造が為されてはいなかった。


 他にも泥路での輸送方法等、馬車を使うにしても、ぬかるみを通りやすい大きめの車輪を装備した馬車を使う等、ソ連軍の方が慣れたやり方を把握していた。

 こうしたことは、一つ一つを見れば小さなことだったかもしれない。

 だが、そういった小さなことが積み重なった結果、ソ連軍は、この時の中央軍集団の主力を構成している英軍に対して機動力で優位に立つことができ、英軍を大苦戦に追い込むことが出来たのだ。

 さらにもう一つ、問題があった。


「畜生、最新式の歩兵の対戦車兵器PIATが役に立たないだと」

 英軍歩兵の多くが、歯ぎしりをして悔しがる羽目になった。

 PIATは、対ソ連欧州本土侵攻作戦開始後、日米軍等が導入している携帯式対戦車噴進弾に負けず劣らずの兵器である、として英軍に鳴り物入りで導入された代物だった。

 それなのに、実戦に投入されたところ、多大な欠点を披露してしまったのだ。


 PIAT、細かい兵器の定義から言えば、軸発射式迫撃砲と呼ばれるべき兵器であり、ソ連軍のRPGに類似した対戦車擲弾発射器である。

 だが、口の悪い一部の兵器研究家等に言わせれば、20世紀にもなって採用された対戦車用のクロスボウであり、ざっと見たところ、その評価が間違っていないという、ある意味では英国面丸出しの珍兵器呼ばわりされても仕方のない兵器であった。


 実際、PIATを第二次世界大戦中に使用した英軍兵士の間では、高評価2割、低評価8割といったところであり、米軍のバズーカの方を多くの英軍兵士は装備しようとした。

 ロビン・フッド並みの名射手になれば、どんな戦車でも曲射射撃を活用したトップアタックにより、PIATを用いれば破壊可能であり、そんなことはバズーカ等では出来ず、この当時では世界最高の歩兵が携帯可能な対戦車兵器だ。

 という主張があるが、実際、そんな射手がそうそういる訳が無かった。


 PIATは、下向きに撃つことは基本的にできず、初弾装填には大変な力が必要という、バズーカに見劣りする兵器というのが実際であり、この1942年秋当時は、曲射射撃が可能な熟練した射手が、ほとんど英軍にいなかったという点も加わって、英軍歩兵にしてみれば、完全に旧式化した対戦車ライフルや、小銃用の対戦車擲弾の方が信頼できる対戦車兵器である、というのが現実だったのである。

 

 ともかく、英軍歩兵にしてみれば、自分の携帯可能な兵器では、ソ連軍の戦車に対抗できないという現実は士気を下げるものになってしまった。

 更にこれまでに述べたような燃料不足等により、英軍の機動力が失われてしまったという現実がある。

 このような現実に直面したことから、英軍上層部は対応に苦慮し、自軍の態勢の立て直しを至急、図ろうとしたのだが、反攻作戦を発動したソ連軍にしてみれば、この英軍の行動は、自軍の兵士の士気を高める行動に他ならなかった。


 英軍の行動に対し、士気を高めたソ連軍は懸命の猛攻を図るようになった。

 その頃にポーランド軍等は救援に動いた。

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