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第2章ー4

 

 5月15日は、結果的には北方軍集団においては、最初のソ連軍の国境線沿いの防衛線突破だけで、事実上は終わった。

 ソ連軍の最初の防衛線、陣地帯突破に、米第1軍、第5軍、第7軍、第9軍が奮闘し、その防衛線突破だけで夜を迎えることになったのだ。

 勿論、攻撃の第2梯団として待機させられていた日本陸軍や米第3軍が、不要だったという訳ではない。

 彼らは、明日、5月16日以降の攻撃に必要不可欠だったからだ。


 ただ、独が降伏してから半年余り、ソ連西方国境線沿いに連合国軍が展開するようになってから、ソ連軍は連合国軍の様々な妨害を排除して、懸命に防衛線を構築していた。

 その排除となると、潤沢な砲爆撃を懸命に連合国軍、北方軍集団で言えば、日米の航空隊が駆使しても、易々とはできるものではなく、ソ連軍の最前線部隊は、それなりの抵抗を示せたのだ。

 もっとも、それはそれなりにというものであり、5月16日には、攻撃の第2梯団として待機していた日本陸軍や米第3軍は勇躍して、攻撃に参加することになった。


「ひたすらリガに向かって突進せよか」

 日本陸軍の第1機甲師団に所属する西住小次郎大尉は、そう呟きながら、先陣を切って進んでいた。

 指揮下にある戦車中隊を構成する部下の過半数が、極東戦線において、自らの指揮下にあった者達であり、西住大尉が何も言わなくとも、ある程度は阿吽の呼吸で意思疎通ができる。

 もっとも、戦場の実際を鑑みれば、そんな阿吽の呼吸では対応しきれるものではない。

 だから、各車間では喉頭マイクとヘッドホンを組み合わせた無線通信でやり取りをせねばならない。

 そんなことを頭の片隅で考えながら、西住大尉は前進していた。


 最初のソ連軍の防御陣地は、米軍の攻勢により破壊されており、日本陸軍は追撃に専念することになった。

 退却するソ連軍の動きは、秩序だっており、それなりに洗練されている。

 勿論、日米の航空隊による空からの追撃があるので、全く混乱していないことは無い。

 だが、前進している西住大尉の目からすれば、敗走という状況ではなく、嫌な予感がしつつ、前進していかざるを得なかった。

 その予感が当たったのが、ラセイニャイ近郊での遭遇と言うことになる。


「敵戦車の集団です。しかも、T-34の新型に加え、KV-1やKV-2まで入っており、それらの方が多いです」

 前方を進んでいる戦車兵からの悲鳴のような声が、ヘッドホン越しに西住大尉の耳に聞こえてきた。

 その戦車兵が、ほぼ初陣で本格的な戦車戦が初めてなのを速やかに思い出した西住大尉は、敢えて怒声を張り上げた。

「バカモノ。落ち着いて、敵情を報告しろ。距離、方角等、正確に敵情を報告するという基本を忘れるな」


 その声を聴いて、ビンタを食らったように、その戦車兵は落ち着いたらしい。

「失礼しました。進行方向の前方、12時を中心に、大雑把に言って11時から13時の方角に、現在の停止位置から大よそ3000メートル程度の距離で、敵戦車の集団を発見しました。他にも敵戦車が隠れているようですが、隠蔽されているようで、正確な数は掴めません。ただ、識別表から見る限り、BT戦車等の旧式戦車よりも、新型戦車が多いようです。おそらく数的には、ほぼ互角かと」

「よく見た。最初からそう報告しろ」

「はい」

 落ち着いた返答が還ってきたことでヨシとして、西住大尉は取りあえずは労った。


 西住大尉は、考えを巡らせた。

 戦車の質的には苦しい戦いになるな。

 量もほぼ互角、いや初陣に近い兵なので、見落としが多々あると悪い方向に考えるべきだろう。

 まずは上級指揮官に報告し、迎撃準備を整えよう。

 西住大尉はそう判断し、指揮下の部隊の準備を備えさせた。

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