4-17 前夜祭
やっほー。千曳だよ。
裏路地って掘り出し物多いけど、同じくらい危険も多いよね。
でもまあ、危険も含めて楽しいんだけどね。
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ついにやって来た運命の日。
魔族の本当の狙いとは?
作戦の行方は?
セルの師弟対決は?
僕は活躍することができるのか?
ナミは無事、都市を取り戻すことができるのか?
全ては今夜、明らかに!
と、意気込んで言ってみたものの、作戦開始まであと半日あるんだよね。
そんなわけで、遅すぎるけど下見を兼ねて前夜祭に参加することになった。
昼間っから前夜祭……。あれ、前日祭だっけ? ま、いいや。
久しぶりのプリュス。今日は着物ではなく、いつものコートだ。近くの川で洗濯したから清潔そのもの。
で、入って見たんだけど。
「こりゃまた、すごいな」
みんなを代表して、公仁が一言。
ディーネ曰く、昔いた頃よりも賑わってるとのことで。
昔っていつだよ、とは決して口にしてはいけない。適当なこと言って返されるだけだから。
そう、あれは作戦会議のときのこと――。
「私はパスね」
「え~」
「私、そんなに若くないのよ?」
「何歳だよ」
「十万十四歳」
てな会話があったからだ。ダイジェスト版でだいぶ端折ってるけど、大雑把な流れはこんな感じだ。
どこの魔王の娘だと突っ込んでやりたかった。と言うか突っ込んだ。そしたら、
「そうね、そんなに少なくないわね」
この始末。
いくら魔法がすごいからって流石にその見た目でその年齢はないわ~。せいぜい千年くらいでしょJK。
とはいえ彼女がいたら簡単に結界を破れるだろうことは目に見えているため、特に異議もなく本部待機が決定した。
やっぱりナミ本人がやらないと意味無いよね。
アウエラも魔力が桁違いだし、代わりは充分務まるだろう。
閑話休題。
なんでこんな回想してるんだっけ? ああ、賑わってるって話か。
そりゃもう、やばいよ。
今までの倍以上の露天が通りの左右を飾り、真ん中を様々な種族の人間が塗りたくる。
後ろの家の人どうやって出入りするんだろうってほど露天の間に隙間は無く、あちらこちらで商売競争に明け暮れている。
ちゃんとした店舗は閑古鳥かといえばそうではなく、多分いつも以上に人が入ってる。セールでもやってるのかな。
肩にかごをぶら下げたむさくるしい男もちらほら。どこで採れたのか、魚が泳いでる。まさか、掘りとか言わないよね? 養殖だよね?
虚無僧らしき人物の笛と、大道芸――傘の上でボールを転がすアレ――の掛け声と、観客の拍手と、出店のおっちゃんの呼び込みと、季節遅れの風鈴と、下駄と、その他もろもろで大変騒がしい。
焼きそばやらたこ焼きやらたい焼きやら大判焼きやらいか焼きやらもんじゃ焼きやらの匂いが、これでもかと腹を刺激する。
風は人の熱で暖まり、それがまた気分を高揚させる。祭りの熱は恐ろしい。乗り気じゃなくても気づけば楽しんでる。
周りを見ながら歩いてると、不意に聞きなれた声が聞こえた。見てみると、クロイナの屋台だ。
今日も今日とて一本注文。
ほかのメンバーに食べるか聞こうと思って後ろを向いたら、おかっぱが二人いて一瞬混乱した。
そうだった、今はアウエラがナミの姿してるんだった。
影武者というわけじゃないけど、目標が双子になってると思った以上にバレにくいものだ。対象は一人っ子だからふたりいるわけがない、みたいな感じで。
変装の技術が高くない異世界ならではのカムフラージュかもしれない。まあ、素人の考えだからどこまで通用するかわかんないけど。
ちなみに、『メタモルフォーゼ』は体積を変えられないらしい。腕を剣に変えることはできても、腕から剣を生やすことはできないということだ。じゃあ羽は? と言う話なんだけど、足りない分は魔力で補うことができるらしい。
小さくなる場合も同じで、しかもこれは魔力を使ったところでなんの意味もない。
そこで今回は、残った分をでかい羽に変えてもらって、マジックハンド界に入れるというパワープレイを試している。
「どう? 動きに支障は?」
「うん、問題ないよ――のじゃ」
変装は声からだと僕は思ってる。声帯も変わってるし、完全にナミの声だ。
「自分の声が実際と違う、とは本当だったのじゃな。妙に違和感があるのう」
「仕方ないでしょう」
今回はローヴさんもついてきてる。その他の人たちは山で調整だ。
結局、ナミとローヴさん以外が食すことにしたらしいい。
美味しいんだけどなぁ。
お店の人も、個人差が強いって言ってた。まあ、どっから見ても異世界風じゃないしねぇ。
どうせあれでしょ。初代勇者が広めたとかでしょ。なんでこれなのかはさておいて。
「異世界でチョコレートとは、随分珍しいな」
「それもう考えたから」
そんな何かがありつつ、祭りを楽しむ。
★★★
如何せん人が多い。気づいたらはぐれてしまっていた。
「なんではぐれるかなぁ」
「千曳、早すぎ」
「人ごみをかき分けるとか、どんな神経してるのかしら」
いやだってさ、楽しくない? 人ごみをすり抜けてくの。人に当たるか当たらないかの微妙なラインでちょんよけしてくの。ただひたすらにグレイズを稼ぐの。楽しくない?
「そんなこと言っときながらついてくる二人も相当だと思うんだけどね」
「気に、するな」
「気になるわ」
どこの魔王だお前は! てか、魔王ネタ多すぎるんだよ! そろそろ飽きるわ!
「で、どうすんのよ」
「今検索かけてるところ」
実はもう30体ほど解き放ってるんだよね。
さっきから話しつつ切り替えてたんだけど、20体ほど聞いてもかからない。どこいってるんだか。
距離的に近いのは、No.3か
『いやっしゃい! セール中だよ!』――次、No.7。
『おら、金出せや!』『テメッコラスッゾオラ!』『ひぃぃ。や、やめてください』――おお、怖い怖い。次、No.5。
『あんた。こぉんなに実っちゃってぇ』『あっ……や、やめて姉さん!』『まぁまぁそう言わずにぃ』――どこに入ってるんだ!? 後でお仕置きだな。No.6!
『これ美味しいね』『そうじゃな』『ったく、アイツ等早すぎだっての』――No.4……っていたー!
『どぉ、ヤってかない?』『何だあんた、あっち行け』――なんだこれ? 戻れ戻れ。
「いたよ。とっとと合流しよう」
「ん」
「全く、お騒がせね」
ほんとだよ。
それから無事合流して、お祭りを楽しんだのだった。
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よいおとしを~!




