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第1章ー3

 このルフヌ島の海岸砲台は、事前計画時点でも、一応は検討課題とされてはいたが、その時点ではそう重視はされていなかった。

 精々が20センチ砲程度だろう、最大でも30センチ砲と推定されていたからである。

 それに、ルフヌ島の海岸砲台の規模から言っても、何十門もの海岸砲は据え付けられてはおらず、事前の艦砲射撃で破壊可能と、連合国軍の上層部では見られていた。


 何故にそこまで連合国軍が自信過剰だったかと言うと。

「我が仏海軍が、小規模な海軍だと本当に錯覚しそうですな。こんな大艦隊で航行していては」

「世界第1位から第3位の海軍の主力戦艦が、ほぼ集結しているとあってはな」

 仏海軍のダルラン提督は、参謀長からの問いかけに、思わずそう答えていた。


 英米日仏伊の5か国が戦艦を派遣した結果、戦艦だけでも40隻以上が、この場に集っているという事態になっていたからだった。

 余りにも数が多いために、艦砲射撃を行う水上艦隊群も、第一陣が英国艦隊、第二陣が日仏伊の連合艦隊、第三陣が米国艦隊と3つに分かれて行動する有様である。

 それでも、各陣の艦隊それぞれが、構成している巡洋艦、駆逐艦等を併せると100隻近くを数えるという大艦隊だった。


 ちなみに上陸作戦を展開する日米が、第二陣、第三陣に回されたのは、上陸作戦を行う部隊がいない英仏伊にもある程度、華を持たせるという配慮からだった。

 最初の砲撃は、英仏伊が行って、上陸作戦を展開した、という史実を遺すためだ。

 更に言うなら、上陸部隊を直接支援するのに、言葉の壁は少ない方がよい、という配慮もある。


 ともかくこういった事情から、5月15日朝に上陸作戦を発動する直前、5月14日黎明を期して、リガ湾に第一陣の英艦隊が侵入を開始したのだが、そこで悲劇が起きることになった。

「まずは、ルフヌ島の海岸砲台を破壊する」

 英艦隊の旗艦「フッド」の司令塔内において、カニンガム提督の命令が下された。

 ルフヌ島は、あたかもリガ湾に侵入する艦船に対する見張り台のような位置にある。

 だから、ここの海岸砲台を潰さないと安心して、上陸船団は侵入できない。

 そして、英戦艦15隻の主砲の砲門が、大雑把に言ってだが、ルフヌ島の海岸砲台から距離2万ヤード以内に入った瞬間、ルフヌ島の海岸砲台からの砲撃が始まった。


「何」

 その場にいた英海軍の将兵で、この砲撃が挙げた水中の大きさを見た者は、全員が絶句した。

「どう見ても、野戦重砲クラスじゃない」

「これは最低でも14インチ、恐らくは16インチ」

「しかも6つの水柱が挙がったということは」

 目撃した者同士で私語が交わされる。


 そう、ルフヌ島の海岸砲台には、ソビエツキー・ソユーズ級戦艦の主砲として製造されていた16インチ砲の内6門が配備されていたのである。

 しかも、1トン爆弾の直撃にも耐えられるように、と厳重に防護が施された砲台で、観測塔も戦艦の艦橋等なら4万メートル先からでも視認、観測可能なような高さで整備されていた。


「冗談じゃない。この砲台を潰さないと、上陸船団は上陸できない」

 カニンガム提督は血相を変えて言った。

「全戦艦は、ルフヌ島の海岸砲台に射撃を浴びせろ」

 カニンガム提督の命令に応え、直ちに英戦艦15隻は、ルフヌ島の海岸砲台へと筒先を揃えて向け、相次いで射撃を始めようとした。

 だが、ルフヌ島の海岸砲台からの第二撃の方が早かった。

 しかも、その目標は、寄りにもよって英艦隊の旗艦フッドだった。


 フッドが最初の射撃を終えた瞬間だった。

 ルフヌ島の海岸砲台からの第二撃が、フッドの周囲に降り注いだ。

 次の瞬間、火柱と水柱が吹き上げた。

 そして、火柱と水柱が収まった時にはフッドは消え去っていた。

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