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絶晩成型  作者: 咫城麻呂
第二章 中立都市ツァオベラー
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2-1 あベんしゃー

 やっほー。千曳ちびきだよ。

 異世界の子供は日本の子供と比べると強そうだよね。

 やっぱり、魔物が居るからかな。

 ――――――――――――――――――――――――――――

 我が家を出てから数時間。僕は今、空の旅を満喫中だ。

 一週間経っても全く変わらずに魔物の大群が押し寄せてくる。さらに、森が広すぎる。だんだんめんどくさくなってきたので、マジックハンドを最大の大きさで召喚して、その上に乗る方法を思いついた。

 空を飛ぶ魔物もちらほらいたが、マジックハンドが範囲内に入ったそばから倒してくれている。また、地上の魔物も追いかけてきているみたいだから、もう一体のマジックハンドに辻斬りをしてもらっている。

 最近、マジックハンドはどういう原理で飛んでいるのか気になってきた。いくら観察しても何か出しているように見えないし、大きさを変えても動きに支障は無い。結局、魔法があるからと強引に納得した。

 スピードは小走りぐらい。空なら邪魔が入らないから、森の中を走るよりも断然早い。

 高度は約30メートル。森の木を余裕を持ってかわせる程度の高さだ。周りを見渡すと、遠くの方に森が途切れているのが見えた。

 ひとまずは、あそこを目的地にすることにしよう。でも、日が傾き始めている。多分、森を抜けたあたりで野宿になるだろう。出来るだけ森から距離を取らないと、魔物がめんどくさいことになりそう。


 思ったと通りに、森を越えて少しすると、あたりが真っ暗になった。この世界にも月はあるんだけど、どうやら新月みたいで月明かりは差していない。

 このまま飛んで行ってもいいけど、居眠りしている間に空爆とかされたら嫌だな。野宿しますか。なんだかんだ言ってちょっと楽しみな自分がいる。

 適当なところで、出しているマジックハンドを近くに集めてから還し、また召喚する。戻した時の痛みはどんなにSPが増えても、割合になるようで、今は3割しか減ってないから痛みは殆ど無かった。二体で周りの警護をしてもらう。

 ささっと火おこし器を使って火をおこす。この火おこし器は我が家で作ったもので、一昔前のサバイバルに興味を持っていた頃に作り方を覚えたものだ。

 あの頃は夏休みだったから、毎日のように火をおこしていたっけな。体はまだ覚えていたようで、簡単に焚き火が出来た。

 食料は果物と、袋の中で保存されていた少量の肉だけ。肉は少ししかないから今日も果物だ。そろそろ栄養バランスがやばそうだな。

 腹も膨れたことだし、さっさと寝よう。マジックハンド、後は任せたぞ。


 ふわー。よく寝た。

 目が覚めると、丁度日が昇るところだった。

 周りには魔物の死骸が……消えていくところだった。改めてみると、なんで消えてるんだろう。まあ、考えて分かるものでもないか。

 荷物をまとめてここからは歩いていく。飛んでくと騒ぎになりそうだからね。


 しばらく行くと、遠くに第一ラオム人発見。どうやらパーティーでオオカミ型の魔物と交戦中のようだ。

 あれ?メンバー全員子供じゃね?しかも一人後ろから見てるだけだし。ここら辺の魔物は魔王さんの所為で滅茶苦茶強くなってるから危ないよ?

 ほら言わんこっちゃない、一人が噛まれそうになる。が、別の子が横から盾で体当たりをかまし、うまく助ける。連携はよく出来てる。

 もう少し近づくと、会話が聞こえてきた。会話してるってことは、そんなにピンチでもないのかな?


