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第1章ー11

 何故にリガ湾上陸作戦を、連合国軍は断行することにしたのか。

 その最大の理由は、バルト三国を速やかにソ連の手から解放し、連合国の支援の下、独立国の地位を回復させることで、ソ連国内の民族、宗教運動の活発化を促すというのが、国家戦略上からの理由となる。

 そして、リガ湾に事実上は面しているリガ市は、バルト三国の一つ、ラトヴィア共和国の首都であり、歴史的にも重要な港湾都市であった。

 このために、このリガ市を連合国軍が速やかに制圧することは、この理由からも必要不可欠と言えた。


 また、軍事的な理由も大きかった。

 ソ連軍が編み出し,連合国軍も受容しつつある縦深作戦理論。

 これに従えば、現在、連合国軍とソ連軍が対峙している線の内で、いわゆる北部戦線の目標とされるべき距離の都市は、約500キロ先の都市である。

 リガは、丁度、それに相当する都市であり、現地の住民の協力も得られやすく、本格的な侵攻開始から1か月以内に連合国軍が軍事的に解放可能と目される有力都市でもあった。


 こうした複数の観点から検討された末に、リガ湾上陸作戦は展開されたのである。

 そして。


 5月20日、リガ市街は敗走してきた独ソ軍の部隊が、かなり混じっていたとはいえ、人員的には約10万人の兵員が防衛隊を構成するまでになっていた。

 誰がこの部隊を指揮するのか、この点について、独ソ両軍の上層部では暗闘が行われたらしいが、結局は民主ドイツ軍のロンメル将軍が、独ソ両軍の兵士から成るリガ防衛軍の司令官になった。

 ロンメル将軍は、達観したというか、従容としたという感じで、この命令を受けたという。

「生まれ故郷(ヴュルテンベルク)から遠く離れた地で、宿敵と言えるサムライと最期の戦いを行えるのも、今となっては悪くないな」

 と命令書を受け取った際、副官にロンメル将軍は語ったと伝えられる。


 その一方で、リガ市街を攻囲する日米の海兵隊の兵員は、6個師団、20万人(その内の約半数は、補給等に当たる後方部隊)に達していた。

 純然たる兵員数から見れば、ほぼ互角と見えるが、内実は全く異なっていた。

 日米の海兵隊は、装備はほぼ定足数を満たしており、弾薬や糧食等の補給も、米軍としては不満が残るレベルではあったが、日独ソの軍人の目から見れば、充分なレベルに達していた。

 それに対し、独ソ両軍の兵士の装備は、定数の7割といったところで、補給物資もロンメル将軍の希望量の約半分程しか、リガ市街内部には無かった。

 更に。


 問題となるのが、住民の協力の有無である。

 リガ市民から民兵隊を募集し、リガ市街防衛の一端を、独ソ両軍からすれば担わせたいところだが、現地情勢の悪化により、そんなことは半ば夢物語だった。

 バルト民族出身者が多くを占めるリガ市民の多くが、独ソ両軍に対して、従来から敵意を抱いており、更に日米両海兵隊の上陸作戦の成功、リガ市街が攻囲されるという現実の前に、積極的に連合国軍側に通じようとしつつあったのである。


 こうした中で、リガ市民から民兵隊を編制しては、民兵隊が連合国軍側に味方して、逆に独ソ両軍に対して発砲するという事態が生じかねない。

 そのためにリガ市では民兵隊は編制されなかった。

 それでも、リガ市民の多くが、乏しい武器をかき集めて、いざという際に連合国軍に味方しようとしているという現実があった。


 だが、これは連合国軍の足かせにもなっていた。

 そういった市民の存在が、リガ市街に対する砲爆撃を連合国軍に躊躇わせることにもなったのである。

 既述だが、連合国側の艦隊、戦艦による艦砲射撃が、リガ市救援のために駆けつけた独ソ両軍の部隊に、基本的に向けられたのは、こういった背景があったのである。

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