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第3章ー8

 そんな事態が世界、というか米本土で起きていること等、武漢三鎮攻略作戦に当たっている将兵にしてみれば、直接は関係のない話だった。

 現地の将兵にしてみれば、如何にして武漢三鎮を制圧して、中国本土を南北に完全に分断するか、の目前の戦いの方が遥かに重大な問題といえた。


 日米両軍の上層部は話し合った末に、長江の南にある武昌を日本軍が制圧することにし、長江の北部にある武漢、漢口を米軍が制圧することにした。

 そして、日本海軍の砲艦部隊が長江や漢江に展開して、江沿いの部隊に支援を行うことにもなった。


 その一方で、共産中国軍は、彭徳懐将軍を、武漢三鎮防衛の総司令官に任命して、武漢三鎮防衛に当たらせることになった。

 彭将軍が、武漢三鎮防衛に当たることになったのは、彭将軍自身の弁明によると、共産中国内の政治闘争に敗れて、最前線の武漢三鎮防衛という死地に送り込まれた、ということになっている。

 その一方で、共産中国軍の公式表明、宣伝によると、彭将軍は中国を護る為に、自分から武漢三鎮派遣を志願して、積極的に赴いたということになっている。

 何れが真実を述べているのかは、21世紀になっても闇の中である。

 それは、ともかくとして。

 

 武漢三鎮防衛に当たる彭将軍にしてみれば、武漢三鎮をつなぐ長江、漢江という内水面の制水権を日米軍に奪われていることは、痛手としか言いようが無かった。

 そのために、日米両軍の攻勢に適宜対応して、指揮下にある部隊を再配置して攻勢に対応するという事が困難というより、不可能に近い話になったからである。


 勿論、彭将軍が、武漢三鎮防衛任務に当たり出した当初の時点においては、そこまで戦況は必ずしも悪化しておらず、まだまだ部隊を、例えば、武漢から武昌に、また、武昌から漢口へと適宜、移動させて、陣地構築等の任務に当たらせることが可能だったのだが。


 武漢三鎮攻略作戦に当たる日米連合軍の圧力は、ひたひたと高まる一方であり、彭将軍が半ば気が付いた時には、そういった移動が、困難どころか不可能と言って良い状況に追い込まれていた、という訳である。


 そのために、彭将軍は、切歯扼腕しながら、武漢、武昌、漢口を護るそれぞれの部隊を、個別に督戦して防衛に当たるしかない、という事態になった。

 しかも、そうなった以上、日米連合軍にしても、全体に対する攻撃を広範囲に行うことで、個々の戦力の分散を行うよりも、各個撃破を第一に考えるのが、半ば当然の話ということになってくる。


 彭将軍は、日米連合軍の息の合った攻撃に唸らざるを得なかった。

 まずは漢口地区が、日米連合軍の標的となった。

 漢江と長江により、他の地区と切り離されており、米軍の攻撃を遮る具体的な地形的障害に乏しい漢口地区は相対的にではあるが、他の二地区に比べて防衛が困難だった。


 米軍の攻撃の前に、終に漢口地区が陥落した後、今度は、長江以南にある武昌地区が、日本軍の猛攻に晒された。

 長江の制水権が失っている以上、武漢地区の部隊が救援に赴くどころか、武昌地区の部隊や住民を、武漢地区に後退させることも、彭将軍にはできかねる話だった。

 そして、孤立無援の武昌地区は、日本軍の手中に落ちてしまった。


 そして、これらの攻防戦の敗退は、武漢地区の部隊の軍紀の荒廃も招いた。

 漢口、武昌と逐次、武漢三鎮は陥落していく。

 武漢地区も、とても守り抜けないに違いない。

 そして、成都の共産中国政府からは、武漢三鎮の死守を命じる電文が届くのみで、具体的な救援部隊が差し向けられないのだ。

 彭将軍は、指揮下の部隊の軍紀の荒廃から、これ以上の抗戦の困難さを覚らざるを得なかった。

 そして、彭将軍は非常な決断をせざるを得なかった。

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