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第1章ー6

 戦艦大和の艦長、高柳儀八大佐は、その職務上、大和の被害を把握しながら、ルフヌ島に接近していったので、胃が痛む思いをする羽目になったが。

 大和を見ている面々は、真っ逆の想いをしていた。


「おお、神よ。今、私は奇跡を目にしています。40サンチ砲弾を10発以上も浴びながら、大和は主砲の射撃を平然と続けているのです」

 伊艦隊の旗艦「ヴィットリオ・ヴェネト」の司令塔では、ある士官が感極まって、手にしていた双眼鏡を手放し、膝をついてそう呟きながら、神に祈りを捧げ始めていた。

 その光景を見て、それにならう士官が出てくる。


「ヴィットリオ・ヴェネト級4隻を揃えても、大和1隻に勝てる気がしないな」

「全くです」

 とうとう「ヴィットリオ・ヴェネト」の司令塔の士官の半数近くが、神に祈りを捧げだしたのを見たイアキーノ提督は、参謀長とそう会話を交わした。


「リヴァイアサン」

 仏艦隊の旗艦「リシュリュー」の司令塔に詰めている士官の一人が、畏怖を込めた声を挙げた。

 その声を聴いた仏海軍の士官の面々の多くも、それに内心で同意する。

 大和は、リヴァイアサンの化身ではないか。

 

「リシュリュー級戦艦4隻を建造する必要はやはりないな」

 その光景を見たダルラン提督は、内心で呟いた。

 リシュリュー級戦艦では4隻を揃えても、大和1隻に勝てない。


 似たようなことを、この戦闘後に生き延びたルフヌ島の海岸砲台にいたソ連兵も想った。

「日本の戦艦は、魔女の艦だった。我々が懸命に16インチ砲弾を浴びせたのに、平然と接近してきて、最期には我々の海岸砲台を沈黙させてしまった」

 あるソ連兵は、捕虜となった後、従軍記者のインタビューにそう答えている。


 大和と武蔵の第9斉射が、ルフヌ島の海岸砲台に降り注いだ後、ようやくルフヌ島の海岸砲台は、弾着観測に当たっていた水上機の搭乗員の眼で、崩壊の兆しが見えるようになってきた。

 そして、大和と武蔵の斉射は、仏伊艦隊の援護射撃もあり、その後は着実にルフヌ島の海岸砲台の能力を削ぎ落していき、終に第14斉射が命中した後。

「ルフヌ島の海岸砲台が、完全に崩壊したとのことです。発砲炎が途絶えてから、3分が経ちますので、間違いない報告と考えます」

 福留繁少将は、嶋田繁太郎大将に報告していた。

 だが、その一方で。


「大和の被害現状を報告します。16インチ砲弾19発が命中したことにより、左舷副砲塔以外の副砲が完全に損壊。右舷高角砲群も全滅等の被害が出ました。その内の5発が水中弾で右舷に命中し、その浸水に合わせて、左舷にも注水したり、副砲弾庫への誘爆を警戒して注水したことや、機関部にも損害が及んだために、大和の現在の速力は15ノットが限界です。ですが、全主砲射撃が可能、火災は全て消火済で、これ以上の浸水もないでしょう。大和は戦力として健在です」

 ようやく胃の痛みが治まった高柳艦長は、そう嶋田大将に報告していた。


「うむ」

 この二つの報告を聞いた嶋田大将は思った。

 勝つには勝ったが、大和も大破と言える損害か。

 大和を日本に還らせる必要が出来たようだ。


「矢矧に座乗している第二水雷戦隊司令官の木村に発光信号を送れ、木村は矢矧を旗艦とする臨時戦隊の司令官として、大和を護衛して避退せよ。なお、駆逐隊2つを護衛のために臨時戦隊に編入する」

「矢矧の木村少将より返信。了解。大和を日本までも送り届けるとのことです」

 木村に任せておけば大和は大丈夫だ、そう嶋田大将は考えた。


 木村は護衛の何たるかを心得ている。

 大和がこれ以上の損害を被ることは無いだろう。

 念のために、雪風を旗艦とする第16駆逐隊と冬月を旗艦とする第41駆逐隊を付けよう。

 これだけすれば大丈夫だろう。

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