「リーダー、強すぎるっすよー」

「弱音を吐くではない!これはお主らのためなんじゃぞ」

「はあ、はあ、全然倒せる気配がないのです」

「悪戦苦闘~?」

「しゃべている暇があったら、体を動かすのじゃ」

「そんなこと言われてもっすねー。最近魔物のレベル上がりすぎっすよー」

「大量虐殺~?」

「むぅ、確かにここ数日の魔物のレベルアップは異常じゃな。セルの言う通りかもしれん」

「と言うか、いい加減リーダーも戦ってほしいのです」

「経験値が入らぬがいいのかの?」

「このままじゃこっちが負けてしまうのです」

「頼むっすよー、リーダー」

「新打登場~?」

「しょうがないのう」


 どうやら後ろで見ていた娘がリーダーのようだ。そのリーダーが動き出す。


「"赤鶴"」


 リーダーがそう唱えると、周りに赤い何かが現れた。よく見ると、折鶴だ。こっちにも折紙あるのか。

 その折鶴が、オオカミに向かて飛んでいく。オオカミは難無く避けたが、リーダーが指を振ると、一回転して戻ってきた。

 オオカミは折鶴が一回転して戻ってくることに気付かず、右後ろ脚に当たった。すると、それを中心に爆発が起こった。


「さすがっすリーダー!」

「いや、まだじゃ!!」


 爆発の直撃を食らったオオカミだが、右後ろ脚にダメージを負っただけで致命傷には至らなかった。


「手加減~?」

「ま、まあ、このままわらわが倒しても意味がないからのう」

「リーダーでも無理っすか」

「もうおしまいなのです」

「むぅ、しょうがない、撤退じゃ」


 脱兎のごとく逃げ出す彼女たち。傷は深くないらしく、オオカミも追いかける。

 一応助けるか。僕の所為みたいなものだし。

 マジックハンドを向かわせる。そのまま彼女らとオオカミの間に入り、短剣でオオカミの首を落とした。


「オオカミが倒れたのです」

「第三者~?」

「そうなのですが……魔力が感知できないのです」

「どういうことじゃ?人ではないのか?」

「分からないのです。とにかく何も感じないのです」


 僕がオオカミを倒すとそれが分かったらしく、立ち止まって振り向いた。そして僕を認めると寄ってきた。


「お主が倒してくれたのか?礼を言うのじゃ」

「……ありがとうなのです」

「感謝感激~?」

「ありがとうっす」

「困った時はお互い様だよ。それに僕が犯人みたいなものだし」


 近くで見るとそこまで子供でもないことが分かった。

 リーダーと呼ばれた子は夜魅と同じくらいの身長で、黒を基調として桜が描かれた着物を着ている。のじゃロリだね。普通に可愛い。

 語尾に「っす」を付けているのは、白い犬耳の青年だ。身長は公仁よりも少し低いくらい。ゲームでよくある冒険者の服を着ている。

 語尾に「~?」を付けているのは、灰色の猫耳の男の子。リーダーと同じくらいの身長だ。服装は犬耳と同じだ。

 語尾に「なのです」を付けているのは、黄色の狐耳の女の子。猫耳と同じくらい。みずぼらしいローブを着ている。


「僕は千曳。君たちは?」

「よくぞ聞いてくれたのじゃ。わらわ達は……」


「ロリコンキラー。ブラック」

「働きたくないっす。ホワイト」

「言語道断~?シャドー」

「大人は苦手なのです。イエロー」

「レットは都合上居ないのじゃ」

「「「「五人そろって。あべんしゃー!!!」」」」

「……」


 これ考えたの日本人だろ。一つ色じゃないの混ざってるし。そもそも配色が地味すぎる。見た目から採ったんだろうけど、もうちょっといい色あったでしょ。と言うか言語道断って……。

 心の中でツッコミを入れていると、何かを勘違いしたのか、相談し始めた。僕に聞こえる音量で。


「受けが悪いのです」

「やっぱりあの冒険者の言うことは信用ならないっすね」

「妄言綺語~?」

「所詮はでたらめじゃの」

「何かあったの?」


 一応聞いておく。


「聞こえておったか。前に街に来た冒険者がの、あいさつにこれを言うといいと言っておったのじゃ」

「……遊ばれてるよ、それ」


 初対面でこんなこと言われたら誰だって引くよ。


 その後、ちゃんと名前を教えてもらった。

 ブラックがナミ、ホワイトがポワブル、シャドーがセル、イエローがシュルク、だそうだ。

 とりあえず、さっきから気になってることを確認しないと。


「もしかして、僕警戒されてる?」

「……ごめんなさいなのです」

「別に怒ってないけどさ、どうして?」

「魔力が感じられないからなのです」

「魔力?」

「はい。人は生きているなら少量の魔力を出すのです。でもお兄さんからは感じられないのです」

「シュルクは魔力感知の性能が人一倍良いのじゃ」


 よく分からない僕にナミが助け船を出してくれた。


「ああ、なるほど。うーん。MPが無いからじゃないかな?」

「MP?魔力のことなのですか?それは無いのです。今まで魔力切れの人に会ってきましたが、それでも魔力は感じられました」


 MPで伝わらないだと?ステータスにあるからてっきりこっちにもあるものだと思ってたんだけど違うのかな?そういえばHPもそうだったっけな。


「とりあえず、僕は普通の人間だし、ちゃんと生きてるよ」

「ならいいのです」

「ちょっと待つのじゃ。魔力がないってことは、それはサブアームでは無いのか?」


 ナミが荷物持ちのマジックハンドを指して訪ねてくる。


「サブアーム?」

「……まあ知らないのも無理はない。今ではほとんど使う者のいない魔法じゃからな」


 妙に間が長い気がする。もしかしてこっちでは一般常識なのかな?


「ふーん。でもこれはマジックハンドだよ」

「マジックハンド?魔法かの?」

「これはスキルだよ」

「スキル?なんじゃそれは?」

「え?スキルってのはSPを使うもので……」

「SP?」


 あれ、おかしいな。全然伝わってない。

 すると、さっきまで思案顔だったポワブルが話し始めた。


「もしかして、異世界人ってやつっすかね」

「異世界人じゃと?」

「そうっす。話の内容から見て間違いないと思うっす」

「お主、真かの?」

「う、うん。そうだよ」


 さっきまでの話からばれるとは思ってなかった。ポワブルは意外と頭の回転が速いらしい。

 それほど隠す必要もないと思ったから、あっさりばらす。


「やっぱりそうっすか」

「ほうほう、異世界人とはのう」

「時機到来~?」

「初めて見たのです」


 物凄い好奇の目で見られてる。そんなに珍しいのかな。


「異世界人なら、サブアームを知らないのも無理ないのじゃ」

「MPとかSPも異世界の言葉なのですか?」

「どこから来たのじゃ?」

「マジックハンドとは一体何なのですか?」

 等々


 女子たちに質問攻めにされた。助けを求めるように男子たちのほうを見ると……


「入境問禁~?」

「そうっすよ。異世界人なら、この世界のこと全然知らないっすよね。ちゃんと学ばないといけないっす。ちょっと意味が違う気もするっすけど」


 確かにこの世界について知ることが出来るのは嬉しいんだけどさ。

 しょうがない。質問に答えながら、この世界について色々確認しますか。

誤字脱字、感想等お願いします。

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