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バレンタインぶち壊し隊  作者: 竹内緋色
11/13

2月12日

2月12日 月


 この日は練習が主であるわけではなく、ステージの飾りつけや、展示品の配置などを他の参加クラブと話しあったりするのが主になった。

「だが、まさか丸一日学園祭を行うことになるなんて。」

 この学校は勉強ばかりなので、ミワコはにわかに信じがたかった。

「影の助言が働いたみたいだね。」

「なにそれ。」

「黒幕だよ。第三相談室部の高坂だろうね。」

「ずっとつっこまなかったのは私の落ち度だろうけど、どうして相談室部が三つもあるのよ。」

「5月中旬まで待ってね!『糸』はこれより真面目にラブコメやります!」

「いや、これもラブコメじゃないでしょ。そもそも後何か月あるっていうの?」

「いやあ、作者が似たような時系列でやりたいって思って。ちなみに、キャラ出し過ぎたり、女の子の設定を深くし過ぎて、文庫本一冊分の長さになったんだって!」

「そうね。こいつは文庫本200頁以上は書いたことないものね。」

「これだってそうだ。初めはあっという間に終わるはずだったのに、地味に100頁近く続くことになった。」

「余計な会話文が多いせいでしょ。情景描写とか、かなり省かれてるし。」

「いやあ、情景描写なんていらないだろ。だって、この空き教室と商店街以外、舞台はないし。」

「それはそれで問題じゃない?まあ、早く終わらせるには持ってこいでしょうけど。」

「ふう。やっと会議が終わった。」

 疲れた様子でフルイが教室に入ってくる。

「お疲れ。」

「ああ。」

 フルイは椅子に腰かける。

「さて、ネタが尽きた。」

「止めないか。ただでさえ、長期化してるんだ。早く終わらせないと、バレンタインまで間に合わなくなるぞ。」

「気にしなくても、誰も見てません。2月7日13時45分現在、PVは46です。評価なし。ブックマークなし。作者は感想やレビューを貰ったことないです。」

 にやり、とマイは笑う。

「君、人気がないからって無茶苦茶をしていいわけじゃないからな!そんな久米田先生みたいな状況ダメだから。」

「でも、絶望先生はかなり人気よね。流石シャフトというところかしら。」

「いいや、ひとえにマエダックスの人気じゃないか?」

「腹ペコのマリーよりはいいだろ。」

「待って!それ、ダメなヤツ!ジャンプの後ろのページに行くと人気がないっていうやつ!」

「だが、作者は大分おしてるぞ。クロスアカウントや日の丸相撲よりは好きだと。」

「いや、作者あんまりジャンプ読まないでしょ。読んでハンターハンターだけじゃない。」

「竹内緋色は腹ペコのマリーを応援しています。」

「それ、久米田師匠がヒックとドラゴンの時にやったやつよね。わかるわ。」

「そもそも集英社など、椎名誠や上遠野浩平くらいしか読まんのだ。」

「上遠野先生は恥知らずのパープルヘイズしか集英社で書いてないでしょ。」

「いやあ、岳物語のあとがきは最高だ。あれほど甘美なあとがき、読んだことがなかった。できれば続岳物語と一緒になったハード版の購入をお勧めする。岳物語と続岳物語のあとがきに加え、ハード版のあとがきも含まれている。」

「それ、作者が高校生のころ、読書感想文で題になってる本について400字ぐらいで済ませた後、延々と賛美しまくったやつよね。その読書感想文を先生がみんなに配ったヤツよね。」

