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第2章ー23

 7月24日の朝が来た。

 ソ連艦隊は、駆逐艦1隻が逃げのびたが、それ以外の戦艦1隻、駆逐艦7隻が沈没、輸送船もオデッサ入港前に沈んだ6隻を加え、10隻全てが沈没するという悲劇となった。

 一方、日本とトルコの連合艦隊は、巡洋戦艦1隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦14隻から成っていたものの、その損害は、駆逐艦「響」が中破、他に駆逐艦「綾波」とトルコの駆逐艦2隻が小破に止まり、ソ連海軍の惨敗と言って良かった。


 後に「トラファルガー海戦を凌ぐ世界海戦史上最大の勝利」、「かつて地中海に覇を唱えたトルコ海軍の栄光を取り戻した勝利」等と称賛され、トルコ海軍のビルレル提督は、トルコ本国を中心に20世紀で最高の名提督とまで呼ばれたが、本人は、

「田中頼三提督の方が、その名に相応しい」

と、いつも謙遜したという。

 

 ともかく、このオデッサ沖の海戦の結果は大きかった。

 この後、伊空軍と日本とトルコ海軍を主力とするオデッサの封鎖は強まる一方となったからだ。

 輸送船どころか、水上艦による輸送作戦も困難と見たソ連海軍は、潜水艦による通称モグラ輸送まで試みたが、それこそ日本海軍の指導の下で行われたトルコ海軍の潜水艦狩りの実戦練習となる有様だった。


 戦後の調査によると、この輸送作戦に投入された10隻のソ連潜水艦は3隻がオデッサにたどり着けたものの、7隻はたどり着く前に沈没、更にたどり着けた3隻もセヴァストポリへの帰港までに沈没と言う悲劇を迎えている。

 文字通り、このモグラ輸送に投入されたソ連潜水艦乗りは総員戦死、死亡率100パーセントという苛酷な運命を辿ることになったのである。

 しかも、これだけの犠牲を払ったにも関わらず、オデッサの戦況は全く好転しなかった。


「オデッサ戦車だ。問題ないが、気を抜くな」

「はい」

 前線に送り込まれたスペイン青師団の将兵は、見慣れない装甲車に驚きはしたが、怖れなかった。

 スペイン内戦で鹵獲されたソ連製戦車、装甲車を相手にして、散々、スペイン国内の事前訓練において対戦車戦闘の基礎訓練を行ってきたスペイン青師団の将兵にしてみれば、オデッサ戦車等、怖ろしい代物では全く無かったのだ。

 だが、ルーマニア軍には充分な威力を発揮し、ルーマニア軍将兵の回想録等では、オデッサ攻防戦での脅威として取り上げられていることが多い。


 さて、オデッサ戦車とは何か。

 オデッサ攻防戦においては、農業用トラクターから臨時に改造、製造された装甲車が前線に現れた。

 その多くが、オデッサ近郊の農業用トラクターを臨時に徴発して、改造を施した装甲車だったが、一部には農業用トラクター製造工場が、臨時に改造、製造を行った装甲車もあったらしい。


(オデッサ戦車について、具体的な改造、製造数が記録された詳細な書類は、第二次世界大戦による混乱から遺っておらず、不詳の部分が多い。

 だが、小銃弾を防げる程度の装甲を張り、37ミリ砲や45ミリ砲、中には76ミリ砲を積んだものまであったこの改造装甲車は、このオデッサ攻防戦で貴重な装甲戦力としてソ連軍を支えたのである)


 ともかく小銃弾程度は跳ね返せる装甲を持って火砲も搭載した装甲車というのは、対戦車戦闘に慣れていない歩兵だったら、厄介な代物だった。

 しかし、そのような急造装甲車では、味方の歩兵との連携等、中々困難な話だった。

 そのために。


「まずは、歩兵を狙い撃て。歩兵と戦車を分離するのだ」

「はい」

「その後は、煙幕弾で戦車の目を潰せ。後は分かるな」

「はい」

 スペイン青師団の将兵は、オデッサ戦車等、全く怖れずに戦った。

 そのために約100両程が投入されたオデッサ戦車の内、約半数はスペイン青師団の前に破壊されてしまったのだ。

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