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第1章ー13

 そんな風に前線で、息子が戦っている頃、父の土方歳一大佐は、米軍と今日もやりあっていた。

「ともかくリガ市に対して、大規模な無差別爆撃等を行うのには反対です。局所的な戦闘爆撃機等による空襲等に止めるべきです」

「しかしだな」

 米軍側も中々譲らない。


 リガ市攻防戦は、市民の協力もあり、日米の攻囲軍側が優勢に戦っている。

 とは言え、ロンメル将軍率いる防衛軍も、勇戦奮闘しており、未だにリガ市の大半を独ソ側が死守しているというのが現状である。

 このことが、ちょっとした対立を日米に招いていた。


 幾ら何でも12個師団を維持して、戦闘を続けるとなると多大な物資が必要である。

 リガという優良な港を日米側が確保できていない現在、物資の揚陸作業は港湾設備の無い浜辺に多くを依存しているという現状があった。

 このことは少なからず物資の揚陸に時間等のロスを招いている。

 連合国軍お得意の空中補給も、本来の拠点から数百キロ離れていては、その威力を大幅に減ずる。


 そのために、これ以上の時間をリガ市攻略に掛けるべきではない、速やかにリガ市を制圧するために大規模な砲爆撃をリガ市に対して開始すべきだ、と米軍側から声が上がりつつあった。

 だが、それに日本側は反対していた。

「リガ市民の多くが、日米側に心を寄せている。そうした状況において、無差別爆撃等を行っては、リガ市民の心が、後々で日米側から離れてしまう。確かに物資不足はつらいが、それは一時のものだ。民心の離れは、数十年、数百年も続きかねない」

 北白川宮成久王大将以下、日本側はそう主張して、一歩も譲らなかった。


 それに日本側は、米軍(細かく言うと、米海兵隊)の陰の主張もかぎ取っていた。

 結局は、日本にも陸海軍の対立があるので、米国のことを余り言えないのだが、リガ市を陸軍の援けなくして、海兵隊のみで制圧したいという考えが、米軍内にあり、それもあって、無差別爆撃等を駆使した強襲戦術を、米軍は主張しているという側面があった。


 次章で主に述べるが、ソ連の西方国境線沿いの防衛線は、5月15日の攻勢開始以降、新聞報道によれば3000キロに及ぶ戦線全体が、実際には約5か所において、それぞれ幅100キロ余りの戦線が連合国軍の大攻勢により崩れ落ちるという状況が発生していた。

 更に、その縦深は数十キロに及んで破壊されている。

 ソ連軍が編み出した縦深攻勢を、連合国軍は自家薬籠中の物としていたのだ。


 このために日米が担当する北方戦線においても、ソ連軍は総崩れに近い惨状を呈しており、日米の陸軍はひたひたとレニングラードを目指して前進を開始し、その中間目標といえるリガ市に日米連合陸軍の津波はいずれは押し寄せようとしていた。


 だが、そうなるとリガ市は、日米の陸軍の協力があった上で陥落したという事実が残ってしまう。

 それを嫌って、米軍(というより米海兵隊)は、無差別爆撃等を駆使した早期の強襲策を、日本軍に対して主張しているようだった。

 とは言え、それをやると、リガ市民の間で後々に反感が遺りかねない。


 土方大佐は、北白川宮大将の意図を汲み、米軍の無差別爆撃等の案に反対していたが、日米陸軍の快進撃の前に、米軍はますます主張を強めていた。

 こうした状況に鑑み、石原莞爾参謀長は黒いことを考えた。


「いっそ、リガ市民に無差別爆撃等の情報を流そう」

「それは、リガ市民の反感を買うのでは」

「実際に発動される前に、その情報を流す。リガ市民は動揺し、更にその動揺は、独ソ軍の司令部にも伝わる筈だ。リガ市防衛に当たるロンメル将軍の良心に訴えよう。動揺する市民の命を守るという名分があれば投降もしやすいだろう」

 石原参謀長はそう周囲に説いた。

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