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第5章ー13

「厄介だな。ソ連に住民を巻き込んだ非正規戦を行われると、こちらも住民をある程度は敵視した対策を立てざるを得ない。しかし、それをやり過ぎると、今度は住民がソ連側に奔りかねない」

 パットン将軍は、頭を痛めた。


 これまで、欧州方面では、余り住民を積極的に巻き込んだ非正規戦は行われてこなかったために、問題にはなっていなかったが、極東戦線では、対ソ戦でも、対共産中国戦でも、住民を巻き込んだ非正規戦が頻発していたことから、そういった事態が起きた場合に厄介な事態が起きることは、米軍上層部でも認識されている。

 かと言って、敵がそのような作戦を展開した場合、こちらが有効に対処する手段は極めて乏しい。


「日本軍が言うところの精神論に他ならないが、最善をできる限り尽くすしかないか」

 一時的にパットン将軍は、そう割り切ることにした。

 他の米軍上層部(及び日本軍上層部)の面々も、そのように考えて、ソ連軍の展開するルガ河防衛線後方での非正規戦に対しては、対処するしかなかった。


 こういった後方での戦闘も展開される中で、ルガ河防衛線における攻防戦は展開されることになった。

 実際のところ、米軍がルガ川防衛線に駆けつけるのと合わせるように、ソ連軍側には、モスクワや果てはスターリングラード方面で編制されつつあった予備部隊までが駆けつけたことから、9月13日に開始された時点でのルガ河防衛線における双方の戦力は、日本軍12個師団に対して、ソ連軍12個師団相当、といったところだったのが、9月23日にルガ河防衛線が崩壊する頃までに、日米連合軍が30個師団相当、ソ連軍が18個師団相当、といったところの戦力になることになった。


 本来なら、米軍3個軍がエストニア方面を基本的に経由しながら、ルガ河防衛線に向かった以上、もう少し多い兵力が、9月23日までに日米連合軍側に集まってしかるべきだったが。


 米軍が、本来の予定を変更して、急きょ、既述の3本のルートの内の2本に頼った進撃を行わねばならなくなったことから、いわゆる人員や物資の輸送に伴う大渋滞を引き起こしてしまったために、円滑に人員や物資が、ルガ河防衛線にたどり着かなくなったこと。

 また、上述のようなソ連軍の非正規戦闘に対処するための部隊が、米軍から差し向けられたこと。

 そういったことから、日米連合軍は30個師団相当の戦力しか集められなかったのだ。

 更に、ソ連軍側にしてみれば、ぜい沢な悩みだったが、日米連合軍側にしてみれば、物資不足に喘ぎながらの攻撃を、10日間にわたり展開する羽目にもなった戦いだった。


「これがソ連の住民を巻き込んだ戦いのやり方か」

 土方勇中尉は、ソ連軍、いやソ連政府を罵倒しながら戦う羽目になった。

 ルガ河防衛線には、民兵隊も交えたソ連軍の部隊が展開している。

 言うまでもないことだが、民兵隊にはまともな軍事訓練が施されることなく、また、武器も不足した状態で戦場に投入されている。

 従って、土方中尉が操るような戦車部隊が相手となると。


 日本海兵隊なら、歩兵の対戦車戦闘における戦術は、ある程度、既に確立されている。

 歩兵と戦車を分離するように軽機関銃や擲弾筒を駆使した攻撃を、まずは敵歩兵に対して行い、敵戦車を孤立した状態にして、対戦車砲の射撃なり、対戦車噴進砲での一撃を敵戦車に加えることで、敵戦車を仕留めるのだ。

 勿論、それは理想的に上手く行けば、ということであり、中々、上手く行かないことも当然ある。

 しかし、ソ連の民兵隊は。


 下手をすると、自分達の戦車に闇雲に対戦車爆雷を投げつけるなり、体当たりさえ掛けようとして来る。

 だが、そんな未熟で直線的な攻撃が成功する訳が無かったのだ。

 確か、この世界では、ソ連軍もパンツァーファウストを装備していなかったか、という指摘がありそうですが、さすがに民兵隊にまでは普及していません。


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