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第1章ー5

 日仏伊の三国連合艦隊が、ルフヌ島に対して接近したのは、英艦隊が去ってから2時間近くが経過した後、現地時間にして5月14日の午前9時過ぎだった。

 この日仏伊の三国連合艦隊によるルフヌ島への艦砲射撃の試みは、実は英米艦隊のみならず、日本の空母部隊からも反対されていた。


 英米艦隊や日本の空母部隊の上層部にしてみれば、ルフヌ島への攻撃は艦載機による集中爆撃によるべきであり、それによってルフヌ島の海岸砲台を破壊すべきだ、という考えが主流だった。

 実際、英艦隊が被った損害に鑑みれば、その方が正論だったともいえる。

 しかし、既に2000ポンド徹甲弾含む空襲によっても、ルフヌ島の海岸砲台は破壊されずに健在だったことを考えると、日本艦隊が大和級戦艦の艦砲射撃に、また、仏伊艦隊が水上機による弾着観測射撃を用いた超遠距離射撃に、ルフヌ島の海岸砲台の破壊について期待を掛けるのも、無理のない状況と言えた。


 何しろ既に上陸船団は、リガ湾を目指して航行中であり、明日午前を期して、史上最大の上陸作戦がリガ湾において展開される予定なのだ。

 こうした状況においては、空襲以外の別の方法を日仏伊の三国連合艦隊が試みようとするのも無理がないということができた。


「武蔵に発光信号で通信、統制射撃の指揮を執れ。本艦が先導して、ルフヌ島に接近する」

 嶋田繁太郎大将は、豪胆極まりない命令を下した。

 嶋田大将の考えは、単純明快だった。

 いびつな之字を描くようにして、ルフヌ島に大和と武蔵は接近していき、海岸砲台を破壊するのだ。

 不規則な転舵で、ルフヌ島の海岸砲台の射撃の命中率を低下させる。

 それでも、大和が被弾することを完全には避けられないだろうが、大和に敵弾が集中することで、武蔵の射撃指揮能力は維持される筈だ。

 この嶋田大将の決断は、仏伊艦隊を驚愕させた。


「何故に、大和と武蔵はルフヌ島に接近していくのだ。40センチ(16インチ)砲が怖くないのか」

 仏のダルラン提督、伊のイアキーノ提督を筆頭に仏伊の艦隊上層部は、その光景を見て異口同音にそう呟く羽目になった。

 仏伊の軍人にしてみれば、弾着観測を活かした超遠距離射撃によって威力を増した主砲弾を大量に浴びせることで、ルフヌ島の海岸砲台を破壊するのが正しいやり方だった。

 だが、仏伊艦隊をしり目に、大和と武蔵はルフヌ島に近づいていく。

 かと言って、英艦隊の悲劇を想い起こせば。

「大和と武蔵を援護しろ。我々は超遠距離射撃に徹する」

 ダルラン提督もイアキーノ提督も同様の決断を下さざるを得なかった。

 そして、大和の艦上においては。


「前部副砲塔に敵弾命中。前部副砲塔は完全に破壊され、火災が発生しました」

 半ば悲鳴混じりの報告が大和の艦橋に届く。

「問題ない。大和の主砲は全て射撃可能だ。念のために前部副砲弾庫に注水。」

 大和の艦長、高柳儀八大佐は、表面上は平然と対応した。

 だが、内心では怖れを覚えている。


 確かに大和の主要部は、16インチ砲弾に耐えられる筈だが、あくまでも理屈の上ではだ。

 そして、ルフヌ島の海岸砲台は、仏伊艦隊の超遠距離射撃で発生する水柱等により、多少は射撃が妨害されているようだが、大和に対する射撃は少しずつ当たっている。


「右舷防水区画に命中。浸水発生」

「左舷防水区画への注水準備、傾斜が5度を超えたら、注水を開始する」

 更なる被害報告が届き、高柳大佐は直ちに対処を命じた。

 自分の本音としては退避したい、だが、嶋田大将が(少なくとも表面上は)平然と接近戦の指示を変更しようとしない以上、自分はそれに従うしかない。


「右舷高角砲群全滅。右舷側の対空射撃は不可能です」

「分かった」

 高柳大佐の胃には、激痛が奔った。

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