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第5章ー16

 そういった大問題が引きこされたが、最前線の戦況が、それで急に変わる訳が無い。

 ルガ河という防壁を決壊させた日米連合軍の津波のような大攻勢は、ソ連軍に対する苛烈な追撃となり、レニングラードへの秩序だった後退は、最終的には敗走と称されても仕方のないものとなった。


 9月30日に、米第3軍の先鋒部隊を務める第4機甲師団司令部は、レニングラードとソ連の中心部、モスクワ等を結ぶシュリッセルブルクの完全占領を宣言した。

 更に日米連合軍のレニングラード包囲を完全にしようとする攻勢は、10月に入って泥濘期が始まりつつある中でも懸命に続けられ、10月10日には、ノーヴァヤ・ラドガ、ヴォルホフといった町を制圧した上で、ヴォルホフ河沿いに米第9軍が防御陣地を作ることに成功、ここに陸路を通じてどころか、ラドガ湖を介しての水上輸送路の活用も、ソ連軍は困難になった。


 また、遅れていた米第1軍や米第5軍も攻勢に転じており、ノブゴロドやデミヤンスクに脅威を与え、ソ連軍がレニングラード方面に向かうのを間接的に阻止した。

 そういった連合国軍の戦果により、レニングラードはバルト海沿いからの急進撃を成功させた日米連合軍、及びカレリア戦線から南下してきたフィンランド軍等の重囲下に10月中旬には完全に置かれることになったのである。


 10月12日、日本軍と米陸軍、及びフィンランド軍等の上層部は、レニングラードに対する具体的な攻囲作戦を検討するために、旧エストニアの首都タリンに集い、作戦会議を開いていた。

 連合国軍総司令官でもあるアイゼンハワー将軍も出席したこの作戦会議は、白熱したものとなった。


「実際問題として、レニングラードの直接攻撃に充てられる戦力はどれくらいになる」

 アイゼンハワー将軍は、そのように問いかけた。

 勿論、事前に自らも参謀等から報告を受けている。

 だが、この作戦会議に参加している面々が、ある程度、お互いに認識を共通させておく必要があった。


「米第1軍や第5軍は、ノブゴロドやデミヤンスク方面に展開しており、米第9軍は、レニングラード解囲を図るソ連軍に対処する必要があります。また、米第7軍は、現在、ソ連軍の遊撃戦が展開されているエストニア等の後方警備に当たらざるを得ず、実際にレニングラード攻撃に充てられる戦力は、日本軍と米第3軍、及びフィンランド軍等で、全部で110万人といったところでしょうか」

 会議に参加していた米軍の参謀将校が発言すると、会議に参列していた各国軍の面々は、思わず思い思いの私語を交わした。


「聞いたか」

 北白川宮成久王大将は、帯同していた土方歳一大佐に思わず話しかけていた。

「ええ、ある程度は分かってはいましたが、それでも気が遠くなりそうです」

 土方大佐は、感嘆の想いを言外にも籠めながら、答えていた。


 確かにレニングラードは、ソ連の中でも、モスクワに次ぐ重要都市と言えるだろう。

 だから、そこを攻めるために大軍が集められるのは、半ば当然の話ではあるが、それにしても直接攻撃に充てられる戦力が、100万人を超えるとは。


 ちなみに本来なら、この場に来ないといけない日本遣欧総軍司令部の参謀長、石原莞爾中将が来ていないのは、自身も辞退し、周囲もそれを認めたからである。

 石原中将は、作戦の神様と自他共に認める程の切れ者ではあるが、切れ者によくある欠点として、他人を小馬鹿にするような口調で話す癖がある。

 そのために日本軍内部に止まらず、他国軍の上層部とトラブルになることも何度かあったことから、石原中将は留守居役を自ら志願し、石原中将の代わりに土方大佐が、北白川宮大将に帯同してこの会議に参加することになったのである。

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