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第2章ー6

 1942年5月19日の明け方になり、航空機の出撃が可能になり次第、出撃可能な日本空軍の戦闘爆撃機は集団となって、ラセイニャイ近郊のソ連軍戦車部隊の空爆に向かった。


「多い、本当に多いな」

 ソ連の戦車部隊を目視した鴛淵孝中尉は、思わず絶句しながら言う羽目になった。

 巧みに隠蔽しているので、ソ連軍の戦車部隊の正確な数は不明だが、この場に集っている日本軍の戦車の総数約1000両とほぼ同数では無いだろうか。

(この当時の日本陸軍の機甲師団は、1個師団辺り162両の戦車を保有するのが基本であり、この場に集っている機甲師団6個を併せれば、972両の戦車がこの場にいる筈だった(実際には、故障等もあり、この場に、それだけの数が揃っていたわけではなく、約900両といったところだった))


「しかも質的にも、そう引けを取らないようだ」

 鴛淵中尉がざっと見た感じだが、T-34より古い戦車は2割に満たないのでは、と思えてくる。

 過半数がT-34、全体の2割がKV戦車といったところだろう。

 実際、この場に後置されていたソ連第3機械化軍は、連合国軍の対ソ侵攻作戦の為に編制された部隊の中でも質的に優秀な部隊と言って良かった。


「そんなことを想っていたら、やはり、妨害に出てきたか」

 ソ連空軍のヤクやラグといった戦闘機群が、自分達を迎撃しに来た。

 数的にはこちらが2倍近い数の優位を誇るが、こちらは対地上攻撃の任務があり、爆弾等を搭載している。

 従って。


「半分は爆弾等を全て落とせ。爆弾等を落とした者は、敵戦闘機を排除せよ」

 鴛淵中尉の所属する戦闘爆撃機部隊の指揮官の新郷英城少佐が、そう指示を下すのだが、敵戦闘機が向かってきたことから、思わず爆弾等を落として、敵戦闘機に襲い掛かってしまう者が多い。

 そのために、地上支援を行う戦闘爆撃機は少ないようだ。


「自分達だけでも敵戦車部隊に爆弾を落とすか」

 そう呟いて、鴛淵中尉は部下と共に、ソ連軍の戦車部隊に爆弾を投下して、敵戦闘機部隊に襲い掛かったが、こういった事情から、ソ連軍の戦車部隊の損害はそう大きなものとならなかった。


「馬鹿野郎が。期待だけさせやがって」

 西住小次郎大尉は、部下の手前、口に出さずに内心のみで、味方の航空部隊を罵った。

 しかし、次の空襲が行われるまで、進撃を待つ訳には行かない。

 リガ市近郊では、日米の海兵隊が自分達の援護を待ち望んでいるのだ。


「全車前進。適宜の目標を叩け」

 西住大尉は、自らの指揮下にある1式中戦車部隊を前進させることにした。

 味方の無線を傍受する限り、他の戦車乗り達も同様の判断を下したようで、百式重戦車の部隊までも前進を開始しているようだ。

 当然のことながら、ソ連軍の戦車部隊もそれを見て要撃してくる。


「速射に徹しろ。弾数で圧倒するのだ」

 西住大尉は、そう指示を下した。

 敵のT-34等より主砲が小口径なのが難だが、こちらの1式中戦車の方は3人用砲塔を本格的に採用しており、速射性では勝っている。

 そして、57ミリ砲とはいえ長砲身なので、当たり所が良ければ。


「T-34戦車を炎上させました」

「良し」

 部下の報告に、西住大尉は気を良くする。

 だが、こちらの方が優勢とはいえ、6対4といったところ、やや優勢と言ったところだ。


 この状況を見て、味方の歩兵部隊等も積極的に協力を図ろう、としてくれる。

 対ソ戦勃発以来の戦訓の積み重ねの成果か、携帯式対戦車噴進砲等の積極活用で、味方の歩兵は敵戦車といえど、怖れずに勇敢に戦ってくれている。

 そのために、6対4が、7対3になりつつある。

 ソ連軍の歩兵部隊も勇戦しているが、日本軍との戦場経験の差が出ている。

 何とかなるか、西住大尉はそう思った。

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