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第1章ー4

「いかん。このままでは英艦隊の戦艦の過半数が消滅しかねない」

 戦艦フッドが文字通りに消し飛んだと判断した、英艦隊の次席指揮官であり、戦艦キングジョージ5世に座上していたトム・フィリップス提督は、そのように呟いた後で、断腸の思いで決断を下した。

「我が艦隊は、フッドの乗員救援のために駆逐艦2隻を遺して、速やかにルフヌ島の海岸砲台の有効射程内から退避せよ」


 それに対して、各戦艦の艦長から抗議の打電、発光信号が発せられ、フッドが沈んだことに対する報復の射撃が各戦艦から行われるが、その間にも、ルフヌ島の海岸砲台からの猛射は続けられてくる。

 戦艦ウォースパイトが3発の命中弾を浴びて大破し、のろのろと10ノット以下の速度しか出せない有様となって、単艦での退避を余儀なくされる惨状を呈す。

 それで、いずれはウォースパイトが沈む、と判断したのか、今度は戦艦クイーン・エリザベスが、ルフヌ島の海岸砲台からの射撃の目標となり、早速、1発を被弾して中破してしまう。

 その一方で、英艦隊の各戦艦の射撃は、ルフヌ島の海岸砲台に重大な損傷を与えていないようで、相変わらずの射撃速度を維持している。

 そういった現状を見ては、さすがに各戦艦の艦長も腹を括らざるを得ない。


「速やかに撤退せよ。我が戦隊が殿を務める」

 フィリップス提督からの再度の命令を受けて、英艦隊は撤退を開始した。

 勿論、撤退の間も、各戦艦から向けられる限りの主砲は、ルフヌ島の海岸砲台に向けられて、艦砲射撃を試みており、射程距離外になったことから、止むを得ず、射撃を中止する程で、英艦隊の士気は、最後まで十二分に高かったといってよい。

 

 だが、その撤退の間にも、プリンス・オブ・ウェールズが2発の命中弾を受けて、大破する惨状だった。

 最終的に、英海軍は戦艦1隻が沈没、戦艦3隻が中大破するという大打撃を被ったのだ。


「英艦隊が撤退したか。ルフヌ島の海岸砲台を何としても潰さねばならん」

 英艦隊撤退の第一報を受けた、日本艦隊の総司令官である嶋田繁太郎大将は、そう呟いた。

「我々には、大和と武蔵がいます。大和と武蔵をもってすれば、ルフヌ島の海岸砲台は潰せる筈です。否、潰さねば、上陸作戦はできません」

 参謀長の福留繁少将は、そう進言した。

「うむ。確かに大和と武蔵で潰せねば、どうにもならん。何しろ英艦隊が、15インチ砲弾を雨霰と浴びせたのに、ルフヌ島の海岸砲台は健在だったのだからな」

 嶋田大将は、そう答えた。


 日本艦隊上層部は、そのように考えていたが、同行する仏伊艦隊の士気も高いものがあった。

「英艦隊は、撤退したか。我が仏海軍の真の実力を見せる時だな」

 仏艦隊のダルラン提督は、そう呟いていた。

 ダルラン提督の発言には、隠れた自信があった。


 リガ湾における制空権、航空優勢は、連合国側が確保していると言って良かった。

 だから、必然的にリガ湾において、弾着観測射撃ができるのは、連合国側だけだったのだ。

「コマンダン・テストから発光信号、偵察飛行艇の発艦準備完了、とのことです」

「良し、これで弾着観測射撃ができる。ダンケルク級戦艦2隻とリシュリュー級戦艦2隻で、英海軍を退けた海岸砲台を超遠距離射撃で叩きのめしてくれる」


 もう一方の伊艦隊のイアキーノ提督も、意気軒高で呟いていた。

「この場にヴィットリオ・ヴェネト級戦艦2隻がいるとは天の恵み。この主砲なら超遠距離射撃で、ソ連軍の海岸砲台を叩き潰せるだろう」

 そう、ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の主砲の射程距離は、4万メートル以上で大和級戦艦すら凌ぐ。

 そして、仏艦隊と同様、伊艦隊も弾着観測射撃が可能だった。


 日仏伊三国艦隊は、ルフヌ島に接近していった。 

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