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第2章ー18

 とは言え、すぐにすぐ、日本海軍がトルコ海軍の指導を行える訳が無い。

 更に、スペイン軍の本音としては、ある程度はルーマニア軍に頭を打ってもらい、考えを改めてもらわないと、今後の戦争遂行に差支えが出る、というのが本音だった。

(なお、この件について、南方軍集団を構成する仏伊どころか、それ以外の主要国軍、米英日等もスペイン軍に同調していた。

 対ソ欧州本土侵攻作戦が始まったばかりとはいえ、ルーマニア軍の体たらくに、他の連合国軍の主力も、怒るよりも呆れが出る有様だったのだ)

 こうしたことから、最初のオデッサ攻撃は、ルーマニア軍が主導して、ほぼ単独で行われた。


 最初の予定では、6月下旬に入り次第、つまり、6月21日からオデッサへの攻撃をルーマニア軍は行う予定になっていたが、これは結果的には無理な話で、ルーマニア軍がオデッサ攻囲網を築き上げて、攻撃を開始するのは、6月26日にまでずれ込んだ。

 もっとも、ルーマニア軍は、わざと攻撃を遅らせた節がある。

 既述したように、北方軍集団、中央軍集団は順調に進撃を行い、南方軍集団も当初は進撃につまずいたが、6月21日頃には、キエフ等を占領下に置き、ドニエプル河を何か所かで渡河する有様だった。

 こうしたことから、孤立したオデッサから、ソ連軍は海路、撤退を策している筈である、とルーマニア軍参謀本部は楽観視していたのだ。

 もっとも、それはルーマニア本国での考えと言って良く、現地は別の考えをしていたと言っても良かった。


 グランデス将軍は、オデッサ攻撃を現地で指揮するルーマニア第4軍司令官、チュペルカ将軍の力量を6月半ばから見極めようとしていた。

 現地で肩を並べて戦う友軍の司令官の力量を、できる限り正確に見極めないと、自分もどう対処すべきかの判断を誤ることになる。

 司令官としての能力はあっても、指揮下の部隊が無能なのか。

 指揮下の部隊は有能でも、司令官が無能なのか。

 同じように戦に敗北しても、どちらが主原因なのかで、今後の対処が全く異なってくる。


 できる限りの情報収集に努めた結果、グランデス将軍の評価としては、ルーマニア軍内に限っての判断になるが、チュペルカ将軍は平均以上の能力を持っていると評価できそうだった。

 裏返せば、連合国軍の超一流の指揮官、レヴィンスキー将軍等の爪の垢を煎じて飲むべきだ、というレベルの指揮官であるという事でもある。

 とは言え、この場にいるルーマニア軍の将帥に、そんな無いものねだりをしてもどうにもならず、チュペルカ将軍が、ルーマニア軍を率いて、オデッサ攻撃の指揮を執るのは、相対的にマシというしかなかった。

 そして。


 こういう場合にありがちだが、ルーマニア本国の参謀本部は、現地状況をろくに見ずにチュペルカ将軍の作戦に後方からくちばしを入れようと試みた。

 現地の指揮官が有能とは言い切れない以上、本国から介入するのは当然という論理である。

 だが、このことはチュペルカ将軍以下の第4軍司令部の幹部の反感を当然買うことになった。

 また、この作戦介入は、現地を見ずに行われる以上、作戦遂行において基本的に害悪しかもたらさない、という事態も招いた。

 この結果。


 6月26日から発動されたルーマニア軍によるオデッサ総攻撃は、約5日間の戦闘で、オデッサ市街を護るために急造された第1戦防衛陣地を各所で崩すことには成功したものの、第2線陣地を崩すまでには至らなかった。

 この状況から、ルーマニア軍参謀本部は攻撃続行を主張したが、スペイン青師団が反対したことで、総攻撃は中止となった。

 スペイン青師団、いや、グランデス将軍にしてみれば、いい加減に目を覚ませ、と言いたい状況だったからである。

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