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第2章ー3

 厳密に言えば、5月15日に連合国軍の攻勢が始まったというのは正確でないかもしれない。

 何故なら、5月13日以降、連合国の航空部隊による大規模な空襲が相次いでおり、ソ連軍の目や耳と言える前線の監視哨、また、神経系統と言える通信設備が相次いで破壊され、前線部隊が速やかに後方の指示を仰いで、連合国軍の攻勢を迎え撃つのを困難にしつつあった。

 また、この空襲は、後方から前線に部隊や物資を送る鉄道網に対する攻撃も伴っており、そのために後方から部隊を送り込むのも、徐々に困難になっていた。

 そして、連合国軍の空襲が激化したのに気づいた反ソのパルチザン部隊は、相次いで破壊工作を活発化させて、連合国軍の地上侵攻を側面支援した。

 だから、5月15日に地上部隊の攻勢が始まった、と書くのがより正確と言えるだろう。


 ともかく、5月15日に開始された連合国軍の地上部隊の攻勢で、一番の成功を収めたのが、北方軍集団によるものなのは、間違いなかった。

 5月15日、砲撃可能な明るさになり次第、連合国軍は各所で嵐のような大砲撃を始めたが、北方軍集団の米軍砲兵隊は絶大な火力をソ連軍に叩きつけた。

 ソ連軍の砲兵も対砲兵射撃で応戦しようとしたが、それに対しては、嵐のような戦闘爆撃機を中心とする空襲が対処した。

 数時間に及ぶ砲撃の嵐が終わった後、北方軍集団では、米第1軍、第5軍、第7軍、第9軍による第1梯団の攻撃が始まった。

 この攻撃により、大規模な突破口を穿ち、その突破口から日本陸軍と米第3軍が、二本の矛として化し、第2梯団の攻撃を加えるというのが、基本方針だった。


 入念に計画されていたとはいえ、日本の遣欧総軍の中の陸軍の司令官として、この攻勢を実施することになった山下奉文大将にしてみれば、目を疑うような大攻勢だった。

 幅100キロ余りの広大な突破口をソ連軍の戦線に穿つ。

 確かにそれだけ広大な突破口が穿たれては、戦線の穴を塞ぐことは困難になる。

 更にその縦深は数十キロに達するというのだ。

 それも5か所も。

 全長約3000キロに達するソ連の西方国境、その内の5か所で広大な突破口を穿つのだ。

 アイゼンハワー将軍によれば、先の世界大戦の西部戦線の最終攻勢の焼き直しということだが。


 確かに自分自身も、先の世界大戦時の西部戦線における最終攻勢に参加した身で実見している。

 仏軍のフォッシュ将軍の総指揮の下、広大な西部戦線全体で英仏米日等の連合軍は最終攻勢を行った。

 特に最北部では林忠崇元帥の下で、最南部ではパーシング将軍の下で攻勢が展開され。

 連合軍の砲爆撃は、最前線から後方まで独軍を存分に叩いて、独軍の防衛線を崩壊させていったのだ。


 それから20年余りが経ち、あの時の数倍の規模の攻撃が、ソ連軍相手に行われようとしている。

 そして、20年余り前には行われなかった敵後方、リガ湾への上陸作戦も展開されるのだ。

 また、フィンランド軍もカレリア地峡奪還のために、牽制攻撃を開始しようとしている。


「史上最大の侵攻作戦が本当に発動されたな。それにしても20年余り前には考えられなかった」

 あらためて、山下大将は、参謀長である桜井省三中将に語り掛けていた。

「ええ、本当に泉下の秋山好古元帥がこの光景を見たら、さぞ驚かれるでしょうね」

 桜井中将も感慨に耽らざるを得ないようだ。

 桜井中将も先の世界大戦の際の西部戦線経験者である。

 あの時でさえ、その攻勢の規模には驚かざるを得なかったのに、それから20年余り経った今、連合国軍による1000万人を呼号する大軍による大攻勢が発動されているのだ。


「年内にサンクトペテルブルクに日章旗を掲げたいものだ」

「掲げたいですな」

 二人は会話した。

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