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第4章ー10

 土方勇中尉は更に想いを巡らせた。

 下手にお互いの悪感情を煽るべきではない。

 後になって、後悔するような事態を引き起こしかねない。

 それこそ自分の義父の家、野村家が離散した事情がそうではないか。


 自分の妻、土方(篠田)千恵子の両親は、幼馴染で事実上婚約していた仲だった。

 だが、千恵子の母方伯父、篠田正が借金して相場に手を出し、しかも失敗したことから話が狂い出した。

 それで、野村家は、千恵子の父に、千恵子の母が浮気している等の噂まで吹き込み、婚約を破棄させた。

 だが、問題は既に千恵子という胎児がいたことだった。

(もっとも、この辺りについて、最大の当事者である千恵子や、その異母弟の岸総司の口が微妙に重く、どうも自分に隠された事情がまだまだあるらしい、と土方中尉は推察していた)


 そして、千恵子の父は、総司の実母、岸忠子と結婚し、総司が産まれたのだった。

 だが、更なる問題は、真実を最もよく知っている千恵子の父が、千恵子が産まれた後、総司が産まれる前に戦死してしまったことだった。

 このために、真実は半ば水掛け論になり、千恵子に同情した千恵子の周囲の面々は、野村家を攻撃して、野村家を地元から半ば追い出してしまった。

 だが、後になって、千恵子の母にも落ち度があるらしいことが分かり、千恵子の実家、篠田家も微妙に地元に居づらくなり、地元を去ったのだった。


 土方中尉自身が、直接に会って話を聞いていないのだが、土方中尉の父、土方歳一大佐は、会津出身で千恵子の両親の小学校の同級生でもある簗瀬真琴少将から、この辺りの事情について話を聞かされ、それを土方中尉にも伝えていた。

 簗瀬少将(勿論、当時はまだまだ尉官だった)自身、この件は今となっては後悔する話らしい。

 千恵子の母の話を鵜呑みにして、野村家を攻撃し過ぎた、と土方中尉の父に伝えたとか。


 勿論、全く違う話と言えば全く違う話だが、感情に任せてお互いに攻撃し合い出すと、中々収まりがつかなくなり、それこそ後になって後悔してもどうにもならなくなるいい例だ。


 そのことから類推すると、今の連合国や独ソの行動は、今になって自分は思うのだが、いわゆるパンドラの箱を開けた行動になっているのではないだろうか。

 だが、今となってはお互いに引き返せない状況にまで陥ってしまっている気がする。

 今や少しでも状況改善に努めるしかないようだ。

 もっとも、自分だけの力ではどうにもならない状況でもあるのだが。

 土方中尉は、自分の考えが悪い方向に転がり過ぎている、と自分でも想いつつも、そう考えざるを得ない状況になっていることに気が滅入るしかなかった。


 そんな風に土方中尉が思ったためもあるのだろう。

 何だか気まずい空気が、いつの間にか流れてしまい、4人の間の会話も少ないまま、4人は帰営した。

 

 自室に戻った土方中尉は、更に想いを巡らせた。

 そう言えば、妻はもうすぐ出産の筈だ、息子、娘、どちらが産まれるだろう。

 五体満足であれば十分だが、そうは言っても息子が欲しいものだ。

 そして。


 自分と千恵子の子は、平和な世界を生きて、戦場に赴くことの無い生活をしてほしいものだ。

 そのためにも、目の前のこの世界大戦を早く終えて、平和な世界を何としても作りたいものだ。

 それには、ソ連を打倒しないとな。


 土方中尉は、最新の戦況を更に考えた。

 そろそろ連合国軍の第二次攻勢が具体化される頃合いだろう。

 速やかにレニングラード、スターリングラード、モスクワを目指すものになるらしいが、実際のところはどうなのだろうか。

 今年の内に3つの目標の内2つは占領したいものだが、実際に占領はできるものなのだろうか。

 土方中尉は、色々なことに想いを巡らせてしまった。

 第4章の終わりで、次から第5章になります。


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