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第2章ー15

 アラン・ダヴー少佐は、5月末日現在の戦況を、まずは確認した。

 北部軍集団も、中央軍集団も順調に進軍しているが、南方軍集団のみが、やや足踏みをしている。

 このまま行くと、英軍を主力とする中央軍集団の南方大旋回を求めざるを得なくなるかもしれない。

 

「それは、我が仏軍の名誉にかかわる話になるな」

 日本人の血が半分は混じっているとはいえ、ダヴー少佐は、仏生まれの仏育ちである。

 従って、反英感情を自然と覚えて、生まれ育っている。

 そのダヴー少佐にしてみれば、仏軍が英軍の支援を求めるのは、いよいよの時に限られるべきだった。

「だが、まだ南方大旋回を中央軍集団が行うのは、時期尚早だ。要はルーマニア軍が最前線から外れるようにすれば、ルーマニア国境方面の進軍に弾みがつくはずだ」

 ダヴー少佐は、そう睨んだ。

 

 ダヴー少佐の考えは簡明だった。

 ルーマニア軍は、徒歩歩兵主体のくせに、ベッサラビア地方奪還のために、ルーマニア軍上層部は部下の兵達を最前線に向かわせたがった。

 だが、上層部はともかく、兵の士気は低い、だから、ノロノロとしか進軍しない。

 それにルーマニア軍全体が、連合軍に対して宗教(東方典礼カトリック教会)問題から、非好意的だ。

 こうしたことから考えるならば。


「ルーマニア軍が、ほぼ単独で攻撃できる目標を与えて、それとなくキエフ、ドニエプロペテローフスク方面の進撃を、仏伊軍のみで行う様にすれば、南方軍集団の進撃に弾みがつき、中央軍集団の南方大旋回の必要は無くなるだろう」

 だが、それと引き換えに。

「所詮は徒歩歩兵が主力の我がスペイン軍は、ルーマニア軍のお目付け役を務めざるを得ないだろうな」

 ダヴー少佐は、その一点に関しては、渋い顔で考えざるをえなかった。


 ダヴー少佐は、まずは南方軍集団司令部を訪ねることにした。

 南方軍集団の主力の一翼を担う伊軍がルーマニア軍に反感を募らせており、仏軍の感情もルーマニア軍に対してよくない。

 ダヴー少佐は、ジロー将軍らの仏軍上層部に、自分の考えを説いた。


「ふむ。一理があるが、そんな目標があるのかね」

 ジロー将軍らは、ダヴー少佐の考えに懐疑的だった。

「あります。オデッサです」

 ダヴー少佐は、そう説得し、ジロー将軍らも、その提案に唸った。


 オデッサは、ウクライナで第3位の大都市であり、ソ連黒海艦隊の根拠地の一翼を担う港湾都市である。

 この都市を、連合国軍が看過することは許されるものではなかった。

 だが、キエフ、ドニエプロペテローフスク方面を、連合国軍、南方軍集団は重視しており、オデッサは、その観点からするならば、その方面からややずれていた。

 そのために、オデッサ攻略を、ルーマニア軍に主に任せてはどうか、という提案を、仏軍上層部に対し、ダヴー少佐はしたのである。


「それに、ソ連黒海艦隊は、潜水艦を主力として、連合国軍の黒海沿岸沿いの通商路に対する通商破壊戦を試みています。このことはルーマニアにしても、神経が苛立つ行動でしょう。その点からしても、オデッサ攻略をルーマニア軍に示唆してはどうでしょうか」

 ダヴー少佐は、更に仏軍上層部に、ルーマニア軍への説得材料を提示した。

 この言葉の前に、仏軍上層部は、ダヴー少佐の提案を受け入れて動くことにした。


 ダヴー少佐は、その足で日本軍や英軍等にも接触して働きかけていった。

 スペイン軍が表立っては、ルーマニア軍の態度がこじれかねないからだ。

 日本軍や英軍にしても、南方軍集団の内輪もめは頭の痛い出来事だったから、この働きかけに好意的に応じてくれた。

 その結果。


 アイゼンハワー将軍は、連合国軍最高司令官として。

「ルーマニア軍にオデッサ攻略を主に任せる」

 という命令を下した。

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