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拝啓十五歳の友達

作者: 行方

  私は十八になりました。今年で高校も卒業して、進学かと思っているところです。

あなたの夢はなんですか?

どこにいますか?

またあの日みたいに笑いながら話せる日が来てくれればいいんですけどね。

まぁ、難しいでしょうね。


 この頃よく思うのです。中学時代に戻りたいな、と。いやいや、中学時代は酷いものでしたよ。

学校も教室も授業も先生も友達も親も、自分も何もかもが嫌いで嫌でしたから。

よく死を選ばなかったなとそこだけは自分を褒めてあげたいところです。

まぁ、死ぬ勇気があったかどうかはね、無かったと思います。

というと、何故、中学時代に戻りたいのかと聞きたくなるでしょう。

私もなります。

別に中学時代をやり直したいとかではなくて、ほら、あの、放課後でね、遠くから部活動の元気な声が聞こえて、いつも喧しい教室がしんと静まり返って、薄暗く影がかかってきてね、外は赤く染まるんですよ。

それはまるで厨二病ですかと自分でも聞きたくなるくらいでね、世界の真理を見ていますみたいな感じの目と感情で教室の後ろの窓際の隅の席に座ってただただ居たいのですよ。

その瞬間はまるで自分だけ取り除かれたような、たった独りのような感じがするんです。

そこには不思議だけれど、安心感があるのです。

ほら、母親のお腹の中にいたような、あの懐かしい感じが。

お腹の中の感じなんて知らないですけど。


 小学校は私服でしたし、高校も私服であまり学校という感じが強くなかったので、中学がいいのです。

だって皆同じでしょう?

同じ時間に同じ場所で同じ部屋に同じ服に同じ授業に同じ同じ同じ。

気持ち悪いくらいにね。

そのどうしようもなく窮屈で退屈で輝かしかったあの一瞬をもう一度味わってみたいのです。

当時は反吐が出るほど嫌でしたけど。

今になって分かるものでしてね、本当に夢の様な日々でしたね。


 後悔しないなんて、てんで無理な話だと思いますよ。本当に。

後悔する為に生きているようなもんですよ。

自分だけではないんでしょうが、所詮人は独りですから、他の人の感情なんてわかりはしません。

エスパーなら別ですがね。ふふ。


 そうそう、話が逸れてしまった。

ええ、だから中学時代に戻りたいという話ですよ。

言っちゃあれですけど、あまり未来に希望とかなくてね。

まぁ一番は自分に期待していないってことなんです。

今生きているのはね、簡単ですよ、死ねるからです。いつでもどこでも、死のうと思えばね。

生きるのって物凄く難しいでしょう?でも死ぬことってあっけらかんとしているというか、あっという間に感じるのです。

嫌なこととか辛いことがあった時に、まぁどうせ死ねるしなと思うと少しばかり軽くなるのです。

背負っている色んなものがね。

まぁ、胸を張って言えるものではないですが。

笑うところですよ?笑って下さいよ。

参考にもならなけりゃ見本なんてとんでもないですから。


 ああ、ごめんなさい。話が長くなってしまいました。

こんなこと簡単に口に出せないでしょう?だからついつい話がね。

怒らないでくださいね。

いやね、ちょっと、あなたのところへいくのもいいかなと思っただけで。

あなたはずっと変わらないでしょう?それが、たまに羨ましいなんて思ってしまうのです。

ごめんなさいね。

あなたが生きていたらとか大人になったらとか考えることもありますけど、やっぱりあなたはあなたですね。

大好きなあの日のままでした。

私はだいぶ変わってしまったと思いますけど、また笑いながら話してくれますかね。



 ええ、だから中学時代に戻ってあの瞬間をめいっぱい味わいたいって話です。それだけです。それだけ。

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