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第2章ー11

 英軍を中心とする中央軍集団の攻撃も順調に進んだ。

 歩兵戦車の部隊を最前線への攻撃を行う徒歩歩兵部隊の支援に回し、ソ連軍の最前線が崩壊したら、巡航戦車や自動車化された歩兵部隊により容赦のない追撃を仕掛けるという英軍の基本方針は、ポーランド軍等の味方にも受け入れられた。

(更に書くなら、ポーランド軍は、第二次世界大戦開戦以来の戦場経験等から、戦場における質での実力は伊軍をしのぎ、米英仏日軍に匹敵すると他の連合国軍の多くの将兵が認める精鋭だった)


 こうしたことから、英軍を主力とし、それにポーランド軍等が協力する中央軍集団の攻勢は、当初から順調に進展し、スヴァルスキからグロドノの間、及びブレストを中心とする2か所からの攻勢は、ブレスト要塞攻略に1週間ほど掛かるという手間こそ掛かったものの、ミンスク周辺で最初に手を結び、その後は、共同してソ連軍の抵抗を排除しつつ、6月半ばにはスモレンスク近くにまで進撃することが出来た。


 とは言え、中央軍集団の損耗も激しく、開戦以来の死傷者が1割近くに達したことから、ここに中央軍集団の第1次攻勢は終わりをつげ、北方軍集団と同様に後方連絡線等の整備に取り掛かることになった。


 連合国軍の侵攻作戦が、一番上手くいかなかったのが、南方軍集団だった。

 リヴォフを中心とする、及びルーマニア国境という2か所から南方軍集団の攻勢は発動されたのだが。

  

 リヴォフを中心とする攻勢は、仏伊軍のみからなることもあり、それなりには上手く行った。

 だが、ルーマニア国境からの攻勢は、主力の一翼を担うルーマニア軍に攻勢能力が欠けていたことから、上手く行かなかったのだ。

 このルーマニア軍に攻勢能力が欠けているというのは、昨年冬から問題になっていたことであり、仏伊軍は、米英軍にも協力を仰いで、ルーマニア軍に教官を派遣する等、ルーマニア軍の改善に努めてはいた。

 しかし、ルーマニアの現地で、ルーマニア軍等の現状を実見しているアラン・ダヴー少佐には、ルーマニア軍には別の問題もある、と考えざるを得なかった。


「全くルーマニア軍の状況視察は、気が重くなります。例えば、もう少し士官と下士官兵の格差を縮めるべきです」

 その言葉から、ダヴー少佐は、今の上官であるグランデス将軍に対する報告を始めた。

「知っていますか。兵は粗末な食事を渋々食べているのに、佐官クラスの士官になると当番兵がついて豪華な特製の食事を食べていますよ。そりゃ、士官クラスが少々豪勢な食事を、別途食べるな、とまではいいませんが、物には限度があります」

「ふむ。私にも少々耳が痛いな」

 グランデス将軍は、そう言いながら、ダヴー少佐の報告に耳を傾けた。


「軍服等もきちんと揃ってはいません。特に兵クラスは深刻です。そのくせ、高級士官程、自分の軍服を飾り立てるのに自腹を切っています。彼らに言わせれば、自分の軍服を飾り立てる金を削っても、兵の全員の軍服は買えない、とのことです。確かに1着の軍服を飾り立てる金を0にしても、100着の軍服を買うのは無理でしょう。しかし、それを間近で見る兵の心情はどうでしょうか。高級士官は、豪勢な軍服を着ているのに、自分達はボロボロの軍服を着るのが精一杯、こんな状況で兵の士気が高まると思いますか」

 ダヴー少佐は、更にルーマニア軍の実態を攻撃した。

「確かにな」

 グランデス将軍は、その言葉にも肯くしかなかった。


 その後も、ダヴー少佐は、様々なルーマニア軍の欠点を指摘した。

 対戦車兵器を筆頭に、様々な兵器が旧式で更に乏しいこと等々である。

「全く、こんな友軍は要らない、と言いたくなるレベルだな」

 グランデス将軍は、溜息を吐くばかりだった。

 作中では明言していませんが、グランデス将軍とダヴー少佐の会話は、ソ連欧州本土侵攻作戦発動の約1月前、1942年4月半ば頃です。


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