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第5章ー1 対ソ欧州戦線における第二次攻勢(全般及び北部戦線)

 第5章の始まりです。

 1942年8月下旬、連合国軍上層部内においては、対ソ欧州戦線における第二次攻勢の準備が整えられようとしつつあった。

 これは二つの面から、半ば必然的なものだった。


 まず第一に、時間と季節の問題である。

 対ソ欧州本土への侵攻作戦発動時点で、1942年中のソ連欧州部の制圧というのは無理である、と連合国軍上層部は正しく判断していた。

 おそらく、1943年秋までかけて、ソ連欧州部の制圧を図らねばなるまい。

 それはソ連欧州部の広大さと、対ソ極東戦線におけるソ連軍の抗戦能力から導き出された結論だった。

 しかし、1942年中にできる限り、ソ連欧州部を制圧しておかないと、1943年の戦闘が苦しいものになってしまうのも、半ば自明の理である。

 

 そういったことから、1942年春の時点の連合国軍上層部は、1942年5月に第一次攻勢を広正面に渡って展開した後、速やかに第二次攻勢の準備を整えて、第二次攻勢を展開しよう。

 そして叶う事なら、1942年中に第三次攻勢まで展開して、ソ連欧州部をできる限り制圧しよう、と連合国軍上層部は考えていたのだ。

 だが、1942年5月に展開された第一次攻勢は、表面上は大成功に終わったのだが、連合国軍上層部の想定よりは、少しだけ時間が掛かってしまった。


 連合国軍上層部の極めて楽観的な見積もりでは、1942年6月末時点で(大雑把に言って)西ドヴィナ河とドニエプル河を結ぶラインにまで、第一次攻勢によって進撃を果たし、1942年8月初めから第二次攻勢を発動する。

 この第二次攻勢により、レニングラードを占領、又は攻囲下に置き、モスクワ前面に迫る一方、クルスク、ハリコフ、ロストフを結ぶラインまで進軍し、クリミア半島を制圧下に置く。

 この第二次攻勢は、1942年9月下旬で終わりを告げ、第三次攻勢の準備となる。

 何故なら、ソ連欧州部の10月は秋雨による泥濘の時期になるからだ。


 ソ連(ロシア)の泥濘は、極めて厄介な存在である。

 様々な車両が、ほぼ通行、運行不可になってしまう。

 それこそ米国の誇るハーフトラックでさえ、通行が困難であり、それ以外の装輪車両、つまり普通の自動車等は言うまでもない。

 そういったことから考えると。


 泥濘が収まり次第、最後の小規模な第三次攻勢を展開して、越冬態勢を連合国軍は整えるのが最善だ。

 第三次攻勢は、11月を中心とする1月程しか時間は取れないからだ。

 11月末になると、ロシアの寒い寒い冬がやってくるからだ。

 その一方、第三次攻勢の準備をしようにも泥濘により困難であり、攻勢の準備は十二分には行えない。

 だから、第三次攻勢は、攻勢というよりも戦線を整理し、越冬のための防御態勢を整え、来春の攻勢準備を円滑に行うための小規模なものになる。


 だが、この対ソ欧州本土侵攻作戦前の連合国軍の極めて甘い見積もりは、既に完全に狂っていた。

 最大の誤算がオデッサ攻防戦で、このためもあって、南方軍集団(通称、ラテン軍集団)が、ドニプエル河以西を制圧できたのは、8月になってからのことになった。

 このために後方整備も特に南方戦線では、順調に進んではいなかった。

 また。


 連合国の最大のスポンサーと言える米国と言えど、そうそう無尽蔵にお金が溢れている訳ではない。

 また、連合国にとって後方と言えるポーランドやチェコは、米英仏日等に、第二次世界大戦の復興支援を求める有様で。

(例えば、ポーランド国民の多くにしてみれば、第二次世界大戦の最初期に破壊しつくされたワルシャワ復興は少しでも早くなされて欲しい話だったのだ)

 そちらにも連合国には資金や物資が必要であり、連合国軍の第二次攻勢はその点でも足枷が徐々に大きくなる一方だった。

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