「殺す、殺す。現代文の教師、殺す!」

「うわあああ。止めてくれ。僕にその言葉を言わないでくれ。」

「あうとれいじ、あまぞーん。」

「ぎゃああああああ。」

 マイは妖艶な笑みを浮かべ、シャインの耳元で呟いた。


「ネタがない!」

「賢明な君なら分かるだろ?後、三日分も残ってるんだ。よりネタ切れを起こすじゃないか。」

「それもそうだな。仕方がない。さあ、入って。」

 フルイはシャインの冷静を装った忌避を厭わず、何者かを空き教室に導く。

「やあ、僕だよ。」

 そこにはもう一人のシャインがいた。

「転校生を紹介する。名前は――」

「シャイン2号です。プリンス・チャーミングって呼んでね。」

「いや、しれっと、僕の偽物を出さないでくれるかな。というか、なんでもあり過ぎるだろ、これ。」

「作者が暗いものばっかり書いてたから疲れたのよ。特に異世界ものなんて全部くらいじゃない。なんであんなディストピアなんだか。」

「いや、作者の異世界観は中世をイメージしてて、中世ってあのイギリスの産業革命だろって、今は真面目な話はいい。」

 シャインは自分の偽物をキッと睨む。

「この偽物はなんだ。ザラブ星人か。」

「どっちが偽物かな。」

 ハイドは鼻を鳴らし、侮蔑した顔を見せる。

「いや、二号って名乗ってるし。」

「じゃあ、どっちが本物か当ててみましょう!」

 タミとマイは待ってました、と用意していたクイズ番組のはりぼてを組み立て始める。

「君らの用意周到さには呆れるよ。」

「さて、第一問!」

「もっと僕のセリフを増やしてくれないかな?」

「シャインのエロ本はどこにあるでしょう!」

「やめろ!それは絶対にダメなヤツ!」

「答えられないなら偽物ってことでいいよな、このポンコツ!」

「笑顔で罵倒しないでくれるかな。」

 シャインは渋々クリップボードに回答を書く。

「ベッドの下だ。」

 シャインは不機嫌そうな顔で答える。

 プリンス・チャーミングはバンっとパソコンを取り出す。

「コノプログラムファイルニギゾウシテアルノガ、ワタシノオカズダ。」

「おい、なんで僕のパソコンを持って来てるんだ!というか、どうしてパスワードを解除できる!」

「オレガシャインダカラダ。」

「いや、明らかに宇宙人っぽい口調なんだけど?もうちょっと僕に似せろよ。」

「チナミニ、エーブイハギャクレイプモノバカリ。ガゾウハニジゲンノヨウジョバカリダ。ヤハリ、ギャクレイプハナマナマシイカラ、サンジゲンニカギルゼ。」

「いや、もう銃白金だろ。というか、僕の性癖を暴露しないで!」

「タヌキソフト。」

「だめだ!それは、分かる人にはわかる!それと、絶対に検索するなよ!僕の未来が終わる!」

「ということで、本物は二号さんですね。」

 パチパチパチパチ。

「いや、拍手しないで!それと、タミ、マイ。ギロチンを持ってくるのはやめろ!ああああああ!」

 この後、スタッフが美味しく頂きました。


 ミワコは花を持って歩いていた。白い、百合の花。その傍らには手桶を持ったハイドがいる。

「大丈夫?お姉ちゃん。」

「うん。大丈夫。」

 ハイドはその顔を見て、一層不安になってしまった。顔は青く、笑顔もぎこちない。

「お姉ちゃんに会うんだから、もっといい顔しないといけないのにね。」

 墓石の前に立ち、ミワコは丁寧に花を供える。時々ミワコの手が止まるのを、ハイドは見ていられない状況だった。

「ごめんね、お姉ちゃん。お姉ちゃんの大好きなチョコをお供えできなくて・・・」

 ミワコは線香を供え、手を合わせた。ハイドも同じく手を合わせる。

 ミワコはさらさらと涙を流し続けていた。

「こんなところで何をしている。」

 花を片手に持ち、手桶をもう片方の手で持ったフルイが現れた。

「フルイ・・・」

 ハイドはフルイを見上げる。

「どうして今さらになって、お前が、三輪子ねえちゃんを殺したお前がここに来ている!」

「え?」

 ハイドには訳が分からなかった。


 三輪子は学校から帰ってきて、浮かれた様子ではしゃぐ妹を楽しそうに見ていた。

「なんかいい事でもあるの?」

「うん!今日、彼氏にチョコを渡すんだ!今から彼の家に行くの。」

