表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/120

第7章ー2

 とは言え、米国、米軍に中国本土において、枯葉剤等の使用を断行することを決められては、日本政府に止める手段は基本的にはない。

 日本政府としては、日本の国内に、枯葉剤等の持ち込み禁止を(内々に)宣言するのが精一杯だった。

 そんなことでは、ハワイ、フィリピンといった前進基地を保有し、更に中国本土に物資の揚陸港を確保している米国、米軍にしてみれば、歯牙にもかけない事実に他ならなかった。


 そして、米国、米軍は日本住血吸虫等の被害の蔓延を阻止することを大義名分として、大量の農薬の空中散布を行い、また、共産中国軍のゲリラ戦対策と称して、枯葉剤の散布を公然と開始等することになった。

 共産中国政府による、米国は化学兵器を公然と使用しているとの非難に対しては、そもそも共産中国軍による生物兵器の使用疑惑がある以上、それに対する自衛的措置も兼ねている、と主張して、非難を事実上は黙殺してしまった。


 この米軍の作戦の効果は、すぐに大きくは現れるものではなかった。

 だからこそ、米軍も繰り返し行い、結果として大量の農薬や枯葉剤が、四川省を中心とする中国本土奥地に撒かれることになった。

 そして、このことは、直接的な被害に加え、後々になっても、甚大な被害を招いた。

 中国本土奥地、黄河や長江の源に近いところが、高濃度の化学物質によって汚染されてしまったのだ。


 そのために川の流れ等によって、黄河や長江の中下流域にまで、化学物質の汚染は広まった。

 更に複数の薬剤が散布されたことによって、いわゆる複合汚染が引き起こされた。

 このために却って被害実態が分かりにくくなった。


 かなり先走る話になるが、第二次世界大戦終結に伴い、農薬や枯葉剤の散布が終わった後も、かなり長い間、農薬や枯葉剤の被害が広範囲で続いていると主張する中国政府と、そんなことはなく、米軍が散布した農薬や枯葉剤の被害は限定的なもので、すぐに終結している、実際に米軍が農薬や枯葉剤を撒いた以外の地域でも、化学物質被害を中国政府が訴えているのは、いわゆる被害者ビジネスに他ならない、という米国政府が、それこそ21世紀になるまで鋭く対立を続ける事態が、この後に引き起こされることになるのだ。


 なお、国際機関や第三国の科学者を中心とする調査によると、中国本土において、米軍が農薬や枯葉剤を撒いたことによって、第二次世界大戦後も長きにわたり、広範囲の中国の住民に健康被害、例えば、いわゆる奇形児が多数生まれる等の事態が引きこされたのは間違いないとされている。


 ともかく、1942年の秋から米軍が農薬や枯葉剤の散布を始めたことは、共産中国の最後の拠点と言えるようになりつつあった四川省や青海省における農牧業に大打撃を与えることになった。

 田畑に枯葉剤が撒かれては、穀物が実らなくなってしまうし、農薬を撒くことは確かに害虫を駆除することにもなるが、その一方で益虫も殺してしまう。

 更に薬剤が結果的に付着した植物を牧畜動物、牛等が食べることにより、いわゆる生体濃縮が起こり、それによって、牧畜動物にも被害が生じることになる。


 そして、米軍は、それに更に追い打ちを掛けるような作戦を立案していた。

 ダム等の灌漑設備を破壊することで、四川省や青海省の農業生産を壊滅させ、それによって、共産中国政府の抗戦能力を奪う作戦が建てられていたのだ。

 四川省や青海省の地形から、自動車化、機械化された米軍部隊の能力が制限される以上、少しでも米軍の被害を減少させようとして考えられた作戦だが、このことは四川省や青海省の住民に重大な飢餓を引き起こす作戦に他ならなかった。

 

 そして、米陸軍航空隊はこの作戦に投入されることになった。

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