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第6章ー15

 本来からすれば、ルーマニア軍とスペイン青師団は、クリミア半島制圧のために肩を並べて戦うべきかもしれない。

 だが、様々な要因が、チュペルカ将軍とグランデス将軍に、基本的に別々に戦うという選択肢を選ばせた。


 まず、第一に、これまでに述べてきたように、ルーマニアの国内事情がある。

 こうしたことからすると、ルーマニア軍は国内事情に忖度して、積極的にスペイン青師団と共闘したがらないのは、半ば自明のことだった。

 そして、第二に、スペイン青師団の将兵も、そういった事情を察知しているし、これまでのルーマニア軍の戦績から言って、あいつらとは共闘したくない、という想いを抱える者が増えている。


 だからこそ、半ば阿吽の呼吸で、チュペルカ将軍は、ルーマニア軍はセヴァストポリ要塞攻略を目指すと言明し、グランデス将軍もスペイン青師団はケルチ海峡方面に向かうと即答したのである。

 とは言え、単純に別れて進軍することだけを決める訳には行かない。

 クリミア半島制圧の方法について、さらに突っ込んだ会議をルーマニア軍とスペイン青師団は行わない訳には行かなかった。


「ルーマニア軍は、手持ちの2個機甲師団をもって、シンフェロポリ、ヤルタへの急進を図るつもりですが、スペイン青師団としては、どう思われますか」

「スペイン青師団の司令官として、妥当な判断である、と申し上げましょう」

 チュペルカ将軍とグランデス将軍のやり取りを横で聞きながら、アラン・ダヴー少佐は想いを巡らせた。


 シンフェロポリは、ソ連のいうところのクリミア自治ソビエト社会主義共和国の首都であり、クリミア半島の中心都市である。

 また、ヤルタは黒海に面したクリミア半島南部の都市であり、そこをルーマニア軍が制圧することは、ケルチ海峡方面とセヴァストポリ要塞との陸路における連携が完全に切断されることを意味する。

 ルーマニア軍が目指す目標としては、極めて妥当なものだろう。

 だが。


 ルーマニア軍の保有する2個機甲師団の実力が問題だ。

 実際問題として、自分の把握する限り、ルーマニア軍はチェコ製とフランス製の2種類の戦車を保有している筈だが、チェコ製はLT-35、フランス製はルノーR35戦車の筈だ。

 共に主砲は37ミリに過ぎず、1人用砲塔を積んだ旧式の軽戦車に過ぎない。

 こんな戦車で最前線に戦う等、自分だったら、勘弁してくれ、と言いたいレベルだ。

 更に機甲師団と名乗りつつ、1個機甲師団には100両程しか、さっきの戦車を保有していない。

 こんなことなら、スペイン青師団が保有する160両程の3号突撃砲の方が、この方面では有力な機甲戦力ではないだろうか。


 勿論、ルーマニア軍も新型戦車の導入を図ってはいる。

 だが、ルーマニアの態度が、米英仏日等に不快感を与え、新型戦車の供与を阻んでいる。

 それに米英仏日等にしても、新型戦車の生産にそうそう余裕がある訳ではないのだ。

 ダヴー少佐はため息しか吐けなかった。

 そんなことを想っている間に。


「我がスペイン青師団は、フェオドシヤをまずは目指すつもりです。その際には快速部隊をできる限り集中して、ソ連軍の混乱を促します」

「それは重畳」

 二人の将軍のやり取りが、ダヴー少佐の耳に入った。


 フェオドシヤ、この街もクリミア半島の東南において、黒海に面した港町だった。

 この街を制圧すれば、ケルチ半島をクリミア半島の中心部から切り離すことが出来る。

 更に快速部隊を集めて、スペイン青師団は、フェオドシヤ制圧のための行動を行おうというのだ。

 クリミア半島の瓶の口を割られたソ連軍の各個撃破を図るためには、迅速な行動が必要だ。

 その観点からすれば、スペイン青師団の行動も極めて合理的なものといえた。

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