「この、幸せ者め!」

 だが、そんな様子が三輪子には微笑ましかった。自分の誕生日であるバレンタインに人々が喜んでくれるのは、自分のことを国全体で祝ってくれる気がしていたのだ。

「おねえちゃん、ごめんね。私、誕生日お祝いできなくて。」

「いいんだよ。私はあんたが幸せでいてくれたら、それだけで誕生日プレゼントみたいなもんだし。」

「うん!」

 妹は急いで家を出て行った。

「さて。私はケーキでも買ってくるかな。」

 三輪子の父と母は仕事で忙しく、夜遅くにならないと帰ってこない。

 独りぼっちの誕生会だった。

「寂しくないって言ったらウソだけど、別にいいっか!」

 三輪子はケーキを買いに町へ出た。


「傾かないように注意しないと。」

 三輪子はチョコレートケーキをホールで買った。親が何かプレゼントを買いなさい、と置いておいたお金を全部使って買ったのだ。それは、三輪子一人で食べられる量ではない。だから、今日遅くに帰ってくる家族のための分を買っておいたのだ。母親はもっと自分のために使えばいいのに、と心配そうな顔をして言うだろうが、三輪子にとっての幸せは、みんなが笑っていることだった。

 三輪子は信号が赤に変わったので、立ち止まる。

 すると、道路の向こうから見知った顔が現れる。三輪子の妹だった。

「あれ、どうしたんだろ。」

 妹は彼氏の家でくつろいでいるはずである。だが、道路の向こうの妹は、首を垂れ、まるで生きる気力を失ったかのような姿をしている。

 すると、妹は赤信号にもかかわらず、道路に飛び出して行った。

 道路からは物凄いスピードでトラックが入り込もうとしている。例え今からブレーキをかけても間に合わない。

 三輪子は走り出した。

 最後の瞬間、思ったのは、「ああ、ケーキがぐしゃぐしゃだ。」ということだった。

「おねえちゃん!おねえちゃあああああああああああん!」

 三輪子に突き飛ばされ、無傷であった妹は目の前の姉であるかさえわからないものを見て、泣き叫んだ。

 ケーキの箱が道路に転がり、ほんのりと甘いチョコの香りが漂っていた。


「やめて!思い出させないで!私はミワコなの!私は何も悪くない!お姉ちゃんが勝手に死んじゃったの!」

 この時、ハイドはミワコの語った昔話の違和感が何だったかに気が付いた。ミワコは知らないはずのことまで語っていたのだ。彼氏が他の女と寝ていたなど、姉本人しか知りえぬことなのだ。だから、ミワコが姉の話だと語ったのはミワコ自身の話なのだ。

「ふざけるな!おねえちゃんの名前を語って、お前は責任から逃れて、現実から逃れて!お前がおねえちゃんを、三輪子ねえちゃんを殺したんだ!」

「あんただって・・・」

 ミワコは前が見えていなかった。ミワコの目に映る現実はまるで夢のように虚ろだった。

「あんただって私の名前を語ってるじゃない。どうしてよ!どうして篩なんて名乗ってるのよ!」

 それがミワコが一番分からないことだった。

「それはお前が罪を忘れないためだ。お前が犯した罪を、決して忘れさせないため――」

「そこまでにしろよ、フルイ。」

 墓地にシャインが現れた。タミとマイもいる。

「どうして・・・」

 ハイドは口にする。

「今まで無茶苦茶なことをさせてきたんだ。このくらい、おかしなところもないだろう。」

 シャインはフルイを睨む。

「僕らはみんな嘘つきだ。本当の名前を隠して、それでバレンタインから、現実から逃げた気になって。でもね、フルイ。君が一番の嘘つきだ。自分自身を誤魔化して、無理矢理正当な理由があるように見せて。そろそろ、僕らも本当の友達になろうじゃないか。」

「黙れ!」

 木々がフルイの剣幕で揺れる。だが、その場の誰もがフルイの剣幕に気圧されることはなかった。

「俺は俺のためにバレンタインをぶち壊す。俺はお前らを利用しているに過ぎないんだ!友達なんて、馬鹿々々しい!」

 フルイが去っていくので、シャインたちは道を開ける。

「まったく、素直じゃないな。それに、友だちじゃない、か。それが一番堪えるってんだ!」

 フルイの馬鹿野郎!とシャインは叫んだ。



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