表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/120

第6章ー16

 その後、ルーマニア軍とスペイン青師団のそれぞれの幹部は、お互いの基本的行動を話し合って別れた。

 スペイン青師団の幹部が、その後、自分達だけで集った場所において、作戦参謀は、早速、グランデス将軍に自らの疑念をぶつけることになった。


「我々には機甲部隊どころか、自動車部隊もろくにいません。そんな中で、どうやってフェオドシヤへ突進しようというのです。自動車化師団が、いきなり湧いて出ることはないのですよ」

 作戦参謀の言葉は、疑念を呈しているというよりも、グランデス将軍を難詰するかのようだった。

「確かに問題だ」

 グランデス将軍は少し重々しげに言ったが、口元には笑みが少し浮かんでいる。


「参謀長、君に臨時の戦闘団を編制して預けるから、フェオドシヤに突進してくれたまえ」

「はっ」

 参謀長のインファンテス将軍が即答した。

 そのやり取りを見たアラン・ダヴー少佐は察した。

 これはこの2人で既に対策を詰めていたな。


 そんなダヴー少佐の想いに気が付く筈もなく、グランデス将軍の言葉は続く。

「臨時の戦闘団には、自分達の隷下にある突撃砲大隊や偵察大隊等、自動車化されている部隊全てが配属される。なお、この配属はフェオドシヤ制圧までの時限編制と基本的にはする。何か疑問はあるかね」

 先程の発言をした作戦参謀は、沈黙してしまった。

 他の参謀、幕僚等も、ほぼ沈黙している。 


 ダヴー少佐も唸りながら納得せざるを得なかった。

 確かにずっと編制したまま、という訳にはいかないだろう。

 臨時の戦闘団への補給はどうするとか、時間が経つほど、融通を効かせて臨時に凌げる部分は無くなる。

 だから、グランデス将軍も時限編制だと明言したのだ。

 それに、時間が限られているのなら、融通を効かせる方も少しの間だ、と頑張る気になるものだ。


 そして、この臨時の戦闘団の実質的な戦力は、本格的な日米等の機甲師団には及ぶべくもないが、少なくともルーマニアの機甲師団よりは戦力が上だろう。

 何しろ戦車(突撃砲)の質量が違うのだ。

 この臨時の戦闘団ならば、フェオドシヤを迅速に制圧できるのではないだろうか。 


「分かりました。それならば、何とかなると思います」

 作戦参謀が、少し経った後で重い口を開き、他の面々も口々に肯定していく。

 ダヴー少佐も肯定の発言をした後、これで終わりか、と想っていたら、グランデス将軍からダヴー少佐に別命が下った。


「ダヴー少佐、君は親切な父方の小父を訪ねて、頼みごとをしてくれないか」

「親切な小父ですか」

 グランデス将軍の言葉に、ダヴー少佐は何を言っているのかを察したが、敢えて即答しなかった。

 というか、即答しにくかったのだ。

 親切な小父も、そろそろ怒り出しかねない。


「日本の言葉に、おもてなし、というのがあるだろう。サムライ、君の親切な小父は、君をもてなしてくれると思うのだが」

「小父のもてなしにも限度がありますよ」

 グランデス将軍の言葉に、不遜とは思ったが、そうダヴー少佐は言った。

 そうサムライ、日本海兵隊が図る便宜にも限度がある。


「そう言わずに、上陸用舟艇やそれに随伴する舟艇を、おもてなし、として我々に提供するように交渉してくれ。ケルチ海峡を巡る攻防戦で必要になるだろう」

「確かに」

 グランデス将軍の言葉を、ダヴー少佐は肯定せざるを得なかった。


 半島部、海峡の攻防戦を行うに際して、その際に活用できる舟艇の種類や量は極めて重要な話になるが、スペイン青師団は、そんな舟艇をそもそも保有していないのだ。

 そして、その舟艇を豊富に提供できるとなると英米日くらいで、更にスペインが頼みやすい国となると、日本くらいしか無いのが現実で。

 ダヴー少佐は日本の遣欧総軍司令部に赴くことにした。

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