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第5章ー23

 勿論、ソ連空軍とて戦場の航空優勢確保のために、大量の戦闘機を投入しなかったことは無い。

 だが、Il-2襲撃機を護衛するという足枷を付けられては、ソ連空軍の戦闘機乗りにしてみれば、航空優勢確保は極めて困難だ、と言わざるを得なかった。


 戦闘機乗りにしてみれば、敵味方双方の戦闘機の質量に大差がない場合、こちらが自由に対戦闘機戦闘を挑めるのが、航空優勢確保には必須である。

 何故なら、自軍の爆撃機護衛を優先する余り、対戦闘機戦闘を行う際には、自軍の爆撃機の護衛を最優先にするように上層部から命ぜられては、爆撃機の方が速度、格闘戦性能が基本的に劣る以上、こちらはそれに合わせた戦場機動を強いられ、敵戦闘機の跳梁を完全には防げないという事態が生じるからだ。

(と、多くの戦闘機乗りは主張する)


 それなのに、この当時のソ連空軍上層部は、地上軍支援を優先する余り、ソ連空軍の戦闘機乗りに対して、爆撃機護衛を最優先にするように命じていた。

 ソ連空軍のある戦闘機部隊が爆撃機護衛任務に就いていた場合、その時に起こった空戦の際に敵戦闘機2機撃墜を報じても、その代りに味方の爆撃機1機が撃墜された場合は、その撃墜は無意味であるどころか、戦闘機部隊の隊長は重罪である、と命じていたのである。

 そんなことを命ぜられては、ソ連空軍の戦闘機乗りが存分に腕をふるうことは困難としか、言いようが無かった。


 このような難戦により、ソ連空軍の航空優勢が確保されず、連合国空軍の航空優勢が確保されていたことから、守勢に徹する限り、米軍はソ連軍によるレニングラード救援作戦を、余裕をもって阻止することが出来たが、その一方で、レニングラード市街突入を果たした日本軍等では。


「下手にソ連兵を追って建物に飛び込むな。ソ連軍が、ソ連兵ごと建物ごと爆破しかねない」

「この世の地獄ですな」

 岸三郎大尉は、部下を懸命に引き止め、部下もため息を吐きながら戦う羽目になった。


 レニングラードの市街地に張り巡らされた下水道等を始めとする地下のルートは、ソ連兵にしてみれば格好の移動ルートだった。

 建物に飛び込み、その建物から下水道等の地下へと逃げ込み、別の場所に移動する。

 大量の日本兵や米兵が建物に飛び込んだ時、建物ごと爆破するという荒い工作さえ行われた。

 

 これに対して、日本兵や米兵が多用したのが、馬乗り攻撃と後に呼ばれた攻撃方法だった。

 地下への潜入口を見つけたら、戦車を盾としながら、歩兵が前進して、歩兵が潜入口に対して発煙手榴弾を投下する。

 煙が至近から出ていないのを確認して、ガソリン等を流し込み、火炎放射器等で火をつけるなり、手榴弾で着火するという戦法だった。

(煙が至近から出た場合、そこからもガソリン等を流し込んだ)


 これをやると、地下に立てこもったソ連兵や共にいたレニングラード市民も、ほぼ確実に焼け死ぬことになるし、先日、遺体を火葬にしたことで非難された日本軍としてみればやりたくない方法ではあったが、他に地下に立てこもるソ連兵に対して、これ以上に効果的な戦術というのが無かったのだ。


 お互いの激しい戦闘は、もっとも激しい時には1日に10メートル程も前進できなかった、と謳われる程の難戦を、レニングラード市街の攻防戦において日米、フィンランド軍に強いることになった。

 その間にも、気温は急低下していく。

 日中の最高気温でさえも、氷点下という日が訪れるようになる中、日米、フィンランド軍は死闘を続けることになった。

 フィンランド兵はともかくとして、日米の暖かい地方から来た兵達にしてみれば、文字通りの極寒地獄の中で死闘を演じることになり、凍傷患者が続出するという事態にもなった。

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