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第7章ー3

 ルメイ大佐は、傍から見る限り、嬉々として作戦を立案しているようにしか見えなかった。

 本人は、

「この作戦は、米軍の軍人としての義務感から止む無く立てていたのであり、私もこのような作戦を行うことについては、一般の市民を大量に犠牲にすることなので、大変な苦悩をしていたのだ」

 と後々(それこそ、自身が亡くなる直前に完成、出版された回想録(実際にはゴーストライターが書いたようだが)にまで)に至るまで、主張している。


 だが、この当時、ルメイ大佐と共に仕事をしており、本人と面識のあった、上官アーノルド将軍から末端の現場の部下までが、

「当時のルメイ大佐は楽しんで、この作戦を立案していたように見えた」

 という証言を遺していることからすると、真実は何処にあるのか、は自明の理だった。

 さて、この当時、ルメイ大佐が立案していた作戦というのは。


「都江堰の破壊か。永久に修復が不可能な程に完全破壊を図らねば」

 ルメイ大佐は智謀を巡らせていた。


 都江堰、四川省にある古代、それこそ中国の戦国時代からある水利・灌漑設備である。

 李冰が、秦の昭襄王時代に、昭襄王に対して建設を提案して、実際の建設を開始したが、李冰本人の生存中には、当時の技術的限界から建設することはできず、李冰の息子、李二郎(西遊記等に登場する二郎真君のモデルの1人という説まである)によって、ようやく建設が完了したと言われているものだった。

 この建設により、成都平原を持つ益州、四川省は、「天府」と謳われる程の豊饒な大地となった、と言ってもあながち間違いではなかった。


 だからこそ、その後も様々な改良、補修が当然のことながら、都江堰には為され続けたし、管理と修繕は歴代の中国王朝にとって、重大な関心事となった。

 歴史上の著名人、三国志演義等に登場する諸葛亮も、都江堰の管理、修繕のために、特別な手配りを行ったことが、陳寿により書かれた「正史三国志」において、わざわざ記載されている程である。

 このことは裏返せば、都江堰を米軍が完全破壊すれば、それは四川省の農業生産に大打撃を与えることになり、更に共産中国政府の国力を大幅に消耗させる事態が招来されることに他ならなかった。

 ルメイ大佐は、そういったことから、都江堰の完全破壊を計画したのである。

 とは言え、それは意外と困難だった。


「古代から洪水や地震等の大災害に遭ってはいるが、その度に復旧が行われてきており、都江堰は復旧のためのノウハウが蓄積されているとみるべきだろう。そして、都江堰の要となるのが、魚嘴、飛沙堰、宝瓶口の3か所だが、どれか一つだけでも完全破壊は困難だな」

 ルメイ大佐は、腹心の部下と共に都江堰の完全破壊方法について、様々な検討を行ったが、意外と困難なことに頭を痛めることになった。


「仕方がない。発想を少し変えるか。都江堰により灌漑される農地が、死の農地と化せば、その目的を達することが出来るだろう」

 ルメイ大佐は、発想を切り替えた。


「宝瓶口をできる限り破壊して、水が大量に農地に溢れる状態にしてしまおう。そうなってしまえば、農地を乾かして、農地を回復するのに大変な手間暇がかかる状態になり、農地としては死んでしまう」

 更に、宝瓶口の破壊により冠水した農地に、枯葉剤等を散布すれば、更なる農地への打撃となるだろう。

 ルメイ大佐は、そこまで考えを進めた。


 ルメイ大佐は、アーノルド将軍に自身の考えを詳しく説明した。

 なお、当時の米軍の攻撃目標は、都江堰だけではなく、四川省等の主要な灌漑設備全てが狙われていたと言っても過言では無かった。

 1942年の秋から年末にかけて、米陸軍航空隊はそれらに対し、激しい爆撃を行うことになる。

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