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第6章ー18

 西ドヴィナ川とドニエプル川、更に運河等を駆使して、日本軍からスペイン青師団に提供された舟艇は、クリミア半島へと運ばれた。

(なお、流石に一部の陸上においては、鉄道に載せて運ばれている)


 移動経路は連合国軍の制圧下にほぼ置かれており、クリミア半島までの移動人員の一部は、日本軍から提供された(これは舟艇の取り扱いの説明を、スペイン青師団の面々に対して移動中に行うためでもあった)ことからクリミア半島までの移動だけなら、アラン・ダヴー少佐にとっては、気楽なものだった。

 とは言え、こういった移動には、その移動の手配だけでもかなりの手間が掛かる。


 更にこの舟艇を扱う人員をスペイン青師団から抽出せねばならず、沿岸部の出身で漁船に乗ったことがある程度の者や自動車エンジンを扱ったことがある程度の者までが、この舟艇部隊に転属させられた。

 また、彼らは日本軍の指導員から厳しい指導を受けて、悲鳴を上げる羽目になり、ダヴー少佐は、その間で板挟みになる羽目にもなった。

 こういった諸々が積み貸さなかった結果、ダヴー少佐は胃に穴が少し空きそうになりながら、クリミア半島に舟艇部隊と共にたどり着くことになり、それは10月下旬ということになったのである。

 当然、その間にクリミア半島の戦況は激変していた。


 1942年9月末当時、クリミア半島に展開しているソ連軍の部隊は、民兵隊から臨時に編制された4個狙撃師団を含む12個狙撃師団といったところであり、更にペレコフ地峡での戦闘での消耗の結果、実質的には8個狙撃師団程度にまで戦力を低下させていた。

 更に悪いことに、クリミア・タタール人やウクライナ人の反政府蜂起も、ソ連軍は警戒せねばならず,治安維持のために、クリミア半島内に部隊を分散させざるを得なかった。

 こうしたことから、12個狙撃師団がいるといいつつ、ペレコフ地峡を、ルーマニア軍とスペイン青師団が突破した時に、両軍と直接、対峙していたソ連軍は名目上は6個師団、実質戦力は3個師団程度と見積もられる有様だったのである。


 そして、ペレコフ地峡という瓶の口が開いたことから、ルーマニア軍とスペイン青師団の機動の余地が広がり、更に既述の通り、機甲部隊、自動車化部隊を集中して運用することで、クリミア半島内のソ連軍の防衛線は、ルーマニア軍とスペイン青師団に各個撃破されて行くことになった。

 こうしたことから、ソ連軍はクリミア半島全てを守ることを断念し、主力をセヴァストポリ要塞に収容して、一部をケルチ半島での橋頭堡維持に充てることにした。


 ダヴー少佐が、10月26日にクリミア半島の東南にあるフェオドシヤにたどり着いた時、フェオドシヤの戦塵は完全に収まってはいなかった。

 スペイン青師団の自動車化された部隊は、10月7日にフェオドシヤに突入を果たし、10月8日にフェオドシヤ制圧を宣言したが、ソ連軍はこの街が連合国軍に抑えられては、クリミア半島が完全に南北に分断されたことが明らかになるとして、師団規模の限定的な反撃を加えたのだ。

 また、この反撃は、フェオドシヤにスペイン青師団の目を向けさせることで、ケルチ半島とセヴァストポリ要塞に少しでもソ連兵を収容することを目論んでもいた。


 この反撃は10月23日まで行われ、これに対処するためにスペイン青師団の部隊の主力が向けられたことから、ケルチ半島には結果的に額面上は3個師団が逃げ込むことに成功し、ケルチ海峡を越えての援軍も向かいつつあるという情報が流れていた。

 厄介なことになった、ダヴー少佐は、その情報を聞いた時にそう感じた。

 同じような想いを、グランデス将軍を始めとするスペイン青師団の面々もしていた。

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